児童買春・ポルノ禁止法の改正案がやっと国会で審議入りした。改正案は児童ポルノの単純所持の規制をめぐって、与党案と民主党案が対立している。対応の遅れた日本は国際的な批判を浴びているだけに、早期成立への努力が望まれる。
1999年に超党派の議員立法として成立し、その後一部改正された現行法は、販売や提供目的に限って所持を禁じている。単純所持の禁止は、捜査権乱用の恐れなどの問題があるため、法案に盛り込むのが見送られてきたからだ。
しかし、主要8カ国(G8)の中で単純所持を禁止していないのはロシアと日本だけとなった。個人が集めた写真や画像が簡単に複製されネットで世界に拡散するようになると、被害を受けた子どもの苦しみは癒やされることがない。アニメ、ゲームにも規制がないため、日本は児童ポルノの「供給国」との指摘も出ているほどだ。
このため、自民、公明両党は個人が趣味で児童ポルノの写真や映像を持つ単純所持について規制対象に追加する改正案を昨年6月に衆院に提出した。一方、民主党は単純所持の一律禁止は恣意(しい)的な捜査につながりかねないとして、児童ポルノを買ったり繰り返し取得した場合に適用する「取得罪」を盛り込んだ対案を今年3月に提出した。
衆院法務委員会で行われた提案理由説明で、与党側は「国際的な潮流があり、禁止しないとわが国の信用にかかわる」と主張した。民主党は「性的搾取や虐待から児童を保護する本来の目的を逸脱し、法を乱用してはならない」と述べた。
参考人質疑も行われ、日本ユニセフ協会大使のアグネス・チャンさんは、インターネット上に長く残る児童ポルノは「被害者の心をずたずたにする凶器だ」と、単純所持規制の必要性を訴えた。
一方、上智大の田島泰彦教授は、与党案は表現の自由の観点などで過剰規制であり、捜査機関の「権限乱用が懸念される」として民主党案を支持した。
双方の溝は深いようだが、性的虐待から子どもたちを守るという願いは同じだ。一致点を探るために与野党で議論を深め知恵を出し合ってほしい。
国連児童基金(ユニセフ)などが昨年ブラジルで開いた国際会議では、児童ポルノサイトへのアクセスや閲覧行為も犯罪として法律で禁止するよう各国政府に提言した。国際社会は規制強化に動きだしている。日本も後れを取ってはなるまい。
イランで大統領選後の混迷が続いている。開票結果に抗議し、再選挙を求める改革派の行動に対して治安当局は徹底した弾圧で対抗し、解決の糸口が見えない状況だ。
テヘラン市で抗議に繰り出した改革派のデモ隊は一時数十万人に上り、1979年のイラン革命を思わせる事態となった。治安部隊との衝突では多数の死傷者も出た。
治安当局は、活動家やジャーナリスト、大学教授ら多数を拘束した。外国メディアには取材禁止を命じ、英国の記者や外交官を国外退去処分とするなど強硬姿勢を強めるばかりだ。
大統領選を管理する護憲評議会の報道官は、大統領選は「革命以来最も健全だった」と述べて再選挙を拒否。評議会は一部の投票箱について再集計し、選挙の最終報告書を作成する特別委員会設置を決めた。
しかし、改革派候補のムサビ元首相やカルビ元国会議長らの陣営は参加を拒否する構えで、政権側と改革派の妥協は遠のいた格好だ。現職の当選確定は揺らぎそうもない。
情勢を静観していたオバマ米大統領は、デモを武力鎮圧した行動を「言語道断だ」と非難し、イラン政府に表現の自由や国民の権利尊重を求める声明を発表した。アハマディネジャド大統領は「なぜ内政に干渉するのか」と反発している。
聖職者が統治するイスラム国家のイランは、中東諸国では比較的民主的な選挙を行う国とされていた。改革派を力で押さえ込む民主主義に逆行する行動は国際的な孤立を招くだけだ。
今回の混乱で米欧など6カ国と核問題をめぐる協議のめども立たなくなった。イランの混乱で中東地域が不安定になる恐れもある。イランは平和的な解決を目指すべきだ。
(2009年6月29日掲載)