「病院の再編は避けられない」―日本慢性期医療協会・武久会長
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は6月26日、日本慢性期医療学会浜松学会で「慢性期病床の理念と機能を考える」と題して講演した。この中で武久会長は、社会保障国民会議の最終報告で示されているように、高度急性期病院への医療資源の集約化が進められた場合、病院の再編は避けられず、地域の中小病院は急性期治療後の慢性期医療の役割を果たすことになるとの見方を示した。【関連記事】
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武久会長は、現在の一般病床約90万床のうち、実質的な入院患者数は約70%といわれていると指摘。さらに、この中から難病の患者や超長期患者など実質的には急性期でない患者を差し引くと、50万床が「一応、急性期病床と考えてよい」との見方を示した。
また、救急機能と総合医療を提供できる500床規模の高度急性期病院を、人口20万人につき1つ置く場合、高度急性期病院は国内で600病院となり、病床数は約30万床になると指摘。「個人的な希望」と前置きをした上で、「高度急性期病院は30万床かなと思っている」と述べた。残りの20万床については、現在の地域のケアミックス病院の一般病床が想定されるとした。
さらに、医療資源を高度急性期病院に集中する政策が進められる場合、「少なくとも、100床から200床前後の地域の病院は、高度急性期機能を持つことは不可能になる」と指摘。こうした中小病院は、ケアミックス病院や慢性期病院など、高度急性期治療の後を引き継ぐ病院として機能分化するとの見方を示し、「病院の再編は避けられないだろう」と述べた。
武久会長は、病院の機能分化を想定した場合に必要になる慢性期病床数も示した。急性期病床を50万床とした場合、平均在院日数を約10日とすると、1日の退院患者は約5万人で、1か月の退院患者は150万人。さらに、この3分の2が高齢患者と仮定すると、1か月100万人になるとした。また、社会保障国民会議の最終報告で示されているように、急性期病院の平均在院日数が20日から10日に短縮すると、患者は完全に治癒する前に退院することになると指摘。こうした「半分治った状態」で在宅に戻るのは難しいとして、高齢患者は急性期病院退院後、30万人が慢性期病床に入院し、50万人が自宅へ戻り、介護保険施設と居宅系施設にそれぞれ10万人が流れるとの想定を示した。さらにこの場合、慢性期病床への1日当たりの入院患者数は1万人となるため、平均在院日数が90日とすると、「慢性期病床は90万床必要になる」と指摘した。
また、慢性期病床から退院する患者を受け入れる介護保険施設の不足も指摘。慢性期病床から毎月30万人の患者が退院する場合、「20万人が在宅としても、10万人は介護保険施設に行かざるを得ない」が、この人数を介護保険施設で吸収するのは数的に難しいと述べた。
一方で、十数年後には、東京や大阪などを除く地方では、高齢者の総数が減少するため、今、大幅に施設を増やすのは難しいとの見方を示し、「在宅で引き受けざるを得ないというのが、わたしの意見だ」と述べた。
その上で、「居住系施設や在宅である程度、本人や家族が満足する医療を受けながら看取りができる体制を取っていくことがわれわれの責務」と強調。慢性期病院が「医療の最後のとりで」となり、急性期病床からの退院後も後遺症を抱える患者を受け入れ、治った人を居住系施設や在宅につなげ、さらに在宅療養支援診療所の支援をするなど、在宅や居住系施設の患者をカバーしていくことが求められると述べた。■3次救急と療養病床の連携にインセンティブを
一方、国立病院機構大阪医療センター救命救急センターの定光大海・診療部長は、「救命救急センターの立場から」と題して、3次救急の現場における患者の退院先確保をめぐる問題について講演した。定光部長は、救命救急センターにおける不応需の理由のうち、45.5%が「満床」だったとするデータを提示。また、救命救急センターの「後方病床」からの退出先の約80%が療養型病院だと述べた。その上で、「救急医療と慢性期医療は相補的関係にある」「救急医療システムの維持に出口問題は避けて通れない」「慢性期医療の縮小は救急医療の崩壊を加速する」と語った。
また、永生病院の飯田達能院長は、「慢性期病院の3次救急病院との連携」をテーマに講演。3次救急病院に入院している比較的軽症の患者を療養病床で受け入れることで、3次救急の病床の回転をよくすることができると指摘し、東京における3次救急病院と療養病床の連携実績を紹介した。その上で、こうした連携システムを拡大するには、療養病床を持つ慢性期病院が「患者を受け入れたいと思うインセンティブが必要」と強調。診療報酬での対応や行政からの支援を求めた。
更新:2009/06/29 22:29 キャリアブレイン
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