一時金は300万円を軸に調整中で、特別療養手当が月額1万円、治療を受けた人には別に2万−3万円を上乗せ支給する。一時金は国が全額を立て替えて支払い、後でチッソに請求する。与党案では救済対象外の全身性感覚障害なども対象に含まれる上、認定審査では主治医の診断が尊重されるため、与党案よりも多くの人が救済されるとみられる。
(2009年3月14日掲載)
自民、公明両党が13日、水俣病の未認定患者救済をめぐる特別措置法案を国会に提出したことを受け、両党は、独自の救済法案の提出準備を進めている民主党と近く協議を始める。しかし与党法案に原因企業チッソの分社化や、認定審査の終了につながる「地域指定解除」が盛り込まれたことで地元では反発が高まり、民主党も歩調を合わせて反対している。与党案と民主党案の溝は大きく、着地点は見えない。
「被害者の救済が法案の目的です。救済が終わった後でないと地域指定を解除しないことを丁寧に説明しないと」。13日、与党プロジェクトチーム(PT)の江田康幸衆院議員は強調した。
地元の患者団体などは地域指定解除と分社化に対し、「幕引きは許さない」と、反発を強めている。こうした反発を懸念する声は与党PT内部にも以前からあり、条文には認定申請や訴訟も含めた救済が終了することが「最終解決」の条件とし、「救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されることが確定した後」に地域指定を解除すると書き込んだ。
与党PT関係者によると「あたう限り」とは「ほとんどすべて」という意味で法案にこうした文言が使われるのは異例。「法案では救済されるべき人がいる間は地域指定を解除しないことを明確にした。『幕引き』という言葉が独り歩きし誤解されている」とPT関係者は戸惑いを隠さない。
その一方で救済策の対象は「手足の先端ほど強いしびれがある人」に限られる。一部の患者団体が求める全住民の調査も実施されておらず、「救済から漏れる人が続出する」との懸念は根強い。
参院では野党が過半数を占める「ねじれ国会」の中、与党側は衆院再議決を否定するが、分社化や地域指定解除の問題に加え、一時金の額も、与党の150万円に対して民主党は300万円を軸に調整しており隔たりは大きい。「与党案はチッソの救済法案だ。安易に妥協はできない」(民主党議員)とする同党と歩み寄れる見通しが、与党側にあるわけではない。
ただ、互いの考えを主張し合うだけでは議論は平行線をたどるだけだ。与党、民主党双方に被害者の理解を得られる案を模索する努力が求められる。
(東京報道部・伊藤完司)
●救済策実現を与野党に要望 熊本県議会が意見書
熊本県議会の水俣病対策特別委員会(西岡勝成委員長)は13日、与党が水俣病救済法案を国会に提出したことを受け、与野党の協議を早急に行い、党派を超えて救済策を実現するよう求める意見書を衆参両院の議長に提出する方針を決めた。
23日の県議会本会議で可決後、村上寅美議長が提出する。
与党案に反対している民主党も独自の法案提出を予定しており、意見書は「薬害肝炎やハンセン病問題では被害者救済の大義のもと、党派を超えた立法を実現した」として与野党案を問わず、救済策の実現を求めている。西岡委員長は「政局に左右されずに救済を実現することが必要だ」と話している。
●石牟礼道子さんと患者が反対声明
与党が国会に提出した水俣病救済法案に対し、水俣病をテーマにした小説「苦海浄土」を著した作家、石牟礼道子さん=熊本市=や水俣病の認定患者たちが13日、法案に盛り込まれた原因企業・チッソの分社化と、認定制度の終了を意味する「地域指定解除」の撤回を求める声明を発表した。市民に広く賛同を呼び掛けていく方針で、20日に与党や国、熊本県あてに郵送する。
声明は、与党の法案を「加害者による水俣病事件の幕引きを画策するもの」と批判。「地域指定の解除は今日なお続く水俣病事件の被害実態に照らして断じて許されない」としている。
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