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「脳死心臓移植、海外の2%の額で可能に」

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 臓器移植法の改正をめぐり、本人の提供の意思が不明な場合も、家族の同意があれば臓器摘出が可能になる「A案」と、「臨時子ども脳死・臓器移植調査会」の設置などを盛り込んだ野党の参院議員有志による「独自案」は6月30日、参院厚生労働委員会で趣旨説明と質疑が行われ、実質審議入りした。

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 午前の審議では、参考人として招致された厚労省の上田博三健康局長が、現行法成立までの経緯や現行法の趣旨、脳死の定義、脳死判定基準、臓器移植までの手続き、諸外国の臓器移植制度などを説明した。

 質疑では、森田高氏(国民新)が海外で心臓移植を受けようとする患者について、「経済的な理由があり、そこを乗り越えられずに初めからあきらめてしまうのではないか。もし日本国内で心臓移植ができるようになったら、患者の実質的な自己負担額はどれくらいか」と質問。これに対し上田氏は、「日本で心臓移植を行う場合は、高額療養費(の範囲)で止まるだろう」と答えた。さらに森田氏は、阪大のある教授の意見とした上で、「高額療養費制度の適用で月々数十万円程度の自己負担、(総額で)100万−200万円の世界で済む。(渡航移植をした場合の)1億円対200万円で、(国内での移植が)救える命を救うことができる」と指摘した。

 また、「独自案」提出者の小池晃氏(共産)がWHOの臓器移植にかかわるガイドラインについて、「抑えるべきとされているのは、金銭をもっての売買や、強制力を伴う移植であって、海外で臓器移植を受けることを抑制する趣旨ではないのではないか」と質問。これに対し、上田氏は「移植ツーリズムについては、今回のWHOの決定がされても全く禁止をするというものではない。自国でできるだけ(臓器は)確保してほしいという思想を前提としているものだろう」と答えた。

 午後の審議では、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」の藤原研司座長(横浜労災病院院長)が参考人として招致され、これまでに行われた同会議での検証結果などについて報告した。
 報告では、これまでに検証が行われてきた51例の一部に、医学的、法的な面で「手違い」があったと説明。法的脳死判定マニュアルに沿ったCTなどの画像診断が行われていなかった事例や、保管義務のある脳波記録を紛失した事例があったとした。

 質疑では、森田氏が「画像診断が残されていなかったという例と、脳波記録を紛失した例では、検証会議でこれからこういうことを防ぐためにどのような議論をしたのか」とただすと、藤原氏は「厚労省の臓器対策室長や検証会議から(再発防止のための)通知を出した」と答えた。

 また小池氏は、これまでに行われた81例の脳死臓器移植に対し、50例程度しか検証が行われていないと指摘。藤原氏は「ご家族の都合などがある」と述べ、検証対象の家族のプライバシーを重視するなどの理由により、検証が進んでいないことを明らかにした。

 古川俊治氏(自民)は、肝臓病の専門家である藤原氏に、年間400−500例行われているとされる生体肝移植についての意見を求めた。藤原氏は「国内で長い間、脳死臓器移植が行われてこなかったことから、生体移植がかなり行われてきた」とした上で、生体肝移植のドナーの中に「不便な思い」をしている人もいることから、「脳死者からの善意の臓器を活用するのが一番理想的な医療」と述べた。さらに、「脳死臓器移植がこんなに少ない国もないのではないか」との認識を示した。

 次回の厚労委員会は、7月2日の午前、午後を通じて参考人質疑を行う。
 2日午前の参考人は、日弁連人権擁護委員会委員の加藤高志氏、日本医師会常任理事の木下勝之氏、昭和大医学部教授の有賀徹氏、臓器移植患者団体連絡会代表幹事の大久保通方氏の4人。午後は、日本移植学会理事長の寺岡慧氏、日本小児科学会会長の横田俊平氏、日本移植コーディネーター協議会副会長の篠崎尚史氏、作家の柳田邦男氏の4人が出席する予定。


更新:2009/06/30 21:11   キャリアブレイン

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