2009年6月30日7時18分
あて先が不明で本人に届かず、自治体に返送された定額給付金の給付申請書が、全国18の政令指定都市と東京23区で計21万通を超えることが、朝日新聞社の調べで分かった。「政策に賛同できない」などの理由で受け取りを辞退したケースも、判明しているだけで11市、800件近くに上る。
今月22日時点で、あて先不明で届かない申請書は、指定市では大阪市の3万通が最多で、横浜市の2万3千通が次ぐ。東京23区は、29日時点で、計約6万通。
原則として、申請書は2月1日時点の住民基本台帳と外国人登録を基に作成される。自治体によっては直前の登録住所地をあて先に変更して世帯ごとに発送している。18政令指定市の世帯数は計約1千万を超え、定額給付金の対象となる全5千万世帯の2割ほどを占める。
引っ越しシーズンと重なったこともあり、郵便局に転送届を出していない人や、住民票を置いたままどこかに移り住んだ人が、あて先不明になっているらしい。入院している人や、不況で解雇され、帰国した外国人らも含まれているとみられる。大阪市では追跡調査チームの設置を検討しているが、「本人の申告を待つしかない」(福岡市)など、多くの自治体は対応に苦慮している。
総務省定額給付金室の担当者は「一義的に、住民基本台帳の住所に送ったことで自治体の責務は終わり、追跡調査の必要はない。しかし、受給者が全く知らないまま申請期限が過ぎることは好ましくない」と話す。
一方、世帯の中の一部辞退も含め、申請書の辞退欄などにチェックして返送されたケースは、仙台、さいたま、千葉、新潟、浜松、京都、堺、神戸、岡山、広島、福岡の11市で計約780件に上った。他の7市は辞退件数を集計していなかった。47件、計95万円の辞退があった浜松市は「政策に賛成できない人、亡くなった家族の分を受け取らない人たちがいた」。118件のさいたま市は「申請書を返送しないことで辞退を意思表示する人もいるだろう」とみる。(前田基行)