来日した韓国の李明博大統領と麻生太郎首相が会談し、北朝鮮の再核実験に対する国連安全保障理事会決議に盛り込まれた制裁を着実に実施していくことで合意した。日韓、そして米国との連携で北朝鮮への圧力を粘り強く強めていくことが、今後ますます重要になってこよう。
会談では、北朝鮮の核、ミサイル開発は安全保障上の重大な脅威であり、日米韓で連携して対処していくことを確認し、中国を含むすべての国連加盟国による決議実施が必要との認識でも一致した。
麻生首相は「国際社会が北朝鮮を核保有国と認めることは断じてない」と述べ、李大統領も「国際社会に出てきて協力することが核保有より北朝鮮のためになると悟らせるべきだ」と歩調を合わせた。
北朝鮮の2回目の核実験を受けた国連安保理決議の追加制裁措置の柱は、兵器禁輸の拡大と北朝鮮船舶への貨物検査強化、そして金融制裁だ。いわば「モノと金」の流れの阻止をねらったものといえる。
日韓両国はこの決議内容をあらためて確認し、結束を誓い合った。だが現実は厳しいと言わざるを得まい。日本政府は、北朝鮮に圧力をかけることで離脱宣言している6カ国協議への復帰を促すのが基本方針だが、鍵を握る中国とロシア、とりわけ最大の友好国であり北朝鮮との貿易を着実に増やしてきた中国の対応には温度差がある。
一方、李政権は前政権の融和政策から一転して北朝鮮の挑発行為に対し毅然(きぜん)とした対応を取るとするが、貨物検査に対して「軍事的対応」をすると警告する北朝鮮への現実的対処は難しいものがあろう。
北朝鮮は安保理決議後も、プルトニウムの兵器化やウラン濃縮着手を表明し、今後3回目の核実験や弾道ミサイル発射ともみられる行動をエスカレートさせている。こうした北朝鮮の動きに歯止めをかけ、決議が実効性を持つためには、やはり大きな影響力を持つ中国の積極的な対応が求められよう。
日韓会談では、韓国側から6カ国協議メンバーのうち北朝鮮を除く5カ国による協議が提案された。これも中国の態度いかんによるところが大きいが、状況を打開するための方法の一つとして検討に値しよう。
日韓シャトル外交での相互訪問は、1月の麻生首相訪韓以来だった。日本の政権の行方がどうあろうと、東アジア安定のための日韓の信頼関係構築を今後も積み重ねていきたい。
医師を乗せて患者を運ぶ“空飛ぶ救命室”ドクターヘリの出動が、日本航空医療学会の調査で2008年度は全国で計5635回に上った。本格運用が始まった01年度の6倍超だ。とはいえ、ドクターヘリを導入している病院は01年度の5病院から16道府県の18病院に増えたにすぎなかった。
運んだ患者は5182人だった。交通事故や労災などによるけがが約半分に上り、心疾患や脳疾患が27%を占めた。最も多いのは日本医科大千葉北総病院の663回。中四国唯一の川崎医科大付属病院(倉敷市)は425回で6番目に多かった。
川崎医科大付属病院は、全国に先駆けて1999年に試験配備、01年度から本格的に運用を始めた。岡山県内をはじめ広島、香川、兵庫県の一部をカバーし、特に山あいや離島など、医療機関が不足する地域で重症患者が出たときなどに威力を発揮している。
国と自治体が補助している運用費(1機当たり年間1億7千万円)について、総務省は3月、自治体負担分の半額を特別交付税で支援することを決めており、導入への弾みになりそうだ。しかし、国は基準となる出動回数を「年間240回」としており、出動件数が増えれば増えるほど赤字になり、運航会社などが負担しているという。また、専門的な医師、看護師の養成やパイロット、整備士などの育成も課題になっている。
厚生労働省研究班によると、救急車と比べてドクターヘリは医師による治療開始時間を平均26分短縮でき、死亡を27%、重度の後遺症を45%減らす効果があるという。大切な命を一人でも多く救うため、さらなる普及に向けて、一段の財政支援とスタッフ養成体制の整備が必要といえよう。
(2009年6月30日掲載)