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きょうの社説 2009年6月30日
◎国の「義務付け」廃止 税の無駄を減らすためにも
国が自治体の仕事を法令で細かく規制する「義務付け」の見直しについて政府の地方分
権改革推進委員会が中間報告をまとめた。国が頑強に守ってきた聖域に切り込み、社会福祉施設の設置基準などについて原則廃止を求めたのは一歩前進である。「児童館には集会室と遊戯室を設けよ」「歩道の幅は2メートル以上」など、自治体の やる仕事に対して全国一律の縛りをかけるやり方が地方の実情に沿うとは限らない。人口の少ない北陸であれば、集会室と遊戯室が共用の児童館があってもいいし、田んぼの中を走る道路に、すべて立派な歩道を整備する必要もない。実情に合わせて柔軟に対処できる裁量を認め、地方自治の自由度を高めてほしい。また、税の無駄遣いを減らすためにも「義務付け」の廃止は避けて通れないと思うのである。 このところ、宮崎県の東国原英夫知事や大阪府の橋下徹知事の言動にスポットライトが 当たることが多く、自民党や民主党はマニフェスト(政権公約)などで地方分権の推進をより強く打ち出す必要性に迫られている。この機会を逃さず、できるだけ多くの義務付けを廃止に追い込み、地方の裁量拡大につなげたい。 分権委は昨年12月の第2次勧告で、8465項目の義務付け規定のうち、ほぼ半数に 当たる4076項目について廃止を含む抜本見直しを提言した。今回の中間報告では、▽施設の設置管理基準▽国との協議や国の同意、許可などを得る手続き▽計画策定やその手続き−の3分野について、義務付けの廃止を求めた。 具体案は秋にもまとめる第3次勧告で示されるが、省庁にとって、法令による義務付け は権限の源泉だけに、「省益」を奪われることへの抵抗はことのほか激しいだろう。分権委の設置期限である来年3月までにどの程度実現できるのか、まだまだ楽観はできない。 各省庁は、自治体の裁量を拡大すると、混乱が生じるという理由で「口出し」を正当化 してきたが、補助金行政は弊害が多く、もはや時代に合わない。今こそ地方が声を大にして政党の尻をたたき、官僚の抵抗をはねのけていきたい。
◎ガイド運転手養成 「企業市民」意識で促進を
北陸新幹線の開業を見据えて、金沢のタクシー業界が「ガイド力」の高いドライバーを
育てるための新たな取り組みをスタートさせる。タクシー会社などで組織する金沢観光ガイドタクシー運営協議会が独自の検定を行い、「金沢ガイドタクシー乗務員」を認定するという。観光客が旅先で偶然出会ったタクシードライバーの案内が丁寧で詳しければ、旅の満足度は高まり、まちそのもののイメージ向上につながろう。各社は、利益の追求ばかりではなく地域貢献にも目配りする「企業市民」の意識をもって、積極的に受験を促してほしい。新たな取り組みは、検定と実技研修にパスしたドライバーが、認定証を車両に掲げて乗 務する仕組みである。これが定着すれば、観光客向けサービスのレベルアップを図り、それを通じて地域の活性化に寄与しようと頑張っているタクシー会社と、そうではない会社が、市民にも一目で分かるようになるわけだ。各社は、この点もしっかりと心に留めておく必要があろう。 より充実した案内ができるドライバーを養成するために、金沢経済同友会が実施してい る金沢検定との効果的な連動も求めておきたい。今年で5回目を迎える金沢検定は、金沢の歴史や文化などに関する知識を試す機会として市民にもすっかり定着しており、ドリルなども普及している。「ガイドタクシー乗務員」の認定証取得とともに、金沢検定にも挑戦することによって、知識がさらに深まるはずである。 既にいくつかのタクシー会社では、金沢検定の受験を促す取り組みを始めており、個人 的にチャレンジしているドライバーも少なからずいるだろう。新たな取り組みの始動を機に、この空気を業界全体に広げていきたい。 北陸新幹線の開業は、金沢にとっては首都圏からの観光客を増やす千載一遇の好機であ り、効果を最大限に引き出すためには、観光客の「足」の役割を担う交通網の拡充が不可欠だ。今後も、タクシー業界の自発的な努力に大いに期待したい。
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