【社会】邦人2技師の発想応用 台湾の海岸緑化に成功2009年6月14日 朝刊 【台北=栗田秀之】日本統治時代の台湾で水利事業に尽力した日本人2技師の技術を生かし台湾経済部(経済省)水利署と甘俊二台湾大名誉教授(71)が海岸の緑化に成功した。甘教授は「深刻な地球温暖化が進む中、80年前の発想が未来を開きそうだ」と、大きな期待を寄せている。 2人の技師は、金沢市出身で台南県に烏山頭ダムを建設した八田與一(よいち)氏(1886〜1942年)と、静岡県袋井市出身で、南部の屏東県に地下ダムを築いた鳥居信平(のぶへい)氏(1883〜1946年)。2人が1920〜30年代に手がけたダムは、広大な荒れ地を豊かな大地に変えた実績がある。 豊富な伏流水を農業用水の水源として貯水する地下ダムと、堤防の中核部にだけコンクリートを使い周りを不浸透性の高い粘土で固める烏山頭ダムは、当時としては最先端の工法で造られた。
沿岸部の緑化に取り組んでいる甘氏は、烏山頭ダム技術の応用で海岸内陸の水田から流れてくる伏流水をためれば緑化に役立つと判断。台湾北西部の海岸で昨年5月、粘土を主体とした高さ2メートルの“地下ダム”を砂浜に埋め込み植樹した。 水やりはしなかったが成長の早い樹木は、60センチほどだったのが1年後には2メートル近くに成長した。甘氏は「台湾をはぐくんだ日本人の知恵が、砂丘や砂漠の緑化など地球規模で広がるのも夢ではない」と話している。
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