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大臣規範違反の中川昭一議員
6月22日10時38分配信 MyNewsJapan
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中川VS石川「北海道11区」献金ランキング |
中川氏といえば、麻生首相の朋友で大の酒好き代議士として有名な人物。農水大臣、経産大臣、党政務調査会長、財務・金融大臣を歴任し、将来の総理大臣候補のレールを歩んできたが、今年2月にイタリアで開催したG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の終了後、赤ら顔でロレツが回らないままトンチンカンなやりとりを連発する “ヘロヘロ泥酔”会見の映像を世界にさらす前代未聞の失敗をして閣僚を引責辞任した。国民にこれほど鮮烈な印象を残した政治家も珍しい。
一方、石川知裕氏は、小沢一郎氏の元秘書で側近中の側近の一人。西松マネー問題で検察から事情聴取を受けたのは記憶に新しい。
全国屈指の知名度の中川氏と、小沢側近の石川氏の激突は、次期衆院選の結果を象徴するものとなるだろう。両氏のこれまでの対戦成績は、05年の郵政選挙のときに中川氏が107,056票、石川氏が84,626票と、2万2430票差で中川氏が勝ったものの、自民党にすさまじい追い風が吹いてもなお、これしか差がつかなかった。今回は民主党支持率の上昇と中川氏の不祥事で、大接戦が予想される。
そこで有権者の判断材料の1つにするため、両陣営のバックにはどのような組織や勢力がついているのかを、政治資金面からチェックした。
確認した政治団体は、両候補が支部長を務める政党支部(「自由民主党北海道第十一選挙区支部」「民主党北海道第11区総支部」)と、両候補の資金管理団体(「昭友会」(代表者:中川昭一氏)、「勝山会」(代表者:石川知裕氏)。
プラス両候補の資金源となっている政治団体(中川氏の関連政治団体は次の10団体。「昭成会」「中川会」「政経研究会」「中川昭一帯広連合後援会」「中川昭一十勝連合後援会」「中川昭一札幌後援会」「近代政治懇話会」「明日の十勝経済産業を語る会」「明日の十勝を語る会」「北海道中小企業団体政治連盟」。
チェックの方法は、中川氏の資金管理団体「昭友会」と東京に事務所を置く「昭成会」「中川会」「政経研究会」は総務省のHPから閲覧。それ以外は北海道選管に収支報告書のコピーを郵送してもらうよう申請し、文書を入手した。期間は全て過去3年間分(2005年〜2007年分)だ。
こうして政治資金明細をチェックし、企業、政治団体および個人の献金とパー券購入額を集計して、金額順にランキングしたのが上記一覧だ。
その結果、中川氏には、北海道の中小企業の政治団体や、自民党お馴染みの支持母体「日本医師連盟」、家具&インテリアショップで業績絶好調の「ニトリ」、「農協関連団体」などからの資金が目立った。法の抜け道をフル活用して「血税還流」したカネも流れている。一方の石川氏には、「小沢一郎チャンネル」を開設したニコニコ動画を経営するドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏や、石川氏の親族、それに道議、市議、町議といった地方議員から徴収した上納金がメインであることがわかった。以下、それぞれ詳細に見ていく。
中川氏に最も献金しているのは、「北海道中小企業団体政治連盟」で金額は3045万円に上る。同政治連盟は05年、06年の中川昭一氏が経済産業大臣をしていた時期に集中して献金している。
資金収支報告書によると、同団体は04年11月29日にも同様のパーティーを開いている。経産大臣に関係団体が3000万円以上の献金をしているというのは、閣僚が守らなければいけない決まり事の「大臣規範」の1「国務大臣、副大臣及び大臣政務官の服務等」の(6)「関係業者との接触等」にある次の一文の趣旨に真っ向から違反している。
「倫理の保持に万全を期するため、関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」
つまり、献金した団体は「関係業者」の集まりそのもので、その団体が国の補助金をもらうために所管官庁の経済産業省のトップに約2年もいた人物に、3000万円以上の献金をしていたという事実は、まさに「職務に関連して贈物や便宜供与を受けること」という一文にぴたりと当てはまる。
ちなみに、同団体が05年度のパーティーを開いた時、中川氏は経産大臣からの農水大臣に急遽鞍替えしたため、実際は「中川昭一経済産業大臣を激励する会」という名にもかかわらず、中川氏はすでに農水大臣に変わっていたが、例えば、経済産業大臣だった04年11月29日にも、同団体は「中川昭一経済産業大臣を激励する会」という名のパーティーを札幌で開催していたり、05年の経産大臣在任中にも同団体は1000万円以上を中川氏の関連政治団体に献金するなど大臣規範に抵触しているという事実に変わりはない。さらに、後述する農協団体や砂糖メーカーの税金還流、億単位のパーティー収入など、この人にとっては、大臣規範はあたかも破るためにあるかのように、ことごとく違反しているのである。
これほど明らかに違反を繰り返しているにもかかわらず、今まで問題になっていないのは、大臣規範には罰則がないことと、政治資金の根本制度を定めた「政治資金規正法」に「抜け道」が色々と用意されているためだ。どういうことかというと、同法では、本来は補助金を受けた会社や団体が献金するのは禁止されているのに、北海道中小企業中央会のように政治団体になりさえすれば、補助金をもらうために多額の献金をしてもお咎めナシということになっている。こんな抜け道だらけのザル法がまかり通っていて政治とカネの問題が解決できる日がくるのだろうか。
2位は日本医師連盟の830万円。同団体はいわずと知れた自民党最大のスポンサーである。
3位は札幌市に本社をおく家具&インテリアショップの(株)ニトリ。同社は3年間で806万円分のカネを中川氏に渡しているが、これは中川氏に限った話ではない。たとえば、05年からの3年間で自民党元幹事長の武部勤氏は1772万円、元官房長官の町村信孝氏は1400万円もニトリから受領している。ニトリは他にも、民主党や公明党の国会議員にもカネを渡してる。要するに、ニトリは政界のタニマチ的存在なのである。
ニトリは激安家具で増収増益を続け、2009年2月期も過去最高益を達成した。輸入比率が約6割と高く、中国などアジア諸国から原材料を輸入している。このため、外務大臣であった中川氏をはじめ自民党幹部にカネをばら撒くことで、アジア情勢の不足の事態に備えるとともに、大規模小売店舗法をはじめとする大型店規制や事業用地取得などに際し、便宜を図ってもらう狙いがあると思われる。
4位の「JA関連団体」は中川氏のバークボーンに深くかかわっている。金額の内訳は、十勝地区農協政治連盟207万5千円。北海道農協政治連盟130万円。全国共済農業協同組合連合会90万円。健康問題研究会90万円。ホクレン肥料90万円、ホクレン商事36万円。
これらは全部、税金もらって恩恵を受けている組織である。まず、JAは農水省の補助金を受けている。つまり、農協政治連からの献金は全て税金還流だ。しかも、十勝地区農協政治連盟の代表者は、十勝地区農業協同組合長会の会長でもある有塚利宣氏という人物。この人は「中川昭一十勝連合後援会」の代表もつとめ、そこで毎年、ゴルフ大会やバーベキューパーティーなどを開き、総額3202万円を稼ぎ出している。
さらに同氏は「明日の十勝を語る会」という政治団体も立ち上げて、06年8月5日に帯広市内で「中川昭一農林水産大臣を激励する会」と称する政治資金パーティーを開催して地元の支持者を集め、計1700万円の資金を集めたりもしている。このように地元にほとんど帰らない中川氏に代わって票とカネを束ねているのは、農協の有力者なのである。
90万円を献金している全国共済農業協同組合連合会(全共済)は、農家の保険会社で、JAグループの中核の1つ。この団体は補助金とはコインの裏表の「減税措置」により、「法人税率」が22%(民間保険会社は30%)などの恩恵を受けている。事実上の税金還流である。
同じく90万円の献金をしている健康問題研究会は、JAグループの病院を経営するJA厚生連などによる政治組織。厚生連の病院も他の病院と違って恩恵を受けている。JA厚生連によると、なんと「法人税が非課税」なのだという。これも税金還流である。
JAグループの北海道の農産物販売を取り仕切って儲けているホクレンも、農水省に関連する補助金をたくさん受領している。ホクレンの広報部に05〜07年に受けた補助金を問い合わせたところ、ハコモノ農業施設に以下のような補助金が入っていたことが発覚した。
2005年度「てん菜糖集荷製造流通合理化対策事業補助金」5億9750万円。
2006年度「加工澱粉製造設備補助金」1715万円。
2007年度「強い農業作り事業(整備事業)交付金」2億9356万円。
2007年度「地域バイオマス利活用事業交付金」9006万9千円。
計9億9827万9千円もの補助金を受けている。しかも、ホクレンが販売する農産物は、農水省の補助金により生産者は安くつくることができる。ホクレンにとっては、その分、安い原価で販売することを可能にしている。このように、国民の税金におんぶにだっこのホクレンが、子会社を迂回しての薄い族議員に献金するのは、税金還流以外の何ものでもない。
(佐々木奎一)
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最終更新:6月22日10時38分
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