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<地デジ>著作権保護技術無効の装置出回る 有効な対策なし

6月29日15時42分配信 毎日新聞

 地上波デジタル放送(地デジ)で番組の録画・コピーを規制するため導入されたB−CAS(限定受信)システムを巡り、規制を一切無効にできる受信機「フリーオ」が出回り、波紋を広げている。著作権保護のために政府や業界が鳴り物入りで同システムを導入したものの、フリーオの出現で完全に骨抜きにされ、有効な対策がないまま放置状態が続く。フリーオを販売している業者は「法的に問題ない」とネット上で販売を続ける構えで、混乱の中での地デジ全面移行は消費者に不信感を広げそうだ。【情報社会取材班】

 デジタル放送はアナログ放送と異なり、コピーを繰り返しても画質が落ちない。政府と業界は著作権保護のため、一番組の録画回数を制限する同システムを地デジ受像機に組み入れた。フリーオは、パソコンに取り付けるテレビ放送の受信機で、地デジなどの録画規制を一切無効にする。パソコンからDVDなどへ何度もコピー可能で、編集も自由にできるようになり同システムは骨抜きにされる。

 地デジ用のフリーオは07年秋からインターネット上で販売。価格は2万円前後。サイトでは代表者名や所在地など一切を明かさず、台湾で製造しているという。サイト上で連絡すると、国際郵便を使った通信販売が可能になる。今年5月下旬には東京の電器店が店頭販売した。

 同システムは、放送業界と家電業界の合意で導入されたもので法的根拠はない。国の情報通信審議会の検討会では、フリーオにどう対処するか方針は決まらず、同システム以外の方法も検討中だ。

 フリーオの販売業者に毎日新聞がメールで質問を送ったところ、英文のメールで回答があった。「一体どんな法律を破ったと言うのか」とし、「スタッフは2人。本業は別でパート(副業)として働いている」としている。さらに「日本の地デジ放送の規格普及を目指しており達成されつつある」と日本の放送行政を皮肉ったともとれる文言もあった。

 フリーオを店頭販売した東京・秋葉原の店長は「地デジを研究している顧客からの要望で試験販売した。他にも店頭販売していた店はあったようだ」と話している。

 国の審議会では、録画規制が事実上無意味となったため、莫大(ばくだい)なコストをかけたこの規制を疑問視する声すら上がっている。

 2011年7月の地デジ完全移行で、従来のアナログ受信テレビはそのままでは使えなくなる。地デジの録画規制は、「無料放送なのに番組録画に制限がかかるなど使い勝手が悪くなった」などと利用者から不満もある。

 また同システムを開発したB−CAS社が、視聴に必要なカードの認証を独占しているなどの問題も指摘されている。フリーオは録画規制を巡る複雑な背景につけ込む形で登場したといえる。

 総務省・情報通信作品振興課の話 国の検討会で、技術面と法令などの制度面での規制について審議中。現時点ですぐに法規制を行うという状態ではない。

 ◇B−CASシステムとは…

 日本の地上波デジタル放送にはスクランブル(映像のかく乱)が施されており、これを解除して番組を見るには、放送・家電業界が設立した「B−CAS社」(東京都)発行のB−CASカードが必要。地デジ対応テレビやDVDレコーダーを買えば付いており、放送受信機に挿入するとスクランブルが解除される。録画は当初、1回のみ可能だったが、制限が強すぎるとの批判などから、08年夏に10回までに拡大された。しかしフリーオは、米国に設置したサーバーから送られてくるスクランブル解除用のデータを利用者が取り入れることで、カードが不要になる。

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最終更新:6月29日17時9分

毎日新聞

 

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