憂楽帳

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憂楽帳:つながり

 「憂楽帳というのは、人と人を結びつけますね」。神戸市に住む読者から、こんな便りをもらった。

 この欄で以前、酒が好きで早くに亡くなった父にふれた時、「かつて仕事仲間でライバルであった人物の娘さんに違いない」という手紙が届いた。飲酒で血糖値が上がった、と書いた私の深酒をたしなめ、「なぜ記者になったのか。振り出しを見つめ、自分を大切にし、世の中を明るくする記事を書いてほしい」と締めくくられていた。父にしかられているような気がした。確かに「ライバル」の娘であることを伝え、近況を報告した。そこで返ってきたのが冒頭の言葉だった。

 かかりつけ医を紹介してくれたり、「自分もお酒をやめられませんが」としながらも、私を心配してくれる手紙ももらった。この欄を担当した3カ月。これほど読者を近くに感じた経験はなかった。

 入社当時、先輩から「読者を思い描きながら記事を書け」と教えられた。しかし、他社との競争などに追われ、ままならないことも多かった。余裕がなくなると仕事の原点をも見失ってしまう。肝に銘じなければ。【須佐美玲子】

毎日新聞 2009年6月30日 大阪夕刊

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