ライバルの多い今は、人材エージェントとプランを練る時期
とはいえ、現在の自分の実力と年収を考えると、すぐにエグゼクティブを目指せない人がほとんどだろう。現場の技術者が少し上を目指すなら、そのクラスの転職市場はどのような状況なのだろうか。
「やや景況が持ち直してきたと言われていますが、景気の指数自体が少し上向いても、企業はまだまだ人材採用には慎重な姿勢を崩していません。とくにIT業界は、金融を始めさまざまな基幹産業が復活してから動き出すので、ここ数ヵ月のスパンでは、転職市場の劇的な復活はないと思います」(青木氏)
しかし、だからといって悲観する必要はなく、まして途方にくれて何もせずに手をこまねいている場合でもない。渡辺氏は、今のうちに努力を惜しまず、力を蓄えるべきだと言う。
「IT業界は景気に敏感でリストラも多い。ということは、雇用情勢が芳しくない現在はライバルも多いということです。競争の激しい時期にあがいて消耗するよりも、待てるならばしばらく待ったほうがいい。その間に、自分のスキルを見つめなおしたり、自分に合った人材エージェントを探して、アドバイスを受けながら戦略を練るようにすると、その後勝負をかけられると思います」
自分のキャリア戦略も定まらないコンサルタントは信頼できない!
とはいうものの、人材エージェントに関する情報は不足しており、大々的に広告をうっている企業しかしらない人がほとんどだろう。どうやって探し、何を基準に選べばいいのだろうか。
「エージェントごとに得意分野があるので、その会社が何に強いのかをきちんと最初に見きわめることです。特定の分野で実績を持っているところは、その業界や職種に関して多くのノウハウを持っているものです」
青木氏は、まず担当のコンサルタントに「あなたのキャリアプランは?」と尋ねてみるのも、よいエージェントの判別法だとアドバイスする。
「日本の人材紹介会社のほとんどは、キャリア戦略という視点から人材を評価していません。だから、いざ転職という時になって駆け込んできた人を、と りあえずどこかに紹介するといった場当たり的な動き方しかできない。担当のコンサルタント自身、ちゃんと自分でキャリア戦略の視点を持っているかどうか、 シビアに聞いてみるのもいいでしょう」
コンコードエグゼクティブグループでは、すぐに転職を希望しない場合でもまずは登録してもらい、数年越しの付き合いの中でキャリア指南をするケースが多いという。
「なかにはメンバー登録したまま、現職で昇進したという連絡をくださる方もいます。本人のキャリアが育ってくれば、さらに上のステップの案件を紹介することも可能です。このように、長いスパンでキャリア形成を一緒に考えてくれるようなエージェントを探すことをぜひお勧めします」