現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

日米密約―また崩れた政府の「うそ」

 日米間に核兵器の持ち込みに関する密約など存在しない。そう言い続けている日本政府の「うそ」を突き崩す新証言が、日本のかつての外交責任者の口から語られた。

 1987年から89年まで外務省の事務次官をつとめた村田良平氏(79)が、この密約の存在を認め、文書の形で歴代事務次官や外相が引き継いできたと明かしたのだ。

 これまでこの密約は、米政府側の公文書公開などで具体的に裏づけられながら、日本政府は一貫して存在そのものを否定してきた。今回の証言についても河村官房長官は「密約は存在しない」と述べた。

 だが、外務官僚のトップ経験者が認めたのである。政府はもはや「うそ」の上塗りをやめ、歴史の事実を国民の前に明らかにしてほしい。

 村田氏が証言した密約は、60年の日米安保条約改定の際に、核兵器を積んだ米艦船が日本領海を通過したり、寄港したりすることなどを日本側が認めると約束していたというものだ。

 村田氏は「前任次官から引き継ぎ、在任中に2人の外相に説明したほか、後任の次官に同じように引き継いだ」「密約は普通の事務用紙1枚に書かれて、封筒に入っていた」などと、極めて具体的に語った。

 日米間の密約はこれ以外にもある。

 朝鮮半島有事の際には事前協議なしに在日米軍が日本の基地から出撃できるとしたものや、極東有事の際に沖縄への核再持ち込みを認めると約束したことなどがある。いずれも60年代に交わされ、米国務省の公文書やライシャワー元駐日米大使の証言などで、繰り返し明らかにされている。

 外交交渉の中には、すべてを国民に明らかにできないこともあるだろう。とりわけ冷戦まっただなかの60年代、米国に安全保障を依存した日本にとって、米国の戦争に巻き込まれることへの懸念を抱く国内世論と、米国の要請を両立させるのは並大抵のことではなかったに違いない。

 しかし、密約を交わしてから長い年月が経過しただけではない。冷戦はとうに終わり、米国の核戦略や日米同盟の役割もかつてとは様変わりしつつある。さらに、一方の当事者である米国が事実を公開している。

 もはや隠し続ける意味があろうはずがない。政府は密約を認め、国家的なうそをつき続けたことへの批判に向き合うべきだ。それがないままだと、日米間の今後の安保協力にも国民の素直な理解を得られまい。

 外交政策について、たとえ事後であっても公開し、説明を尽くす。これが民主主義を成り立たせるための政府の重い責任のはずだ。国民に信頼される外交を育むためにも、もうほおかむりは許されない。

JAL支援―厳しい経営改革が条件だ

 業績が超低空飛行を続ける日本航空に対し、政府が本格的な支援に踏み切った。世界同時不況や新型インフルエンザで打撃を受けた経営を救うため、日本政策投資銀行と民間銀行が計1千億円の融資をする。政投銀の融資については政府が大規模な保証をつけることを決めたのだ。

 ところが、この融資も一時しのぎに過ぎないようだ。今後も多額の社債の償還などの予定が目白押しで、資金繰りは容易でない。収益性を高める経営構造の抜本改革なくして、日航の再浮揚はありえまい。

 このため、保証の責任を負う財務省に迫られた所管の国土交通省が日航の指導・監督に乗り出すことになった。金子国交相が「日航には痛みを伴う大幅なコスト削減が必要」と述べたのも当然のことだ。

 民営化して22年。米同時テロや新型肺炎(SARS)、イラク戦争などの逆風を受けるたびに政投銀の融資で急場をしのいできた。赤字垂れ流しの経営体質が克服できていないことが最大の問題である。

 労働組合が八つも分立し、社員やOBの厚遇など高コスト体質にメスが入らない。背景には、危機になっても「最後は政府が助けてくれる」と高をくくる「親方日の丸意識」がある、と言われてきた。

 日航の経営体質を温存させてきた責任は国交省にもある。航空各社が払う空港着陸料は国際的にみて異常に高い。これを元手にして、利用客の少ない地方空港を造り、不採算のローカル路線を増やしてきた。「航空ネットワークの拡大と維持」を優先する航空行政のしわ寄せが日航とライバルの全日本空輸に及んでいるのだ。この構図が続く限り、日航の経営体質改善の道のりは遠いといわざるをえない。

 こうした経緯を考えると、国交省に日航の指導、監督を全面的に任せておくわけにはいかないのではないだろうか。このさい、米オバマ政権がゼネラル・モーターズ(GM)に対してとった手法を参考にしたい。

 オバマ政権は、民間で活躍する企業再建などのプロを集めて特別チームを作り、日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用も排除しない構えでGMの利害関係者に譲歩を迫った。結局、GMの場合は破産法を申請し、再起を期している。

 法的措置の活用の是非はともかく、政治家の圧力や行政のしがらみを排除するためには、政府も外部の専門家による特別チームを作るべきである。客観的で厳しい視点から、日航再生のあるべき具体像を突き詰めるのだ。

 そうする過程では航空行政の問題点も洗い出されよう。しかし、それを恐れていては、赤字垂れ流しに歯止めはかからないのではないか。

PR情報