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きょうのコラム「時鐘」 2009年6月30日
見知らぬ客を相手にする会話には動物と子どもの話題が良い、とタクシー運転手に聞いたことがある。罪のない話を選んで、退屈を紛らせる
それには格好の話題が幾つもある。空からのオタマジャクシ騒動にはそろそろ飽きたが、今度は富山市のど真ん中をカモシカが走り回って驚かせた。子ども呼ばわりは失礼だろうが、まだ17歳のプロゴルファー、石川遼選手が今季初優勝し、全英オープンの出場権を手にした 「遼くんに生涯賃金追い越され」というサラリーマン川柳があった。複雑な笑いに誘われる。人には、早咲きもあれば遅咲きだってある。「生涯賃金追い越され組」の多くは、そう自らに言い聞かせて少年に拍手を送るのだろう 乗り合わせたタクシーで、カギの手になった道をそのまま進むように、と声を掛けた。「曲がり真っすぐやね」と、年配の運転手が応じた。奇妙な日本語に聞こえるが、ハンドルを切りながら最短距離を行くのだから、理屈に合っている 早咲きでも遅咲きでも、アクセルをふかせる一直線の道だけではあるまい。罪のない車中の会話でも、心に残ることはある。 |