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PJ: 和田 牧夫

新型インフルで沈黙続ける東京都
2009年06月13日 09:46 JST

【PJニュース 2009年6月13日】世界保健機構(WHO)が警戒水準を最高レベルのフェーズ6へ引き上げたことに伴い、河村建夫官房長官がコメントを発表した。「世界規模で感染が拡大している状況」であることを認めつつも、日本では「新たな感染者の発生が比較的少なく、感染がまだ一部地域に限定している」と述べ、世界で起こっていることとは逆ともいえる評価を下した。

国内の感染状況をみると、新型蔓延国から帰国した人の感染例が全国的にぱらぱらとみられ、南は福岡県から北は北海道まで6月11日現在で22都道府県にも及ぶ。また、このような孤発例とは別に福岡市と千葉県船橋市で、11日には東京都内でも学校を中心とした集団感染が起こっている。帰国者感染は海外で感染をうけて持ち込まれたものだが、集団感染は国内でヒトからヒトへ感染したということで疫学的にみて意味合いが全然違う。

多くの帰国者感染の報道の陰に隠れて見逃されがちだが、このような国内感染を疑わせる事例がほかにも散見されている。6日に横浜市で最初の感染者として報告された20歳代の男性は、都内の職場に電車通勤する途中で感染したらしい。7日に報告された滋賀県彦根市の大学教諭は、東京ビッグサイトで開催中の見本市に参加中、5日間東京に滞在していた間に感染した可能性が高い。神奈川県海老名市の女子中学生の感染は秋田への修学旅行の後で、船橋の中学生の集団発生も岩手への修学旅行の後に起こっていて、国内のヒトからヒトへの感染を契機に広がっている。

このように、6日あたりからどう見ても東京都内に新型インフルの感染者が潜んでいるような兆しが見られているのだが、東京都は特別な見解を示すわけでもなく沈黙を続けている。新型インフルが深く静かに広がっていくことを容認するというならば卓越した考えということになるのかもしれないが、四苦八苦して事態の対応に追われている全国の地方自治体と比べるとあまりにも対照的であり、異様なまでに際立っている。何もしなければ(すなわち疫学調査もせず、報道発表もしなければ)あたかも何もなかったかのように都民の社会活動は平穏無事に保たれ、感染は拡大しても感染報道は終息していく。

しかし、東京都は果たして本当にこのような深い考えがあって静観姿勢を貫いているのだろうか。そうとは到底思えない節が多々ある。サーベイランスもさることながら、ヒト-ヒト感染経路の追跡調査に関しては極端なまでに消極的である一方で、蔓延国から帰国した感染者には措置入院という隔離政策を続け、発熱外来も一向に解除しないなどの厳しい封じ込め政策を採り続けているのである。

他方で「感染の拡大を静かに容認する」方針とはまったく矛盾した対応を採り続けているということは、理論上は成り立たない。うがった見方をすれば「何もしていないのではなくてちゃんとやっていますよ」という(市民と厚生労働省双方への)目くらまし作戦なのかもしれない。もしそうだとしたら巧妙といえば巧妙だが、医学とか科学とかとはあまりにもかけ離れた政治的なパフォーマンスであって、そんなことで本当の意味の防疫など到底できるものではないだろう。とにかく封じ込め政策は即刻やめて、水面下でしっかりしたサーベイランスに加えて追跡調査をきちんと行うことを期待する。現状で行われていることはまったく逆なのだ。「フェーズ6になっても現状維持」という方針にすべて従う必要もない。【了】

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