2009都議選
7月3日告示の都議選が迫った。首都が選挙一色に染まる直前の動きを探った
【社会】格安 旅行会社主催の高速便 ツアーバス快走2009年6月30日 朝刊
世界的な不況で旅客機や新幹線の利用者が減る中、旅行会社による割安な高速ツアーバスに人気が集まり、売り上げを大きく伸ばしている。「ツアー」といっても観光ではなく、規制緩和で路線バス同様、東京−名古屋などの都市間を走る。新幹線の半額から三割の値段で乗り心地のいいシートも選べることから、急がない人には魅力のようだ。 (稲垣太郎) 金曜日の夜十時半すぎ。東京・新宿駅西口近くにある大通り沿いの歩道は、高速バスの利用者でごった返していた。出発時間が近づくと、数珠つなぎの七台のツアーバスに次々と乗り込んだ。 出張を終えて名古屋市に帰る保険代理店勤務の男性(41)は二年ほど前に新幹線からバスに切り替えた。 「うちの会社は出張旅費が出なくて自腹だから、どうしても安い方がいい」 名古屋着は午前七時すぎと八時間強かかるが四千五百円。速いバスなら五時間半で着く。新宿−大阪間は平日四千〜六千四百円。時間帯によっては「のぞみ」の三分の一以下だ。 規制緩和は二〇〇〇年の道路運送法改正。高速バスには路線バスだけでなく、旅行会社が貸し切りバス会社と提携して参入できるようになり、競争は一気に激化した。 座席がそれぞれ独立している三列シートやスリッパ、毛布貸し出しなどのサービス、乗り心地や価格帯の違う数種類のバスをそろえ、乗客数を伸ばした。 年間乗客数は以前からある高速路線バスの年間一億百三十五万人に対し、ツアーバスは三百万人とまだ少数。それでも、昨秋の不況以降も大きく伸ばしている。楽天トラベルがネットで扱う五十社のツアーバスは、昨年十〜十二月の乗客数が前年同期の五割増し。今年一〜五月も三割以上増えた。 成定竜一・高速バス予約サービスマネジャーは「新幹線からの乗り替え客が増加した」と説明する。高速ツアーバスのウィラートラベル(大阪)が昨年十一月、乗客五千五十人に聞いた調査では半数近くが初めての利用で、その半分は新幹線から流れてきた。 路線バス大手のジェイアールバス関東(東京)は今年四〜五月が前年同期比97%。平日の東京−大阪間は四千三百〜九千九百十円で井上秀樹営業部次長は「値段の高い交通手段から安い手段へという流れの中で、伸びが悪くなった」と説明。早期の予約割引などで対抗するが「より安いツアーバスが売れている部分はある」と路線バスも利用者を食われていると認める。 成定さんは「路線バス会社には老舗の鉄道系が多く、人件費などコストが高い面もある。ツアーバスはますます注目度が高くなるのでは」と話している。 ◆高速値下げで渋滞 定時運行に支障休日のETC(自動料金収受システム)搭載車の高速道路料金値下げの影響で、高速路線バスの運行が支障を来している。日本バス協会が大手十四社に、渋滞が多発したゴールデンウイークの影響を聞いたところ、平均で四時間半の遅れが出て、乗客もこの時期には前年比6〜7%減った。 協会担当者は「渋滞で定時運行が保てなかった」と話す。協会は今月、お盆や年末年始の料金値下げ導入に反対する要望書を国土交通省や各高速道路会社に提出した。 ツアーバスなどの貸し切りバスをめぐっては、二〇〇七年に大阪府吹田市で乗客・乗員二十七人が死傷したスキーバス事故を受け、安全性を格付けする制度が一〇年度に始まる。 事故は運転手の過労による居眠り運転と判明。規制緩和で急増した貸し切りバスの安全性が問われるようになった。日本バス協会が審査結果を点数化。六十点以上で星一つ、八十点以上で星二つと認定する。 <高速ツアーバス> 旅行会社が貸し切りバスを借り上げて主催する。公共交通機関として、国土交通省から事業計画の認可を受ける路線バスとは異なる。バス停はなく、乗客は道路沿いなどで乗り降りする。路線バスより規制が緩いことから料金設定などの自由度が高い一方、安全性が低くなりかねないとの指摘もある。
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