優等生は辛い。
皆の前では良い顔をして成績も常に1位でなければならない。
身嗜みにも気を使う、スカートのプリーツが乱れたり寝癖がついてたりリボンの形が崩れたり、なんて絶対駄目だ。
言葉遣いだって気をつける、笑う時は下品に見えない様に手で口元を隠す。
私はキレイで上品なイメージをつけるのに必死だった。
頭がいいだけのブスにはなりたくなかったから、
肌は家では努力を積み重ねてキレイに保ってるし、
髪は、黒にストレートのセミロングで匂いにも気を使ってコロンを欠かさなかった。
天才と思われたかったから努力をしてる姿なんて見せなかった。
家では一生懸命に勉強したり、様々な事を試したりして皆からキレイと言われる様に努力した。
いつでもにっこりと笑った。
飾り尽くしてたら本当の自分が分からなくなった。
いくらキレイだね、って言われても嬉しいとは感じなかった。
成績が1位をキープし続けても嬉しいとは感じなかった。
あぁ良かった私はまだキレイと言われてる。
あぁ良かった私はまだ1位をキープできた。
と、自分のイメージが崩れ去る事だけを恐れた。
廊下の鏡の前で立ち止まった。
膝上10cmのスカートを整えて、黒の靴下の長さを左右確認した。
髪を耳にかけ直して
鏡の前で微笑んだ。
大丈夫だよ、灯 今日も私はいつもと変わらない
大丈夫だから、大丈夫…。
私は鏡の前で自分に言い聞かせた。
階段を降りながら、
私はさっきまで作っていた笑顔を壊して、少し眉間に皺を寄せて保健室のドアを開いた。
『あら。どうしたの?』
白い白衣を纏った先生はクーラーのきいた真夏のこの部屋で足にかけていたストールを机の上におき、私の元へ歩み寄って来た。
『ちょっと気分が悪いので、ここで休ませてもらえれば嬉しいんですけど…』
私が言いかけたところで先生は慌てて私の肩に手をまわし、高いところで結った髪を揺らしながら、私を窓際のベットまで案内した。
『大丈夫ー?滅多に濱崎さん保健室になんか来ないから心配だわ』
唇に薄く塗られた淡いピンクの口紅は先生にとても似合っていて自然と私の視界の中に入ってきた。
私は先生に指示された通りに、ベットに砂が入らない様に靴下を脱ぎ横になった。
窓からは中庭に植えられた花と色褪せたおとぎ話に出て来る様な彫刻やレンガでできた道やベンチが並べられていた。
私は冷蔵庫の静かなモーター音と、クーラーが風を送り出す音を聞きながら目を閉じた。
体が気怠い、
そう思い眠りについてたら、首筋に何かが触れているのに気付いた。
一瞬で鳥肌が全身を駆け巡り、私は上半身だけを勢いよく起こた。
目の前にいたのは、彫刻で作られた様な大きくて角張った白い手で手首から青白い血管が浮き出ているのが見えた。
『わっ!……』
驚きを隠せない様な顔で、
私が座るベットの横に座りながら廊下で擦れ違った事が何度かある見覚えのある先生は言った。
『びっくりしたあ…』
寝ている生徒の首筋に爪を立てていた先生が的はずれな事をつぶやいた。
私は何から言ったらいいか分からず、黙ったままだった。
廊下で擦れ違う時に白い白衣を身に着けていたから多分理科の先生だと思われる先生は赤毛の柔らかそうな髪を撫でながら私に尋ねた。
『で…濱崎だっけ?』
突然の質問に戸惑いながら私は答えた。
『あ…はいっ』
沈黙が続き、私は耐えられなくなり先生に尋ねた
『あの…何故、ここにいるんですか?』
先生は私の腰の後ろにある、枕の下から携帯を取り出した。
『これをとりにね。』
先生は、はにかんだ笑顔を見せて携帯を私の近くに持ってきて軽く振ってみせた。
なんだか『先生は私に気があるから、ここに来たんでしょ?』
みたいな質問をした様で聞いた事を後悔した。
ふと目線を下にやるとベットに手を置く先生の指が見えた。
爪が長くて指は気持ち悪いほどに青白かったけど、キレイだと感じだ。
『じゃあ、えと…用事が特にあったわけじゃないから。』
先生は窓の外を見ながらベットから立上がり、後ろ姿を私に向けて手を振り保健室を後にした。
突然の出来事に驚いたものの、私は何故だかそれ以来、先生の事が気になってしまい、先生と仲良くなりたい、話しをしてみたい、 私は深く何かを思う事もなくそう考えていた。
今度 理科準備室に行ってみようか、またはクラスの子が部活を休むなら私が先生に伝えにいく、という口実で話をしてみようか。
それに、何を話そうか、
先生が顧問を受け持つテニス部のこと、とか出身高とか、聞きたい事は色々あった。
私は先生の事を色々と考えて先生の事を知りたい、という思いで、先生の情報を求めて無意識のうちに先生の話や質問を繰り返していた。
朝、学校に来てから教室に入り自分の席に座った時、美織は私におはよう、と声をかけた、私もそれに返し、鞄を机の横にかけた。
私は昨日の先生の事が気になり美織に情報を貰おうと幾つか質問をしてみた。
『あのさあ、うちの学校の理科の先生で、赤毛で髪がふわってした先生って分かる?』
美織は少し考えているのか間を置いてからはきはきとした声で答えた。
『あー!はいはい!あの先生ねー確か、藤岡先生だっけ?まだ若い先生だよね?』
『何年生の担任か分かるかなあ?』
『あっ!うんとねー確か2年生かなー?うちらの1つ下の学年だったはず。』
美織は朝から元気で、私が聞く質問に全て答え、美織自身が知っている事を全て教えてくれた。
私は放課後に、理科準備室へ足を運んだ理科のノートと教科書を片手にゆっくりと歩いたつもりだったけれども、心なしか私の歩調は速まっていた。
準備室に近付くにつれ
心臓が脈を速く打ち続けた、私は自分の胸に手をあてて、速まる心臓の音に驚きつつ、2回 深く深呼吸をしてから、準備室のドアをノックした。だけどドアの向こうからは何の音もなくて、私はおそるおそるドアを開けると誰もいなく私は少しだけ残念な気持ちににた気持ちを抱いて家に帰った。
私はあまり親しくもなく、1度会っただけの単なる先生に自分自身がこんなにも興味を示すことに対してとても驚いていた。
私はまた美織に先生の話をした、美織は私が1度自然な形で先生と話したい、と言うと、先生が顧問を務めるテニス部の女の子が休むらしく、先生にその女の子が休むということを私が先生に伝える、という機会まで作ってくれた。
簡単に話すきっかけが作れたりし、物事がうまく進みすぎじゃないか、と思っていたけれど私は先生にセクハラまがいな事をされたわけだし、このくらい進みすぎてもいいか、と開き直った。
こんな開き直り方をした自分はよっぽど性格が悪いように思えたし、何故 そこまで先生に終着するのかが分からなかった。
先生がどこに居るのかを考えながら私は教室を出た、
職員室に向かってもおらず、理科準備室に行っても、テニス部の練習場に行ってもいなくて、半ば諦めてたときに、近くを通り掛かった先生が保健室に居る事を教えてくれた。
私は髪を耳にかけて、
身嗜みを整えながら保健室へ向かった。
保健室の冷たいクーラーの風に足の冷えを感じつつ、保健室の先生もいなかったので私は、ドアに近いベットから仕切りのカーテンを開けていき、先生の姿を探した。
3つ目の仕切りを開けた時に、昨日私が寝て居た窓際のベットで先生は体を窓の方に向けて寝て居た。
枕元に置いてある携帯はメールが来たことを示すランプが点滅していた。
起こすのも気の毒な気がしたので私はベットと窓の間の細い通路に入り仕切りのカーテンを閉めた。
細い通路には私の靴より1周り程大きなスリッパが置いてあった。
ふと先生の寝顔を見たけれど顔よりもどんどん下の首に目線は行ってしまった。
何で先生は私の首筋なんかに爪を立てていたんだろう、と考えていたけれど、考え出すと気分がモヤモヤしてきて嫌だったので私はすぐに窓の方に向き直り、中庭に視線を落とした。
『誰…濱崎?』
掠れた弱々しい声に私は気付き、後ろを向いた。
横になったまま、携帯で時間を確認した後 先生は起き上がりながら私に尋ねた。
『どうしたの?なに、なんか用事ー?』
眠たそうな顔で目をこすりながら、瞬きを繰り返す先生はベットから起き上がり私の横にきて窓から中庭を眺めていた。
『あの…テニス部の中原さんが休むみたいで先生に伝える様に頼まれたので伝えにきました。』
『あーはいはい、分かったー』
私はもうこれで先生に伝える用事も何も無くなってしまった。
私は何か話さないといけない、と焦り言葉を発した。
『先生って下の名前何っていうんですか?』
『あー?名前ー?あー…優理』
『優しい理科で優理ね。』
私が押し黙っていると先生は気にしたのか言葉を続けた
『親がさー生まれてくるのは女の子だと思ってたらしくて、こんな名前なんだよねー』
私は先生の方に向き直り必死に言葉を探して私を覚えてもらおうと唐突に思った。
『あ!私は濱崎灯です!』
先生は軽く口を開けて笑った
『知ってるよ、学年で1番頭がいいし優等生で先生達からも評判いいもん。』
私は答えに戸惑い何も言えずにいると先生は慌てた様に中庭から目線を変えて私と向き合った。
『や!ごめん…そーゆーつもりで言ったんじゃないから…』
先生は焦りながら口に手を当てて、罰の悪そうな顔て俯いたままだった。
『いや!大丈夫ですよ、気にしてませんから』
私は他の先生に対して笑う様に藤岡先生にも同じ様に笑いかけた。
私は保健室で先生と少しだけ話をしてから逃げる様に学校を後にして、シャツが背中に汗で張り付く気持ち悪さを抱きながらクーラーのきいた電車に乗った
下を向きながら、
目を閉じて
今日の先生との会話を
思い出そうと睡魔に襲われる思考回路を動かした。
話した内容を私は何故か覚えておこうと必死になっていた。
明日は理科の問題で分からないところがある…という理由で先生のところへ行こう。
等と私は様々な先生に会う方法を考えていた、私にあんな行為をした先生の事が私はもうこんなに気になっていた。
放課後が待ち遠しく、私はいつもよりスカート丈を短くして、唇にはグロスを塗り、
先生が居るかさえも
分からない理科準備室の前で胸に教科書とノートを抱き心臓を強く鳴らしながら立った。
胸に手をあてると心臓からバクバクと音がしたような気がした
私は唾を飲み込み
体育祭の短距離走のスタートラインに立つときのような緊張感を抱きつつ、準備室のドアを軽く叩いた。
軽い音が静かな廊下に響いた。
10秒程して、先生はいないんじゃないか、と思い帰ろうとしたとき、ドアがゆっくりと開けられた。
お願いします、藤岡先生でありますように と私は祈りながら開けられたドアの向こうをみた
開けられたドアの向こうから飛び込んできたのは、白い白衣に掌には薄いゴム手袋をして、肩と顔で携帯電話を挟みながら電話をしていた私の望んだ先生の姿だった。
先生は私の顔を見たあと、胸元の教科書に目線を移し私がここに来た理由を悟り、準備室の中に手招きをした、黄色い液体のついたゴム手袋を器用に外しながら
先生は電話の相手と喋りながら、両方の手袋を外し、水道で手を洗った。
そのあとに、手に携帯を持ち替えて、電話口の相手に応答を繰り返しながら、私を手前の机に連れて行き、椅子に座るように命じた。
もちろん電話をしていたから私に口を使い喋りかけたのではなく、手で椅子をひき、身振り手振りで伝えて私がそれを解読しただけなのだけど
私は椅子に座り胸元で抱えていた教科書を机の上に置き、机の上を軽く眺めながら先生の電話の内容を聞いていた。
優しく口調で喋りかけ、たまに笑ったりする先生を見て居て、普通の人なんだなあ と思い電話口の相手が気になった。
まもなく電話は切られ、先生はシャーペンを胸ポケットから取り出した。
そして私の元に寄って来て私の座っている机の横に椅子を持ってきて座った。
『で、どーしたの?分からないところある?』
先生は私の顔を覗きこみながら尋ねた、
私は急いで教科書を手にとり付箋の張ってあるページを開いた。
『あの…ここが分かんなくて…』
先生は教科書を私の手から取り上げて、中身を読み上げながら、ノートに図を書いて説明した。
私は別にそこの問題が
分からなかった訳でもなかったから、問題を教えてる先生の伏せ目がちな目とか赤毛の柔らかそうな髪とか長くて骨格のがっしりとした首や肩ばかりを見ていた。
『分かったかな、今の説明で』
という先生の問い掛けにも私は明るく対応した。
『つか偉いね、聞きに来るの、他の生徒聞きに来ないのに。』
先生はシャーペンをカチカチとノックさせながら私に言った。
私は愛想笑いをして、話題を逸した
私はあの保健室で先生と初めてあったあの日から、
理科の授業を好きになった。
自分のクラスの担当の先生は違うものの、理科の授業がある日の放課後は準備室に行けば藤岡先生と少しだけでも話す事ができた。
そして私はまたいつものように週に3回の放課後の待ち遠しいあの場所へ足を運んだ。
私がドアを開くと
先生は私の姿を確認しなくても私が来たということを分かってくれるようになった。
先生はドアから見て部屋の真っ正面にある水道で手を洗い私に背を向けたまま 机に座る事を命じた。
そして白衣の裾で濡れた手を拭きながら、またいつものように、椅子を机の横に寄せて座り私の手から教科書を取り上げた。
『あんさー濱崎、』
あまり自分から私には話を降らない先生の問い掛けに
驚きと言葉に少しの期待を抱き私は顔をあげた。
『濱崎のクラスの担当の理科は鶴間先生だろ?なんで俺に聞きにくんの?』
私は先生の言葉に焦り、返す言葉を探した
少し間が空いてから私は取り繕うように言葉を返した
『鶴間先生に最初は聞こうかと思ったんですけど藤岡先生しか準備室にいなかったから…』
先生は私の目をいつものように遠くを見るような目で見ていた
私は目線を逸してしまい、下に俯き言葉を続けた
『藤岡先生に教えて貰ってるうちに先生の方が分かりやすくて…』
言ったあとで後悔した、
もっと相手の事を考えて
発言すればよかった、藤岡先生に今の言葉は失礼だったのかもしれない。
先生は少しの間、教科書を見て私の目に目線をずらした
『…迷惑でしたか?』
その場の沈黙に絶え切れず私は口を開いた。
先生は吹き出すかの様に笑い、教科書を閉じた。
『もう遅い時間帯だから送るよ。』
椅子から立上がり白衣を脱ぎ、クシャクシャにしたまま黒い鞄に白衣を詰め込み、ポケットから車の鍵を取り出し先生は私の背中を扉の方まで軽く押した。
『鞄を取ったら裏門で待ってて』
先生は準備室のドアを閉めて鍵をかけながら言い、じゃあ裏門で、と私に言い手を軽く振った。
私は先生と別れてから廊下を駆け足で通り抜け教室についた。
鞄に教科書を詰め込みながら、私が先生に勉強を教えてもらう理由を言ったあとに先生が笑った意味をずっと考えていた。
見え透いた嘘がばれ、面白かったのだろうか。
そうだとしたら恥ずかしい、今更取り繕っても意味はないのだろうか。
私は必死に思考回路を動かした、けれど全てはマイナスに暗い方にしか考える事はできなかった。
私は靴箱に靴を取りに行ったあと、いつものペースより早い歩調で歩き裏門に向かった。
裏門にはまだ車も先生も来てない様に見えたけど私が裏門の門を出て車がまだ来ていないかを確認したときに、先生が乗った車はやってきた。
車は灰色、というか黒に銀といえばいいのか分からない色で、全体的に四角い形をしていて丸いランプみたいなものがついた車で外国の映画に出てきそうな洒落たレトロな感じのものだった。
先生は左側の運転席に乗りながら、助手席のドアに手を延ばしドアを開けた。
私はスカートを押さえながら屈みながら車に乗り込んだ。
『これって外国産の車ですか?』
私は車の中で挙動不審に当たりを見回しながら尋ねた。
『んーそうだよ』
『高かったですか?』
『いやー日本の奴とあんま値段変わんないねー』
『学校の敷地に置いてたら傷とかつけられませんか?』
私は先生の横顔を眺めながら尋ねた
信号待ちで止まったところで先生は笑いながら
『妙な事を聞くね』
と私に言い、煙草を手に取った。
『吸ってもいい?』
『あ!はい、大丈夫です』
私がそう言うと先生は窓を半分程あけ、煙を外に出しながら煙草を吸った。
煙草を持っている先生の指がとてもキレイに見えた。
私は家に行く道を先生に説明しながら、どうでもいいような事を先生に聞いてみたり、新しくできた店のことや、車で通り過ぎて行くときに見えた町並みや風景の事を話した。
先生はそうだね とか あぁ とか そうなの? とそっけない返事ばかりだったけど私は先生の煙草を吸う仕草とか、ハンドルをきる先生や私の話に耳を傾けてくれる先生を眺めるだけでとても居心地よかった。
『先生は誕生日いつなんですか?』
私は鞄についた黒のリボンの形を整えながら先生に尋ねた。
『来月の9日』
『あ!じゃあもうすぐですね』
『その頃にはもう暑さもなくなってればいいんだけどね』
『9月の初旬だったら微妙ですよね…』
『去年はそこまで暑くなかったんだけど、俺暑いのやなんだよね』
『甘い物とか好きだったりします?』
『何くれんの?』
私ははにかみながら会話を繋げた
『作るの上手なんですよ?』
『じゃあ甘いの大好きだから頼むわ』
先生は笑いながら私にそう言ってハンドルをきった
朝 目覚めたときに眩しいなんて感じなくて私は、藤岡先生の事ばかりを考えていた。
車のシートの感触とか匂いとかクーラーの冷たさとか先生の声とか私しか知らないような気がして愛しく感じた。
理科の授業が今日はなく準備室に行く事ができなかったので鞄を手に友達の名前を呼び教室を出たとき 昨日と変わらない先生の声がノイズ混じりに聞こえた。
『3年 濱崎灯さん 理科準備室まで来て下さい 繰り返します 』
私は放送を聞き終わる前に友達の胸に鞄を押しつけ
そこで待ってて!と
乱暴に言い捨て廊下を走った。
準備室の近くになったら歩調を遅くし呼吸を整えた。
準備室の前でいつものようにノックしてドアを開いた。
パイプ椅子に座り足を組み外を眺める先生の姿が目に入った。
『あんさー濱崎』
先に口を開いたのは先生だった。
私は言葉を聞くだけのことに緊張を一生懸命に隠した。
私は期待していた
先生の言葉は私にとって嬉しい事でありますように
と高望みな考えを抱いていた。
『昨日 車で帰ったのバレるのやだから黙ってて』
先生はポケットから煙草を取り出し
『放送使ってまで呼び出してごめんな、そんだけだからもう濱崎も帰れ』
と言い捨て、私の背中を押しながら廊下に押し出した。
追い出されてしまって、廊下に私が1人佇んで夕日に浮かぶ私の影が廊下に長く写し出された、鼻の奥が熱くなり、痛みを感じた。
涙が出た、泣いてはいけないって思ってるのに
私は嗚咽を漏らした、先生にばれないようにしなきゃ、と思っても動く事ができなかった
私が立ったま動けずに泣いていると教室の廊下で待たされていたはずの美織が私の鞄を抱えながら、驚きを隠せない様子で私の元へ走ってきた。
『どうしたの!?』
美織は私の手をひき、人通りの少ない靴箱の裏に連れていった
美織は私を段差に座らせ、私を下から見上げ顔を覗きこんだ。
『何かあった…?』
『何で泣いてるの?』
私は美織が困っているのが分かっていたし、泣いてはいけないと分かっていたけれど泣き続けた。
掌は涙で濡れスカートにも涙のあとの丸い染みが出来ては消えた。
涙も止り啜りすぎた鼻の下も痛み始めた頃に私は美織にごめんね と一言謝った。
美織は黙って私の手をとり近くの喫茶店に入った。
喫茶店に入り
私と美織はお互い黙り込みウエイトレスの女性がきたらメニューを注文した。
いつも来て居た喫茶店なのに雰囲気が変わった様に思えた。
『目冷やさないと腫れちゃうよ?』
美織は私によく冷やされたおしぼりを差し出しながら言った。
冷たい感触が瞼に触れ汗をかいた体はクーラーで冷えきって居た。
頼んだケーキとアイスティーが届いたとき私はやっと口を開いた。
『ごめんね、待たせてて』
私は目を伏せた
完璧なイメージを作っていたのに全て崩れた事に対しての思いや
勝手に期待して泣き崩れた自分の恥ずかしさ
真っ正面から向き合う事なんかできなかった。
私は美織に全てを告げた
保健室で先生に初めてあったこと、理科の授業がある日は放課後にいつも先生に会いにいった事、いつしか好きになってたこと、車で送って貰った事に舞い上がり期待し、期待が外れ冷たく突き放された事や全てを話した。
美織は黙って私の話を聞いてくれて私が全てを話し終わった後に1つだけ尋ねた。
『初めて会ったのは保健室なんだよね?』
『うん』
『灯は寝てたんでしょ?』
『うん…』
『普通、保健室のベットには仕切りのカーテンがついてるよね?』
『うん…なんで?』
『先生は何で灯のベットのところにいたの?おかしくない?』
『…』
『生徒の寝てるのを普通見に来る?ましてや首に爪立てたりする?』
『私もおかしいと思ってたんだけどなかなか聞けなくて…』
美織はテーブルから身を乗り出して私に質問攻めをし始めた私は戸惑い上手く返事を返す事ができなかった
『やっぱり先生も何かしろ気があったんじゃないかなあ?あの先生無愛想なのに勉強教えてくれたり車で送るのはやっぱり灯に気があるんだと思うよ』
美織は強い口調でアイスティーのストローを噛みながら言った。
期待しないようにしよう
そう思いながら私は喫茶店で美織と別れて家に帰った
私は今 思えば
あのときから先生に惹かれていたんだ
角張った手で私の首を触り外を眺めて平然とした態度を装う先生に意味もなく引き寄せられていて
白衣を着ている先生を初めて見たときはときめくような感じを抱いて
先生を思い出すだけで
顔がにやけて
先生の前では完璧な自分を演じなかった
先生のペンを持つその手に触りたい 握りしめたい って
いつも願っていて
期待するだけ期待して
舞い上がるだけ舞い上がって
先生が私を好きになってる事を私はずっと期待してたんだ
好きで好きでしょうがない ってこんな気持ちなんだ と初めて知った様な気がした
私はベットの中で先生の事ばかり考えていた
先生の事を考えて下着の中に手をいれて股の間に触れた、暖かな体温を指で感じながら中指を押し込んだ
濡れた私の中は指をすんなりと受け入れた、私は指を上下にゆっくりと動かした
先生に触れたい 会いたい 抱き締めて欲しい
そう願いながら先生の指が私の中を弄るところを想像した
窒が痙攣した 私は身震いして中から指を抜き出した
糸をひく指をタオルで拭って私は瞼を閉じて眠りについた
朝起きて 今日の授業に理科がある事を確認して学校へ向かった。
いつもより早く授業が終わった気がした、今日は教科書も何も持たずに準備室に向かった。
ただ純粋に嘘もつかずに先生と話したかったから
準備室のドアをノックすると先生はいつものように私を中に入れてくれた。
先生を思いながら自慰したあとだから先生に会うのが恥ずかしい気もした。
『あれ、どーしたの?教科書は?』
先生が尋ね私は用意していた台詞を答えようとしたら先生の携帯電話がなった。
黒電話の軽快な音が静かな部屋に響いた。
『ごめん、ちょっと待ってて』
先生はそう言い電話にでた。
いつも先生はこの時間帯に電話している、その事に私は気付き電話の相手が気になった。
先生は準備室の奥のロッカーの前で電話をしていた。
私に聞かれたくないからなのかはよく分からなかったけど20分程しても先生が電話を切る様子がないので私はロッカーの近くまで歩み寄ったら先生は電話を切りポケットに乱暴に携帯をいれた。
舌打ちをして下を見て居た先生は顔をあげ私がいることに気付いた。
『待たせて、ごめんね』
先生は立場の悪そうな顔をし私の頭に手をおき、髪を撫でた。
『なにかもめてるみたいでしたけど、どうかしたんですか?』
私は先生の背中を見つめて問い掛けた。
ロッカーの横に置かれた冷蔵庫からの機械音が準備室に静かに響いていた。
『浮気してるんじゃないか、って俺の事を疑って毎日この夕方あたりになると電話かけてくるんだよねー』
私は耳を疑った。
浮気…? じゃあ先生には彼女が居るって事?
聞きたい事が山程脳裏を駆け巡った。
突然の発言に私の思考回路はついていくことができなかった。
『こんな面倒な女だとは思わなかったよ』
先生は呆れた様に言い、白衣から煙草を取り出した。
『じゃあいつも電話してる相手は彼女ですか?』
私は声を震わせながら言った、泣き出してしまいそうだった。
今すぐ この部屋から出て1人で考えたかった。
でもそれと同時に私は先生に聞きたい事がいっぱいあって、先生を眺めて居たくて、好きって気持ちを今すぐ伝えたかった
5(4/14)
先生を思うと切ないんです
先生の事ばかり考えて居るんです
先生の一挙一動に怯えているんです
と 全てを言ったら楽になれるような気がした
先生は煙草を1本取り出し、薬品だらけの準備室で煙草に火をつけた。
そして私の問いに答えをだした。
聞かなければよかったと
私は聞いたあとでひどく後悔した。
先生は白衣のポケットに手を差し込みながら言った
『彼女じゃなくて妻だよ。』
そして 人差し指で汚いものを持つ様に銀の指輪を取り出した。
『結婚してよかった、なんて最近は思わないけどね』
『結婚なんてお互いを繋ぎとめる手段にしかすぎないよ』
先生は遠くを見ながら呟いた
先生はいつも 見てる目線の先は私でもなく風景でもなく1人の女性を見ていたの?
頭が痛み始めた
泣きそうになるのを必死で堪えた
いつも私は先生に対して
少しの期待を抱き接していた
いつか私を見てくれるかもしれない と
だけどその期待も壊れた
先生はもう 誰かの物なんだ
私の物には一生ならないんだ
嫌で 嫌で 仕方なかった
まだ 出会ってから 1ヶ月も経たないのに
私はこんなにも惹かれていた
一挙一動に怯えて こんなにも先生の大切な人の存在を知ってしまうだけで取り乱してしまう
好きで 好きで 仕方ない
誰かの物だなんて耐えられない
私は 涙を堪える事ができなかった
私は泣いた
先生が不審そうに驚きながら見ていても涙を隠すことはできなかった
私は先生の肩を勢いよく掴んだ
泣きながら 先生をロッカーに押しつけた、ロッカーと先生が当たる音が響いた
『何!?濱崎どうしたの!?』
驚きを隠せない様子で先生は私を引き離そうとした
私は先生の口に私の口を強く重なりあわせた
先生の声が準備室に響いた
私は泣いた顔を隠す余裕もないほどに取り乱していた
『先生が好きで好きでしょうがないんです』
私は泣きながら先生の胸に顔をうずめた
先生は黙ったままでロッカーにもたれかかったままだった
『好きです』
『好きなんです、大好きなんです』
私は泣きながら言い続けた
何度言ったって状況が変わらないのは分かってるはずなのに
先生が私を好きになってくれればいい
それだけを考えて
私は泣いた
涙を先生の白衣で拭った
泣いて
喚いて
抱き付いて
口付けて
今更 取り繕う事ができないのは分かってたから
私は後戻りできない分
私は全てをぶつけた
『先生に奥さんが居ても私は先生が大好きなんです』
『愛してます 本当に私は先生が大好きなんです』
静かで
機械音が響く 冷たく湿った準備室
私の啜り泣く泣き声
思いをぶちける幼稚な私
先生に抱き付いて
胸元に顔をうずめて
背中に手を回して
白衣を強く握った
先生は黙ったままで
何も言ってくれなかった
思いを打ち明けたところで
私には何の変化もないはずなのに
打ち明けたら楽になる
そう予想していたけれど
喚き散らした後の先生の反応が怖くて
言わなければよかった
って何度も思った
好き って先生に言う度に
何で言ってるんだろう
って思って頭が痛かった
何も言ってくれない先生が嫌で
怖くて
辛くて
それでも 誰かの物という
先生が嫌だった
もう駄目だ
どうせ私が先生に何かをまだ言い続けたところで状況は変わらないんだ
私は先生から体を離し謝ってもう終わりにしよう、そう思い体を離した、
『先生すいません、こんな事言って困らせるつもりじゃ』
言いかけたところで
先生は私を引き寄せて
抱き締めた
思考回路がついていかず
私は戸惑い体を引き離そうと先生の胸に手をついた
先生は小さな声で私の耳元で 囁くように言った
『俺は濱崎の事嫌いじゃないよ』
私が顔をあげようとしたら先生は私の手を引き薬品実験室の小さな部屋に連れ込み部屋の鍵をかけた
薬品実験室の部屋の中は
薄暗くて、机と水道だけの簡易な作りだった。
部屋に鍵をかけ先生は私にキスをした、私も応えるように先生の髪をクシャクシャに触り撫でながら貪る様にキスをした。
何度も唇を重なり合わせて
何度も目を合わせて
何度も先生の髪や肌や唇の感触を確かめた
キスをしながら先生は私のワイシャツのボタンを器用に外し胸元に手をいれた
私は先生の首に背伸びして手を回して唇を重ねた
舌が重なりあう音や唾液が糸を引く音と私の漏らす声が小さな部屋には響いた
先生は私を机に座らせた
胸元にキスされて私は声を漏らした下着を先生が器用に外して、先生が私に触れる度 鳥肌が立ってくすぐったいけれど心地よい そんな気分が体中を駆け巡った
私は時折 好き って言い先生は返事を返す様に肌を噛んだ
赤い跡が残り私はそれが愛しくて跡が付く度 先生を抱き締めた
『すき』
『すき』
『すき』
何度もそう言った
先生が私の中に入ってきたときも私は高い声をあげながら先生を抱き締めてすき って言った
バレるかもしれない という思いを抱きセックスをした
何度も先生に好き って言った
先生は黙って 私とは目も合わさずに私を抱いた
何度も鳥肌が立った
私達は小さな 個室で
抱き合った
お互いの息の音とか
声が外に聞こえないように
声を潜めた
好き って私は何度もいった
先生は私に答えてくれる事はなかった
小さな個室でイった後
先生は私から体を離した
背中を向けて シャツの乱れを整えていた
私は太股についた 精液を近くにあったティッシュで拭った
2人離れて冷静になって考えてみたら先生が私を抱いた意味が分からなかった
『慣れてんの?こーゆーの』
先生はベルトを閉めながら
久しぶりに口を開いた
『別に…そーゆう訳じゃないです…他に比べれば経験少ない方ですよ』
私は口を尖らせて言った
乱れたシャツとスカートを直しながら先生を見た
体を離した といっても小さな個室の中だから
お互いの距離はまだ近くて
こんな近さだからこそ
先生の考えている事が
分かればいいのに…
と強く思った
『先生は慣れてるんですか?』
私は床に落ちたリボンを拾いながら聞いた
『どうだろうね』
曖昧な返事をしながら先生は煙草の火を水道のタイルに押しつけて消した
お互い黙ったまま着衣の乱れを直した、私はずっと先生が私を抱いた 事について考えた
私のことを好きだから抱いたの?
私が先生のことを好き って言ったから都合がいい女だと思って抱いたの?
考えているうちに枯れたはずの涙がでてきた
今日は泣いてばかりで頭も目も痛い
『先生は私の事なんで抱いたんですか?』
私は泣いて腫れた目元を隠すこともせず泣きながら先生を見上げて尋ねた
先生は私を見下ろして
お互い目を合わせたまま
何秒間か黙り合いただ
見つめ合った
瞳がそらせなかった
私の頬を伝って落ちた涙は首筋を流れていった
先生が先に瞳をそらして
吹き出す様に笑った
『そんな泣くなよ』
先生は大きな声で笑った
笑う意味が分からず
私は笑った意味を必死に考えた
『俺は好きでもない奴を送ってあげたり放課後の忙しい時間帯に、担当のクラスでもない奴にわざわざ勉強教えてあげたりしないよ』
『抱いたりもしないし』
先生はそう言って私を抱き締めた
先生の高い身長に不釣り合いな私は胸元に顔をうずめて声をあげて泣いた
先生はその間 ずっと笑って私をなだめた
私は最高の幸せに浸っているような気がした
泣いてるはずなのに自然と顔がにやついた
『俺みたいなのと付き合って本当にいいの?』
先生は運動席でハンドルを切りながらいった
『両思いっていうだけで嬉しいのにそんな先生と付き合って後悔したりしません!』
私は助手席で外を眺めながら言った
車のシート匂いを感じるように私は先生の方に向き直りシートに顔をもたれた
先生には奥さんがいるから
世間では不倫といわれてしまうけれど今が嬉しければ それでいい 私はそう思い 目をつむった
最高の幸せと居場所と先生の隣を全て手にいれた
まだ眠いはずなのに朝の日差しが心地よく感じたり
勉強にも思う様に集中できた
何よりも先生に会える放課後が嬉しかった
準備室のドアを開けたら先生は変わらない笑顔のままで待っててくれた
それがとても嬉しくて
幸せで
手に入らない物だという事は分かってたから とても怖かった
夜 ベランダで温かなミルクティーを舐める様に飲みながら私は夜風にあたった
先生が誰かの人であっても
その人が悲しむ事を知っていても先生は私と付き合ってくれた
先生は奥さんの悲しむ姿よりも私と共にいることを選んでくれた
前向きに私は考えた
じゃないと自分が押しつぶれそうだったから
世間で悪く思われる付き合いでも私が付き合う事を悪く思ってはいけない、先生の私に対する思いを否定することになってしまうから。
不安になったりしても先生に失礼だから私はいつも前向きに生きよう、そうじゃないとこの関係は成り立たない
放課後はいつも準備室で私は勉強をしたり友達に手紙を書いたり本を読んだりして時間を潰して7時になるまで先生を待った
それから先生の車で送って貰い帰り際にはキスをした
今が一番幸せだと常に感じていた
先生の誕生日の1日前の日 放課後、私は準備室には行かず書店に寄って お菓子作りの本のコーナーで本を見た
様々な本の中をめくって見て気に入ったものを2冊手にとったあとファッション雑誌と漫画のコーナーへ行きレジで会計を済ませた
外の空気は乾き
もう秋が来ることを知らせているかの様で肌が少し肌寒く目が乾き痛かった
私は近くの喫茶店に入り
温かいミルクティーとガトーショコラを頼み食べながら先生に何をあげるかを先ほど買った本の中から選んだ
見ているだけでも
色とりどりのお菓子が
1つの芸術的作品の様でとてもキレイで 先ほどケーキを食べたばかりなのに食欲をそそらせた。
私は結局 本の中からオートミールクッキーとザッハトルテを選び今から材料を買う事にし家の近くのスーパーに足を運んだ後、家に帰った
メレンゲの白い泡を眺めてる間も
オーブンから立ち込める甘い匂いを嗅ぐ間も
考えるのは先生との甘い関係だけだった
でも私と先生の恋愛はチョコレートの様で
甘くおいしいけれど
苦くて
幸せを感じる事はできるけれど
先が見えずに不安で
私はチョコレートの味も飲み込んだ後も分かっているから
今を楽しむ事しかできなかった
その日はザッハトルテを切り分けてオートミールクッキーと一緒にラッピングしたあとお風呂に長い時間入ったあと夕食を食べることなく早く眠りについた
先生とセックスをしたあの日から私は先生を思い体を火照らし自慰することもなくなった
次の日もまた裏門で私は先生の車に乗った。
『お誕生日おめでとうございます、先生』
私は昨日 ラッピングしたお菓子を鞄から取り出し信号待ちのところで先生に見せた
『わ!は?何!まじ作ったの?まじ嬉しいんだけどー…』
先生は驚きを全面に表し、口を手で押さえながら照れた様に笑った
『今食べていい?』
誕生日だからといって、家で手作りのお菓子を先生が食べていたら奥さんに何か言われるだろうし
私はいつもより長い時間
先生と一緒に居れるのが
嬉しかったので
先生の言葉にうなずいた。
そのあといつもと違う道を走り海沿いに車を止めた
『どーしよう?降りる?』
先生は車の窓をあけ海を眺めた
私は車の中に居たい といいお菓子の包みをあけた。
先生は私が包みをあけるまでに先ほど買った自販機の缶の紅茶を私に手渡した
私の作ったお菓子に先生は驚きながら温かな缶に入った紅茶を飲み私に様々な話をしてくれた
時間よ止まれ 本気でそう思っている自分がとても恥ずかしくて 可愛らしく思えた
先生はお菓子を食べ終えたあと私を抱き寄せてキスをした
私は先生に引き寄せられる様に運転席に身を移し
ワイシャツのボタンをあけて胸を露わにし先生の上で腰を振って車の中でセックスをした
車の中で響く私の声が恥ずかしかったので、声を出さない様に私は口を手で押さえた
だけど私の手でふさがれた
唇も先生の唇でこじあけられ、舌を何度も絡ませ合いキスをした
虚ろな目で声を押さえて先生をみた
お互い酸素を求める様に唇を強く押し当てた
『好き』私はただ短く1事だけそう言って先生の上で果てた
海から私の家へ向かう車の中で、私はセックスに何の意味があるのかを考えた
でもきっと単に
触りたい 感じたい 求めたい って簡単な意思で濡れたり起ったりするんだろうな
深く考えたら私は意味も理由も原因も分からなくて、考えてるうちに訳が分からなくなったので、考えるのをやめた。
『今度の日曜日にどこか行こうか』
信号が赤に変わり車を横断歩道の前で止めたときに先生は言った
私は内心 嬉しくて 行きたい! と即答したかったけど あえて即答しなかった
『でも…ばれたりするかもしれないし』
『大丈夫だよ、適当に言い訳すれば』
『そうですね』
私は先生に背を向けて 窓の外を見るフリをして答えた
にやけた顔を先生に見られないよいに
約束の日曜日は早く来て
1日前の土曜日は宿題や予習に追われ、肌の手入れに手を入れる暇もなく、日曜日は遅く約束の時間の4時間前の10時に起きた
起きてから風呂場に向かい丁寧に体を洗い ゆっくりと普段より温度の低い温かな浴槽につかった
ドライヤーで髪を乾かし、アイロンで髪をストレートに延ばし、前髪を分けて小さな蝶のコンコルドで止めた。
肌寒いであろう事も考え、白のタートルネックにパステルピンクのワンピースにジャケットを合わせた。
鏡を見ながら顔をにやつかせた
会ってセックスするだけの不純な関係から抜け出して純粋な恋愛ができてる様で嬉しかった
待ち合わせの時間より早く家を出た、母に駅まで送って貰った。
『灯は今日誰と遊ぶの?』
母は先生とは違う手つきでハンドルを回した
『美織と、市内の方まで行ってくるの』
『楽しんできてね、事故にだけは合わないようにね』
そう言って微笑み車を降りた私の手にお金を渡し母は駅から去っていった
駅で時間通りに電車に乗り目的のビルについた。
休日だからか、人が多く
皆が急ぎ足で歩いている様に思えた。
私は待ち合わせのビルの入口で待った、ヒールの高いブーツを片方だけ壁に当てて、母から貰ったお金も合わせ財布の中身を確認した。
待ち合わせの時間より10分程早いのに先生は私の元に来た、黒い帽子を深く被り黒のジャケットに色褪せたジーパンを履き、人より少し長い手足の先生を私は遠くから見ただけで一目で分かった
私の元に歩いてくるとき
先生は薄く色の入ったサングラスを少しだけ持ち上げて笑って手を控え目に振った。
『来るの早かったね、待たせた?』
『少し待ったかな?』
私は携帯の画面で時間を確認しながら答えた
『ごめんね、何か一つ言う事聞いてあげるから』
先生は笑いながら
顔の前で手を合わせ謝った
そして先生はさりげなく私の手をとり指を絡ませ手を繋いだ、私は先生の一挙一動に胸が弾み嬉しかった
嬉しい反面
いつも先生が奥さんに
こんな事をしていると
考えたら切なくなって
少しの間先生の顔を直視できなかった
私達は手を繋ぎ色んなお店に入って洋服をみたり色んな物を見た
私は赤いビーズのネックレスを買った
その後 映画を見て、お互い顔を寄せあった
全ての時間が愛しくてたまらなかった
大好き って気持ちは膨らむ一方で胸が弾んだ
『お腹すいたね、何か食べようか?』
先生がそう言い 適当なお店に入った
『嫌いなものとかある?』
先生はメニュー表をとり私に手渡した
『生魚が苦手かな』
『分かった』
そう言って私が飲み物だけ
従業員の人に注文したあと
いくつかのメニューを先生は注文して小皿に取り分けてくれた
私がするべきだったかな?
と後悔しつつ食べた食べ物はどれもおいしかった
先生とはその店でいつもと変わらない会話をして
気がついたら夜の9時が回っていた
『そろそろ帰ろうか?』
『や!まだ大丈夫、親は今日家にいないし…』
私が言いかけてる途中で先生は席を立ち会計を済ませた
私は先生のあとを追う様に歩いた、先生と私はエレベーターでビルの駐車場まで行き、私はいつものように助手席に乗った
夜のネオンが反射し目が痛かった
空は星が光り
ビルの街灯が派手に夜空を装飾するようだった
車の窓を開けて、風があたり髪がなびいた
少し肌寒く私はジャケットのボタンを閉めた
信号待ちで先生は私の顔を引き寄せて
お互い目を開けたままキスをした恥ずかしくて私は何度も目線を逸した
信号が青になって唇を離しキスをやめたとき
とても幸せで先生が結婚してる という不安さえも私は忘れた
先生は奥さんがいても
私をこんなにも幸せにしてくれるし
学校で会う度に抱き合ったりキスしたりセックスするだけの体だけの関係だった昨日よりも、はるかそれ以上に私は満たされている
好きでたまらない
愛しくてたまらない
ってこのことをいうんだ
そう思って私は先生の
腕に手を絡ませ顔を寄せた
私は先生の腕に顔を寄せ変わり行く景色を眺めながら眠りについた
先生に起こされて手を引かれて車から外へ出た
まだ眠たくて 虚ろな目で先生の後ろを歩いた
階段を登るときも
先生に縋る様に抱き付く形で登って回りの状況を確認できなかった
意識もはっきりとしてきたときには先生が扉に鍵を差し込み私を部屋に連れ込んでいた。
ベットの上に私は座り、先生は私の目の前でジャケットを脱いでいた
私は状況が把握できなかった
私は車の中で眠っていて先生に起こされて、手を引かれ階段を登ってこの部屋にいる
でもここはどこ?
考えを必死になって巡らせているときに先生は私を抱き締めて首筋にキスをしながら器用にジャケットを脱がせた
『ちょ…先生…?』
私は先生の顔を見た
先生はサングラスも帽子も外していた
『するのやだ?』
先生はそう私に問い掛けた
私は黙って 首を横に振った
薄暗い照明に大きなベットにベットの角に置かれたゴムとティッシュ この部屋が何なのかは大体把握できた
私は不安で押しつぶされそうになった
体だけの昨日までの不安な関係は終わって幸せに近付いてると思っていたのに
やっと普通の恋人同士になれた と私は思っていたのに
セックスって何?
意味はあるの? 愛が深まるの?
私にはセックスしても先生を愛しく思えなかった
不安で押し潰されそうだっ
セックスをしたら純潔じゃなくなる と神話の中で言うほどなのに不純な関係を保つ私と先生までもがセックスをしたら 私が汚れていくような気がした
愛しく思ったのは私だけ?
私の体を先生は好きなの?
先生は私とセックスするためだけに付き合ってるの?
いつもなら感じるはずの愛撫にも私は感じず不安な考えを巡らせるだけだった
先生は私を抱くために付き合ってるの?
先生と生徒の立場のないデートをできて喜んでいたのは私だけなの?
聞きたい事ばかりで、
泣き出しそうだった
私を抱く貴方に合わせて
私は声をあげて演技をした
濡れない体に入ってくる
貴方の冷たい心と堅い体が痛くて心が張り裂けそうだった
好きだと思っているのは私だけなの?
これは愛のあるセックスなの?
泣き出しそうで
逃げ出したくて
先生の愛が信じられなくて
自分がいやで
私を愛して欲しかった
奥さんよりも
誰よりも
だからこそ
抱かれる事が辛かった
行為が終わって
先生の体が私の体から抜き出されたあと私はすぐに立ち上がって裸のまま、風呂場に向かった、行為のあとのお互いの会話がない事が嫌で
先生の好き だなんて言葉をまた疑った
私が風呂場のドアを開けたときに先生が煙草を取り出していて
やっぱり体目的なのではないかと痛感した
風呂場に入り
浴槽にお湯をためて、
その間にシャワーで髪を洗った
洗ってる間
顔をくしゃくしゃに歪めて泣いた
シャワーのお湯を髪にあてながら泣いた
私は床のタイルの上に座り込み、たまった浴槽のお湯に片手をいれて、八つ当たりするように浴槽のタイルを叩いた
先生が私を好きって言ってくれたのは嘘だったの?
奥さんの方が私より好きだから悲しませるような事をするの?
愛していてはくれないの?
普通の恋愛はできないの?
先生は風呂場から聞こえる浴槽のタイルを叩く音が聞こえただろうか
先生は今頃 何をしているんだろうか
先生は私が泣いているのに気付いているだろうか
先生は奥さんに今日 私と遊ぶ事を言ったのだろうか
先生は私の体目的で付き合っているのだろうか
先生は私を愛しているのだろうか
聞きたい事はいくつもあった
でも私は知っている
先生はいつも結婚指輪を持ち歩いてることを
その指輪にどんな思いがこめられているかも
私は風呂をあがったあと、髪を乾かし腫れた瞼を水で冷やした。
その後はすぐに車に乗って
先生は私を送り届けにいつもの路地を向かった
夜風に吹かれながら
私と先生の間には会話もなく私は先生に背を向けて窓の外を眺めていた
泣き出しそうな顔を見られないため
私はそれでも口を開いた
1人で悩んでいても 状況が変わらない事は分かっているから
泣き出しそうな震えた声を絞り出して
『先生、大好きです』
背を向けていたから、先生の表情は分からなかったけど
先生が黙ったまま煙草に火をつけたのは分かった
いつもと同じで先生は私が好き と言っても何も返してはくれない
今までは客観的に見れなくて気がつかなかったけど、先生は私のこの言葉が重かったのかもしれない
面倒だったのかもしれない
それでも言わなければいけない気がした
車はもう私の家の近くまで来ていた、先生は車を曲がり角で止めた
『いきなり、どうしたの?』
先生は背を向けていた私の肩をつかみ振り返らせた
私は泣き顔を掌で隠した
『なに!?は?なんで泣いてんの?濱崎?』
私は先生と向き合った瞬間から堪えきれなかった涙を全て流した
声を出さないように唇を押さえて涙を拭うハンカチを鞄から取り出した
その間も先生は私をただ呆然と眺めていた
『濱崎……?』
先生は不安げに私の顔を覗きこんだ
不安そうな顔をするくらいなら、私を抱かないで、好きっていって安心させて
私はこんなに先生が好きなのに
いつも私ばかり空回り
惨めになるくらい私は先生が好きなのに
どうして先生は私を好きでいてくれないの?
『先生が好きです』
『好きでたまらないんです』
私は泣きじゃくった顔できちんとした発音にもならない声で言った
『俺も濱崎の事は好きだよ』
先生は私を抱き寄せて言った
昨日までは嬉しくて温かな胸や先生の体温が冷たく鋭く私の胸を刺す
私は先生を突き飛ばす形で距離をとった
『私は先生が信じられないんです!』
声を張り詰めた
静かな車内でエンジン音だけが響き渡る
私は車から飛び出して、ブーツでコンクリートの歩道を走った
涙が頬を伝い落ちた
先生は車で私のあとを追い、窓から手を延ばし、私の手を掴んだ
『待ってよ!いきなりどうしたの?』
先生は困った様な顔を見せて強く掴んだ私の手を離した
『私は先生が本当に私の事を好きなのかが信じられないんです』
私は涙を拭い鼻を啜りながら言った
『俺はどうしたら信じてもらえる?』
先生はもう一度私の手を握った
今度は優しく包む様に
でも今の私にはそれすらもが痛くて悲しかった
私が怖いのは
崩れる事
恐れているのは
嫌われる事
分かっているからこそ
分かっているはずなのに
どうしても求めてしまう
『先生の結婚指輪下さい』
私は泣きじゃくった顔で先生の手を払いのけて手を差し出して言った
奥さんより私が好き という証が欲しかった
形にしないと不安だった
私ばかりが好きなんじゃないかって
いつか捨てられるんじゃないか って
だからこそ こんな事を言って困らせた
『まじで言ってんの?』
先生は静止したまま私に問い掛けた
『私に結婚指輪渡して愛してるって証にキスして下さい』
私は 幾つも無理を言った
どんなに先生に可愛いく見られる様に私は着飾っても、こんな酷く面倒臭い言葉を言って困らせる
先生は大きく溜め息をついて、面倒臭そうにポケットから指輪を取り出して私の手に載せ、握らせて私の唇にキスをした
いつもより簡単でただ
唇を重ね合わせるだけの簡単な愛のかけらもない口付けをしたあと、先生は車の中から手を延ばし私を突き飛ばした
私は地面に倒れ込んだ
先生はそんな私を見ても
心配そうな顔もせずに
アクセルを踏んで車を発進させた
静かな夜に残る 先生の車の冷たいエンジン音
私は地面に倒れ込んだまま
動く事ができなかった
先生が最後に見た
あの目が忘れられなくて
あの冷めたキスが怖くて
もう全てが終わりなんじゃないかと思って怖くなった
好きなのに
好きだよ って言ってくれたのに信じなくて求めすぎていたのは私の方だ
掌に握られた指輪が生暖かく、私は指輪の温度を感じる度に涙が溢れて
先生を愛しく感じて
先生を困らせてしまったことを後悔した
我が儘を言って
先生を怒らせてしまった事を後悔した
私の頬を涙が伝った
拭う暇もない程に私は先生の事ばかり考えた
コンクリートに座り込み私は先生がさっきまで乗りエンジンをかけていた車のあとに手で触れた
温かな温度を感じる様だった、さっきまで聞こえた静かな夜に鳴るエンジン音だけが私の脳裏にこびりついていた
ごめんなさい
何度謝っても
貴方は私のもとにはもう来てくれない 事は分かってたような気がした
体だけの関係でも繋がりたい だなんて思ってたのに
我が儘を言って断ち切ったのは私だった
私はおぼつかない足取りで家に帰った、掌に握られた私の体温が残る指輪を机の上におき、私は風呂場に向かい、来ていた服を全てゆっくりとした動作で脱ぎ捨て、洗濯機の中にいれた。
冷静に動くことはできたけど頭の中では私は何も考える事ができず、フィルターがかかったように霞んでいた。
髪や体や顔を丹念に洗い、浴槽の中に入り肩までお湯に入り体の力を抜いた
泣いて腫れた目が痛くて
鏡で見たら赤く充血していた
私と先生の恋愛は
我が儘を言ってはいけない
先を求めてはいけない
これだけは守って行こうと、決めたはずなのに
我が儘が加速して
困らせて怒らせた
そんな事をした自分に嫌気がして呆れてしまった
私は大きな溜め息をついてシャワーで水をだし風呂場のタイルに水をあてた
軽快な音が風呂場に響いた
私は目に腕をあてシャワーの音に紛れて声をあげて泣いた
あんなにも大好きで
何が何でも欲しかったあの人なのに私の手から手放してしまうなんて
重く感じる制服を私は纏い、『我が儘を言って困らせてごめんなさい』
と書き封筒の中に指輪をいれた、手紙を片手に家をでた。
先生に手渡しするのも会いたくないから嫌で、靴箱に入れて誰かに見られるのも避けたかったので放課後渡そうと決めて私は家をでた
放課後までの時間帯を私はいつも以上に長く感じながら時間を過ごした。
そして私はテニス部の人を呼び止めて先生に手紙を渡してもらう様に思ったけれど中身を見られてしまうかもしれない、と悩んだ。
手紙が送られて来たかの様に私は先生の住所と名前をかき違う架空の人物の名前と住所を書き先生の家のポストに入れる事を決めた。
先生の奥さんも送り先が男性の名前が書かれてる手紙なんか見ないだろう、という安心感を抱きながら私は先生の住所を調べて放課後 先生の家を探した 指輪と手紙の入った封筒 を片手 にもち。
乾いた空気を感じながら住所の書かれた紙を見ながら先生の家を捜した、溜め息を何度もつきながら
太陽の視線を受け
反射的に出すように
私の額からでた汗を
ハンカチで拭った
そして私は先生の名字がかかれた表札を見つけて、その表札のある家へ駆け寄ろうとし足を止めた
心臓が高鳴った、私は手紙を強く握り締めて、先生の家に一歩ずつ慎重に足を運んだ
目をこらして じっと家の塀の内側を見た
洋風な明るいベージュ色の2階建ての家の周りの花壇の色とりどりの花を手入れする女性の姿が見えた。
女性の姿が見えたときに、その女性が先生の何なのか、なぜ家の花壇の花を手入れしているのか、なんて考えなくても分かった。
めまいがして、倒れそうになった、片手に握る手紙の重さを感じ また私が先生を困らせたことを思い出して自己嫌悪した。
先生の奥さんは私の胸元まである黒のストレートの髪とは対象的に顎の辺りで短く揃えた髪を明るい茶色に染めて軽くカールをかけていた。
白の薄手のワンピースを着てスキニーのジーパンに赤いミュールを履いて頭には鍔の大きな帽子を被っていた。
子供らしいあどけなさが残る可愛いらしい格好で優しい目をして花を切って白く華奢な手で花を摘む先生の奥さんを見て私はみじめな気持ちになった。
やっぱり先生は私の体目当てなんだ 私には先生の奥さんに勝るものなんか一つもない
私は手紙を握り締めながら、唇を噛締めた
私は音をたてて家の中に居る奥さんに気付かれないように…とゆっくりと歩いて塀の外側にあるカントリー調の可愛いらしいポストに手紙を入れた、私は木で作られたポストの外側に塗ってある茶色いペンキを爪で削った
自然と涙がでてきた
私は少し はにかんだように笑ってポストの上に置いてある リボンをつけたうさぎを強く握った
私の手のひらでうさぎのリボンはとれ手足はもげて、体はひび割れた
片方の手でズボンを履いているうさぎを私は優しく取り上げて ポケットの中にいれた
私は ゆっくりと笑った
手のひらでぐちゃぐちゃになった リボンをつけていた うさぎを私は地面に叩き付け自分の革靴で踏みつぶした
木でできた うさぎの模型は簡単に粉々になった
2匹の男女を表す様なうさぎは見事に私の掌で離れ離れになり雌のうさぎは私の手のひらで崩れた
崩れたのではなく
崩したのだけれど
私は自分自身の先生に対する感情が悪い方向へ向かっている、というのが十分に分かっていた
先生と奥さんを表すうさぎの模型を壊したり
先生にキスをせがみ困らせてまで、愛を確かめ様としたり
こんな風な自分が嫌で
次からはこんな事をするのはやめよう と思っていたはずなのに、馬鹿みたいに同じ事をまた繰り返していた
私は家の自分の部屋のベッドに寝転び、泣きそうになりながらも涙を堪えて、ポストの上からもぎ取って来た 先生を表すうさぎをスカートのポケットから取り出して
うさぎの口元に唇を押し当てた
木でできた模型の人形は生身の人間の唇とは対照的に硬く、冷たかった、けれど私は先生とキスするときと同じぐらい胸を高鳴らしながら唇を重ね合わせた。
私は何度も唇を離したり押し当てたりを繰り返した、開くことのないうさぎの唇に舌を当てて、これが先生で私を受け止めるかの様に唇を開けて舌を絡み合わせてくれたらいいのに と願った。
だけど開くことのない うさぎの口からは 徐々に私の唾液が垂れて色は変わり、私の舌も木に押し当てたりしたせいでヒリヒリと痛んだ
私は涙を流しながら、ベッドで横になりながら、うさぎを持たない片方の手を自分の足の間に入れて下着の上から性器を撫でた、私の下着越しに性器や体や私の熱は先生を求めていた私は涙を頬から伝い流して、喘ぎながら嗚咽を漏らして鼻を啜った
そして時折 先生の名前を呼んだ
先生に見立てたうさぎに舌を押しつけキスをしながら
先生のことを考え自慰をし
先生の名前を泣きながら喘ぎながら呼ぶ
自分が前の様な冷静で落ち着いた自分じゃないことにはもう気付いていた
私の体は先生を求めて こんなにも崩れていきそう
だからお願い 先生、早く私に触れて、触るだけでいいから、声をかけてくれるだけでいい、愛してなんて言わないから
私は先生を求めて止まない
静かな部屋で私は先生の名前を何度も呼んだ
泣きながら 喘いで
私は先生を思う程 体が火照った、そして私は窒を痙攣させてイった
先生の名前を呼びながら
私はそのまま化粧も落とさず制服のまま眠りについた
起きたときは泣いて落ちた化粧が黒い涙の様に滴り落ち首筋には黒い線ができていた
私は風呂に入り、朝食をゆっくりと食べながら学校に行くまでを過ごして、母に車で送ってもらい学校へ向かった
学校の正門の近くの曲がり角で私は車から降ろしてもらい、母に手を振り歩きだした
風は強く肌寒く
私の素足は鳥肌が立ち
触ってみると何とも言えない感触で面白かったけど私が何度も触るうちに鳥肌は消えて行き次第にいつも通りの素肌に戻った
私は正門を見たところで人がいつも以上に混雑している事に気付いた
私は少し駆け足で人が混雑している原因を探ろうと正門の門に目をやった
混雑の原因は一目で先生達が定規やピンを持ちファイルに何かを書き込んでいる様子を見て服装検査をしている事が分かった
私は念の為 とスカートのホックを外しスカートを少しだけ下にずらした
髪にも問題は無いし化粧もばれない程度に薄くしてるし大丈夫だろう、と思い5列程になり並んでいる生徒の列に並んだ
先生達がチェックしてる間を眺めていると、ふと気付いた
自分の並んでいる列をチェックするのが藤崎先生だということに
私は後ろを振り向いた、後ろには人が多いし、左から3列目 右から3列目という丁度真ん中に並んでいる私は列から抜ける事はできないし、違う列に並び直す事はできなかった
私は焦り挙動不振に周りを見渡した、そして先生を見た
先生の目は私を見ていた
私は目を逸らすことができずに先生を見ていた
先生が先に目をそらし
私は後に続く様に目線を下に向けた
チェックを受ける番がどんどん近付いてきて、私は逃げ出したい衝動にかられた また泣いてしまいそうで不安で仕方なかった
私は下をうつむいてばかりで、自分が前から何番目なのかなんて考えたり見てる余裕も無いほど泣きたい衝動を必死になって押さえていた
するといきなり私は腕を捕まれた
最初は誰だか分からなかったけど、反射的に顔を見上げて私は驚きながらも苦しくて逃げ出したい としか考えられなかった
『なにボーッとしてんの』
先生はそう言って、私の顔を見つめた
私は緊張し、先生が私を見ている 事に何の意味があるのかを考えた
でもそんな自惚れた考えも的外れに先生はファイルに記入しながら言った
『水道で化粧落としてこいよ』
私はその先生の言葉でスイッチが入ったかの様に泣き出した
地面に置いていた鞄を手にとり歩いて早くどこかへ行こうとしたときに先生は私の手首を掴んだ
『お前っ!何泣いてんの?』
先生のその言葉や私が泣いている事に気付いていた周りにいた生徒は私を指差しヒソヒソて周りと耳打ちをしあった
私はその様子に苛つき、そして自惚れていた自分を惨めに思い、その思いを先生にぶつけ皆が私に注目するかの様にそして怒鳴りつけるかの様に言い放った
『中途半端に優しくしないで!私の事なんか嫌いなくせにっ!』
私は泣きながら走り校舎内に入っていった
途中で走るのをやめて不安定な足取りで向かったのは保健室だった
保健室独特の冷たく渇いた雰囲気に私は慰められるかの様に私は泣くのをやめ 先生のいない保健室で途方にくれながらも悩んだ末にいつものあの窓際のベッドに入った
私は本当に学習能力がないな、私は自分自身に呆れながらなんとなく携帯を開いたり閉じたりを繰り返した
皆はきっと私と先生が付き合ってる事を気付いたかもしれない、あんなに私は先生に触れられたり声をかけられただけで泣いて取り乱して怒鳴り散らしてしまった
また同じ事を繰り返して先生を困らせてしまった
あの後先生はどうしたんだろう
なんて色々考えていたら眠くなった、多分泣いた後だからかもしれない、私は思考を停止させ眠る事にした
私は先生への罪悪感で自分自身が落ちていく様だった。
紅茶に浸した角砂糖のように私の不安は染み渡り、こんなんな風になるなら私は先生を好きにならなければ良かった とまでも思った。
保健室に響く冷蔵庫のモーター音
クーラーから出る冷たく渇いた空気
独特の匂いを放つベッドのシーツ
全て巻込んで今すぐどうにかなりたかった
なんで人を好きになって
お互い愛しあうことは
こんなにも難しいんだろう
ただ一人の人を他の誰よりも好きになって、
特別に思うだけの行動がこんなにも私を悩ませるんだろう
顔にかかる鬱陶しい髪を
横に払いのけた、
苛立ちが私の中で吹き出て来て私はベッドにかかる白いシーツを強く掴み仰向けになった。
仰向けになり顔をまくらに埋め横にしたとき私の視界には一番会いたくないと思っていたはずの人物がいた。
『お前は一体どんだけ困らせれば気がすむわけ?』
息切れした声で途切れかけた声で先生は私に言ってポロシャツのボタンをもう一つあけてからベッドに腰掛けた
私は反射的に飛び起き、先生から距離を置く様な形で座った。
『この前はまじで悪かったと思ってるよ』
先生は私とは目を合わさずに髪をいじりながら困ったような顔で私に言った。
『お前から見れば俺盛りついてるだけだよな』
はにかんだような困った顔で笑う先生の顔が痛かった
『でも今日みたいなのはまじでやめよう?』
先生が真面目な顔で私を見たから私は生半可な返事をした。
私が先生に応答してから間をあけて私は先生に少しだけ近付いた
『わがままばっかり言ってごめんなさい』
先生は私が謝ると、私の頭を自分の胸に寄せて私の髪を撫でながら言った
『今日の事は朝早い時間帯で真面目な奴らばっかだったから、噂としてはそこまで流れないだろうけど今度からまじやめてね』
『うん…』
『この前の事はお前の気持ち考えてあげられなくてまじでごめんな』
『うん…私もごめんね』
私はそう言って先生の背中に手を伸ばして強く抱き締めた
恋は偉大だ
こんな一挙一動で私の心を期待させ喜ばせ落ち込ませる
私ははにかんで笑った
にやついた顔が先生に見られない様に顔を強く先生の胸に押し当てた
先生がそれに返すかの様に私を強く抱き締めた
先生との距離は縮まった
先生の事をもっと理解しようと私はいつも思った
先生の事を第1に考えて行動しようとも思った
先生に嫌われるのを恐れた
いつも先生の姿を目で追って
先生の目を怖がり行動した
恋をしてる自分に酔っているわけじゃなく、ただ純粋に先生のそばにいれる 今を喜び、噛み締める様に過ごす
先の見えない私にはそれで精一杯だった
先を見ない事にも夢中だったから
ただ私は先を怖がるだけだったから
先生を知った夏から
季節は秋に代わり
制服も夏服から
中間服へと変わった
私のつけていた香水も
ギュペシルクへ変わった
髪も伸びて胸元まで伸び
寒い朝の風から首もとを守るようだった
変わらないのは退屈な日常の基礎で
私は毎日 学校へバスか母の車で通い
勉強をうけ たまに保健室で休み
友達とたわいない会話を送る
家に帰り予習 復習にはげみテストでは上位をキープする
私の退屈な学生生活は3年間だけだけど
先生の生活はずっと続くんだ、いやでもサボれない 先生はきっとこの先 自分と奥さんだけのためではなくうまれた子供のためにも退屈な日々を送るんだろう
先生がその生活を退屈だと思うのかは分からないけど
先生が奥さんやそのうち産まれる子供のために働いてそのお金で誕生日にケーキを買って喜びあったりする雰囲気には私は入れないし
先生の妻になり
子供を産むなんて できない
先生が誰かのものである時点で私は先生の一番にはなれないし
先生の幸せを祈るなら
こんな先生の邪魔をしたり体の相手や先生の暇を潰してあげるような私の存在はいてはいけない
先生が不倫をした という時点で私はそれに関わり先生の今までの人生の汚点になっているのかもしれない
不倫がばれない っていう保証はないのは分かってる
私の香水の残り香や
私を車に乗せたところが見られたり
メールをもしかしたら見られるかもしれないし
色んなところでばれるという可能性は広がる
だけど それは私が香水をつけなかったり
車に乗らなかったり
メールを送らなかったり、
先生と私が彼女と彼氏の関係を断ち切ってセックスフレンドでもなくただの生徒と先生に戻ればいいだけの話 というのは分かっている
青空が対象的に私を見下ろす様に
私と先生の奥さんが対象的に先生を見つめているんだ
つまらない授業に嫌気がして早く授業が終われと願った、時計を見て終了のチャイムが鳴る五秒前からカウントをし始めたけど私の方が早くカウントが終わった二秒後にチャイムが鳴り授業と休み時間が切り替わった。
『灯ー食べよー』
美織が私の元に駆け寄る様に寄ってきたときに放送のノイズが鳴り響いた。
『三年濱崎灯さん、理科準備室まで来て下さい』
突然の放送に驚き私は美織と顔を見合わせた、だけど声の主を放送が流れた時で分かっていた私はさほど不安もなく、ハンカチだけを手に取り理科準備室へ向かった。
歩調は早いわけでもなく遅い訳でも無く、廊下をゆっくりと歩いた
準備室の前に来たらいつもはノックはしないのに今日はわざとノックをして、準備室のドアの向こうからスリッパと床の板が当たる音が大きくなるにつれ私は嬉しくなった
ドアが開いたら私の目の前には先生が居て、遅かったねと言って笑ってから私に背を向けて準備室の奥の方へ歩き出した。
準備室のいつもの机に私と先生は向かい合わせに座った
『昼メシは?』
『置いてきたけど、なんで?』
私は先生の質問の意味がある程度分かっていたけれど自分の自惚れだったら恥ずかしいから分からないふりをした
『一緒に食べようかと思ったんだけど、置いてきたなら俺の食べな』
先生はそう言って机の上に置いてあったパンやおにぎりを私の方に押し寄せた
『いや、私取りに行ってこようか?』
私は椅子から立ち上がろうと椅子を後ろにひいたけど先生の 時間がなくなるから という言葉を聞いてもまた座り直した
私は辺りを見回して他の先生がどうしていないのかを聞いてみた
『今日、お前んとこの時間割でほとんどが自習になってたっしょ?』
『うん』
『先生方のほとんどは今日職員研修なわけ、だから今日は出張』
『あ…そうなんだ』
そう言って私は準備室のドアを見た それでも念の為 鍵はかけてるし誰かきても棚や模型ばかりのこの部屋にはいくらでも隠れる場所はあった。
先生はパンを取り袋を破りパンをちぎりながら食べていて、その食べ方が凄く上品に見えたのと、奥さんは先生のためにお弁当ぐらい作ってくれないのだろうかと疑問に思って私が先生の奥さんだったら先生にお弁当なんていくらでも作ってあげられるのに と思った
お昼はあんまり会話はなく2人でパンやお弁当を食べた、それでも私は先生のお昼のご飯を貰っている身分なのだから、あまり食べる事はできず空腹が満たされた とは言い難かった。
私がパンを食べてる途中に授業の予鈴のチャイムが鳴った、チャイムの音を聞いて私と先生は顔を見合わせた。
『どうしよう、授業始まっちゃう』
私が椅子から立ち上がろうとしたら、また先生は私をなだめて座らせた。
『担任には俺から何とか言っとくからいいよ』
そう言って先生は食べたパンやおにぎりの袋をごみ箱に捨てて窓際に立った。
私も袋を捨てて先生の横に並んだ。
風も光もたいして強いわけじゃなく ただ少し肌寒く雲がゆっくりと動いてるだけの何の変哲もない風景を窓から眺めた。
『他の生徒にみられないかな?』
私は先生の方へ顔を傾けて聞いてみせたら先生は授業中に外にでてる奴はいないから大丈夫 と言って私の髪を撫でた。
外を眺める先生を隣りで眺めていると先生と目があった。
『何…?』
先生は笑いながら、私の肩に手を回して私の肩に自分の頭を乗せた。
私はそんな先生を強いほどに愛しく思って、柔らかな髪を撫でて、キスをした。
窓からさす暖な光に、ほこりが光るように舞って見えた。
先生が私を上目遣いで見て、私の頬に手を乗せて、唇を近付けた。
私はゆっくりと目を閉じて柔らかな唇の感触に心地よさを感じた。
この時間が幸せすぎて、私はこの幸せが怖かった。
幸せが崩れてしまうのも、終りがあるのは分かってたし、こんな関係がいつまでも続かない事もこのままでは世間にばれてしまうのも分かってたし、私と先生の今の関係が迷惑をかけていて人の幸せを奪っているのは分かっていた。
私は唇を重ね合わせる先生の背中に手を回し強く抱き締めた。
唇を離して先生は私の背中を軽く叩いて笑って痛いといい私を優しく抱き締めた。
名前を呼ばれるのも、キスするのも抱き締めてくれるのも、これが最後なのかもしれない、と思いながら私は今の幸せを噛締めた、人の幸せは奪ってはいけない、自分がされたら嫌な事を自分がしてはいけない、私が行なっている事の基本は小学生でもできることだ、悪い方向にばかり考えてしまって、自分の考え方がおかしくなっているのは分かっていた。
『どうしたの?灯……』
私の顔を覗き込んで心配そうに見つめる先生を見て私は胸が痛くなった。
私は先生の胸に顔を埋めて、背中に手を回したまま離そうとしなかった。
どこにも行って欲しくない
私だけのもので居て欲しい
私だけを見て欲しい
私だけを愛していて欲しい
先生の特別な人になりたい
この時がずっと続いていて欲しい
私は先生と奥さんが別れて欲しい なんて思わなかった
でも心の片隅では思っていて私と先生の未来予想図を描いていたのかもしれない
私は周りから悪く思われたくないから、取り繕って先生と奥さんの幸せを願っていただけかもしれない、でも本当はこんなにも独占欲が強くて性格が悪い自分が嫌になる。
幸せが怖い、私は先生の温かな体温を感じて強くそう思った、先生を愛しく思うのと同じぐらいに。
私は全て自分の一挙一動が先生を困らせるのではないかと不安で仕方なかった。
好き、こんな一言でさえ先生には重荷に感じるのではないかと思い、今では言えずにいた。
本当はこんなにも大好きで全てを失ってもかまわないくらい先生のそばにいたくて先生の奥さんであり大切な人を思えば思う程、私の胸は動悸がし痛く切なくなってしまうのに、どうかこの思いに気付いて欲しかったけど、そんな私の思いが重荷に感じるのではないかと不安で仕方なかった。
好き好き好きでたまらない、私の気持ちを先生が受け取ってくれたら私は楽になってそれこそ、最高の幸せだと言えるのに、こんなに人を好きに事が寂しさを感じ私を駄目にする。
それでも好きにならなければ良かった、なんて思わなくて私は今でも先生を思えばたまらない程に胸が締め付けられる。
思考が錯誤する、絡み合う糸の様で解く事ができなかった、きっとこの思いは切ってしまえば楽になるのに、それでも私は臆病で切ってしまう事をためらい、1人では何もできずに墜ちていくばかりで、人肌を求めて先生を利用している様だった。
早く切ってしまわないと絡み合うばかりで締め付けられて私自身が切れてしまいそうだった、私は自分が楽になりたいがために先生を利用して先生にキスを求めた。
風が涼しい準備室、切れかけた蛍光灯、冷蔵庫のモーター音、肌に触れる先生の手のひら、重なり合う柔らかな唇、先生の甘いシャンプーの香り。
私の糸を切ってくれるのは、嫌悪感を抱いていたはずだった肌の温もりや抱き合って密着するお互いの肌の湿り気やキスをして求める息苦しい酸素、愛して欲しい 好きだと表して欲しい
身勝手な欲望や不安が故に私は先生の体を求めた、私を抱いて好きだと言ってくれれば私は楽になって糸も絡み合う事が止まってくれそうだったから。
『キスして』
短く言い捨てて私は先生の背中に回していた手を振りほどき腰に手を回し目を見つめた。
驚いていたはずの先生の顔は一点して変わって余裕のある私の大好きなあの先生の顔へ戻った。
先生が唇を合わせて私がそれに答えるように唇を離したり合わせたりして、いやらしく準備室に唾液の音や舌を重ね合わす音を響かせた。
舌を絡め合わせる度にゆっくりと瞼を開け目を合わせた、先生の鋭い目線に私は身震いした。
キスをして声を漏らして腰をくねらせて、周りから見えない事をいい事に、相手が先生なのをいい事に私はキスに溺れた。
私の腰に回していた先生の手は私のスカートから太股にゆっくりと伸び、私はその先生の手にゆっくりと手を添えた。
肌を触る先生の手のひらの冷たさに鳥肌がたった、私は先生の手で自分のスカートをまくしあげさせる様に、下着のギリギリのラインまで持っていった。
先生と私は目をあけ、先生は私の目を見て笑う様に見つめてまた目を閉じたから私もまた少し遅れて目を閉じた。
先生は私のスカートの中に手を入れて足を撫でた、私は腰に手を添えて髪をもう片方の手でなでた。
柔らかな髪は絹の様で、先生の髪に埋もれていたらどんなに心地良いのだろうか とまでも思った。
先生は足を撫でていた手をゆっくりと下着で覆われている部分に移動させ撫で擦った。
私は身を屈め、時々身震いして先生の体に密着させていた体を離した。
先生の手は下着の中に入り込み、私の性器を直に触り、私が俯き恥ずかしそうにする姿を面白がる様に、動いた。
その頃にはお互いの唇は離れていて、私は俯き先生の首に手を回して、窓枠に座り、先生は私の腰を抱き、もう片方の手が私の性器に触れていた。
風で時々 髪が揺れて顔を近付けていた先生の髪が私の頬に当たりくすぐったかった。
『指入れていい?』
先生は私の腰に添えていた手を強く自分の腰に密着させる様に引いて、私に問い掛けた。
先生が私が恥ずかしがるのを見て楽しんでいるのは分かっていたから、私は俯き顔を見せないようにしたけれど、結局先生が私の顔を覗き込むようにして見てきたから
『言わないと駄目?』
と聞いてみたけれど、先生は静かに笑って自分の胸板に私の顔を寄せて私の性器に指を入れた。
私は先生の胸に顔を押しつけられた事にびっくりした途端に、自分の体の中に指を入れられて瞬発的に体を縮こませた。
先生が指をゆっくりと動かす度に私は声を押し殺す様に先生の胸に顔を近付け唇をふさいだ
指の動きに合わせて声を漏らした、度々、先生の求めるキスに私はできる限り返した。
窓辺からの風がいっそう強くなったときに、先生は入れていい?と聞いた、何をいれるのかは分かってたし、先生が避妊具がないから私にこんな事を聞いたのも知ってて、私はうん、と短く言い捨てて少しだけ腰を引いた。
先生が指を私の中から抜き取って、ベルトを外してる間、私は先生の頬を両手で包んでキスをした、何度も口付けて、その間に私の中に先生が入った。
窓から落ちそうになる程に私は身を反った、誰かに見られてしまわないか、それこそ心配になって、私は身を起こそうとしたけれど先生は私を突き放す様に倒して腰を振った。
突き当たる感触や温さを直に感じて私は先生を更に愛しく思って、好きという言葉の重みを感じた。
キスする度に私は胸が高鳴った、唇の柔らかい感触が好きな私は何度も唇を押しつけた。
私が窓枠に手を置いて体を支えて、もう片方の手で唇を押さえ声を出さない様にしていたら先生が私に声をかけたので私は顔をあげた。
『あ!そうだ…この前のテスト、2位だったね』
『1位にはなれなかったんだけどね』
私は息を切らして、笑ってみせた、先生は額を私の額に合わせて私と先生は目を合わせた。
『それだけでも、凄いよ、おめでとう、俺なんか高校の頃はそんな頭よくなかったよ。』
合わせてた額を離して首筋に口をつけて先生は言った。
会話を繰り返す度に愛しさが増して私は意地らしくからかった。
『当たり前じゃん』
私は笑ってそう言うと先生の頭をクシャクシャと撫でた。
『ふーん、じゃあ質問しようかな』
先生は得意気に笑ってみせて、まだ挿入した状態で私を抱き抱え、歩いて私を抱えたまま机に座った、先生の行動に私は驚きを隠せずに居たら、先生はそんな私を笑った、私にはそんな先生がまた意地らしくて仕方なかった。
私は先生が動く度に声を押さえる事に必死で、はたから見れば性行為に没頭する馬鹿な女子高生に見えるんだろうと思った。
私は先生の上にまたがるような状態で座り、先生は私の腰に手を添えて私は先生の手の上に手を添えて腰を動かした。
初めての自分からの、こんな行為に私は戸惑いつつも先生の顔色を確認しながら動かした。
口を塞いで居た手を先生に勢いよく捕み外され、私の声や手は行き場を無くした。
『やだっ…先生っ!ちょっと!』
『英語得意?』
先生は上に乗っていた私の背中に手を回してから、私の上半身を机の上に乗せて先生が上になる状態に変た、挿入しながらの移動に私はしばらく戸惑った。
『え…?普通ぐらいかな…?なんで?』
私がまた戸惑いやり場のないこの体勢で今にも床にずり落ちそうになりながら訪ねると先生はふーん、と生気のない生返事をした。
『ねぇ、なんで?』
私がしつこく聞くと先生は黙って私の声を聞いて居なかったかの様に自分のネクタイを外して、ワイシャツのボタンを開けた。
ワイシャツの開かれた襟の隙間から見える先生の鎖骨がとても奇麗で私は長い間見とれてしまった。
先生は解いたネクタイを私の手首に当てた、そしてもう片方の手首と合わせて私の頭の上で縛り付けた。
私は何をしているのか状況を掴む事ができず戸惑ってばかりで、え?とか何してるの?と訪ねるばかりだった。
先生が体位を変えた時も、私の手首を縛った時も、私の体の中に先生の性器は入ったままで、先生が動く度に私はそれに応えてしまっていたから、恋愛もセックスも似たような物だと染み渡る様に感じてしまった、私は先生の一挙一動に反応してる、先生を愛しく感じるときも普通の日常でもこうやってセックスしてるときでも、ただ今がぼやけた様な思考になっているから、そう考えてしまっただけかもしれないけど。
先生は私の腰に手を添えて、声あんまり出しちゃ駄目だよと言って笑ってから私の中の性器を強く突いた。
先生は私の腰に片手を添えてもう片方の手を机に置き体重を支えて腰を振った。
私は顔を見られたくないという思いの強さで顔を横に向き精一杯、先生から顔を背けた、私はもう絶え切れない程に窒が痙攣してイってしまいそうで、何度もイクと短く言い捨てた。
そんな私を見て先生は短く私の名前を呼んだ。
私は唐突に名前を呼ばれて顔をあげた 目があった瞬間に私は何故か切なくなった。
『イクって英語で言えたら逝かせてあげる』
先生は笑いながら私に言った
私は理解するまでに時間がかかった。
『英語で…?』
『うん、頭良いからそのくらい分かるでしょ?』
私を馬鹿にした様に先生は言った、私はもう今すぐにでも逝きたくて英文を思い出したり考えたりする余裕なんか無かったけど動かない頭を無理矢理にでも動かして必死に考えた。だけど
『俺が英文の答えが分からないからやっぱいいや』
先生は笑ってそう言った、先生の髪の襟足を伝って落ちた汗が私の頬から流れて口の中に入った。
先生は時折私の髪を撫でたり強く目を瞑っているようだった。
『この前さ』
私は先生の言葉の先を期待するかの様に目をじっと見つめた。
『レリーアっていう映画を見たんだ』
先生は目を瞑りながらそう言った、先生の瞼から流れるように生えた長い睫毛からは先程とは違い優しく目を閉じているように感じさせた。
『どんな映画だったの?』
『娼婦がある男を殺そうとするけどその男を好きになってしまって殺せない話なんだけど』
先生がゆっくりと諭す様に言ったので私は黙って先生の口元を見つめた、お互い荒い息遣いをしながら。
『本当はその男もその娼婦を殺そうとしてたけど愛してしまったが故に殺せなかったんだ』
『それで、その映画の中の2人がセックスするシーンで女が男に何度も壊れてしまいそうって言う場面があって、男は体の事かと思って女の言葉に気にもとめずヤり続けたんだ。』
先生は入れたまま動くのをやめて映画の話を続けた、その映画の話が何を諭しているのかなんて私は知らずに聞いていた。
『だけど、それは2人の関係の事を指してたんだ、女は男を殺さなければならない、男は女を殺さなければいけない、女だけはそれを知ってたから今のままでは関係が壊れてしまいそう、という意味で何度も言ってたんだ。』
『結局、女と男はお互いを殺さなければならないという事情を分かり合い男は女の首を締めて殺して、自分は銃で頭を打ち抜いてお互い死んだんだ。』
私は先生の頬に触れた、先生が悲しそうに見えて何故か触れたくなった。
『悲しい話だね。』
先生は静かに笑った、その笑みは白くとても切なげだった。
『昔の映画だったけど、とてもキレイだったよ』
そう言って先生は私の腰を自分の腰に引き寄せた。
私は体を縮こませた、先生がまた私の中を突いたら私は鳥肌がたった。
私は先生と交わりながらも映画の中の女が言った、壊れてしまいそう という台詞について考えていた。
『ずっと一緒に居れたらいいね』
先生は穏やかな顔で荒い息を吐きながら言った。
私は突然の言葉に喜んだ、だけどそれを悟られない様に平然を装った。
『映画の2人みたいに?』
私が聞くと先生は短く うん とだけ返事をした。
愛しくてたまらない
この気持ちをどうしたら
いいかなんて
分からなかった。
先生の白い肌も
柔らかな赤毛も
私を呼ぶ声も
一緒に居たい と言ってくれた事全てが大好きだった。
『灯、』
『なに?』
お互い 目が合うと
授業終了の鐘がなった。
先生は私の頬に手を当てて『壊れてしまいそう、って言えたらイカせてあげる』
『本当に映画の2人みたい』
私は先生が私に触れた様に先生の頬に触れた。
先生の穏やかな表情が私の中に入り込んで私自身が穏やかな気持ちを持ったようだった。
準備室は相変わらず静かで
中庭には誰の姿もなく
聞こえてくるのは
鳥の鳴き声と天井から
床と天井越しに聞こえる
椅子を引きずる音や
騒がしい笑い声だけだった。
先生が私を抱いてる時だけ
私は自分の立場を忘れられる、それはもしかしたら先生も同じなのかもしれない。
自分ばかりが辛いと私は
思っているけれど、私は
先生に抱かれて居る時
冷静に色んな事を考える事ができて、一番辛いのは先生なのかもしれないと思った。
私には大事で愛する人は先生しか居ないけれど先生には私の他に奥さんも居て立場的にも大変で、罪悪感や私のわがままに付き合って可哀相にも思えて、私は先生に抱かれた今日、自分がいかに自分勝手で自分中心に考えて居るか、という事を思い知った。
でも、考えると考えるだけ先生が愛しくて私は何度も先生のキスに答える様に壊れてしまいそうと吐き捨てた。
be out of oderと、
私はそれから
学校へ毎日通い、推薦で大学に入る事を勧められ、親や先生の言うとおり、決められたルートを歩いてみる事にした。
それは私には苦痛では無かった、今まで通りの生活でいて、周りの皆が大学受験に焦るなか私は周囲の期待や応援のもと、日頃の苦労を積み重ねた結果として、皆の焦りを悠々と眺める事ができた。
肌寒い風は強く冷たい突き刺すような風に変わった。
私のスカート丈は少しだけ長くなり、先生と付き合い始めた頃の髪は腰まで伸び、先生と付き合い始めてから私は6人の異性に告白された。
でもその6人の異性は私に振られてから新しい恋を探し実らせて居た、簡単な恋でたまたま私だっただけなのは分かっていた、それでも私はまだ心の奥で誰かに1番に求められる事を望んで居た。
私は満たされない、周りが手を繋ぎ歩くのを見て羨ましいとは1度も思わなかったけれど、好き と言ったり言われたりしてそれを幸福だと感じ大切にして先を求め考える関係を私は羨ましく思った。
私は満たされない、あの人が入って抜けてから私の中は深い針で無数に刺された様でその小さな穴に気付いてくれる人は居なくて、先生を困らせたくない、等とキレイごとを言って結局は嫌われたくないために言いたい事を我慢して私は耐えて居た、それも私の自分勝手で先生を困らせているのも知らずに。
何度も泣きそうになった、涙は出ずに私の目頭で溜まり顔が熱くなった。
もっと好きになって欲しい、私はそう思っていても結局それもキレイごとだった。
私は心のどこかでいつも思っていた、私だけのあなたで居て欲しいと。
考えを探れば行着いたのは独占欲でしかなく束縛する術を知らない私は憎悪で心を汚していった。
大学への受験を私を含めた皆が目の当たりにした、私は推薦合格で大学へ入学する事になった。
私立入試、公立入試、それぞれが終わった頃には皆の顔は複雑そうで、卒業式への練習やレクリエーションを行なった。
先生とはその頃になると会う回数は減っていた、準備室に居る事も私が行く事も少なくなり、メールや電話も先生の方から私の大学入試を考えてくれたらしく控えていてくれた。
先生の好意と私を心配してくれた事を素直に受けとろうと思ったけれど、それが素直なのか考えない様にしてるのかは私には、はっきりと分かっていた。
冷たい空と風が吹き付けるベランダに出て星を眺めていたけれど、視線はすぐに外れ離れていく存在に気付いて泣いていた。
正門を潜り校舎への桜並木
準備室から見える中庭へ散る桜の花びらと温かな日差し
風に吹かれて揺れる椅子にかけられた白い白衣
騒がしい大勢の保護者
胸ポケットに飾る赤い花飾り
黄昏た目線で今日の卒業式についてを話す同級生
携帯のシャッター音が何度も聞こえた
吹奏楽部が今日の演奏のために朝から忙しなく楽器を運んでいた
卒業式という実感はなくても私は今から教室へ戻り整列し体育館へ向かい卒業式を行うんだ、練習された通りに私は行うのだろう。
写真を取り合う事に何の意味があるのだろうと思いながら私は笑顔を作ってシャッターが降りるのを待った、ただそれの繰り返しだった。
教室に入ると既に泣いてる人が居て、それを横目に私は席について今日で着る事を最後とする制服を眺めて感傷に浸った。
先生は皆に簡単に話をして整列させ体育館へ向かいクラス順に体育館の中へ入った。
全学年は入り切らないため1年生は今日は休みらしく2年生が私たちを拍手で出迎えた。
でもその拍手は私が去年した様に手の疲れを感じながら叩く、感情も籠っていなく音はかすかにしか鳴らない只の動作にしか過ぎなかった。
それでも吹奏楽の演奏は素人の私から聞いていても音程の狂いのない素晴らしい演奏だった、高校生が演奏しているとは思えない程で、トランペットがベルを揺らしたり、コントラバスの軽やかなピッチカートは見ていて面白かった。
卒業式証書を授与する再に皆『今まで最高だったー!』とか『大好き』と、叫んでいたけれど私は返事だけを返し紙切れを受け取り、日本国旗や来賓の方々、並ぶ先生達にお辞儀をして舞台を降りた。
先生方にお辞儀をする際に先生の姿が目に入った、先生の目はもう女性として ではなく私を生徒として穏やかな目で見ていた。
それに気付いた時に私の次に舞台に上がっていた子が彼氏の名前を叫び好きだと叫んでいた、私は振り返ると、その子と目があった、お互いで笑って私は前に向き直し歩いて、授与が終わってから生徒代表として読む思い出についての作文の事を考えていた。
私は卒業証書を手にパイプ椅子に座った、先生方が並んで座る椅子の元で黒いスーツを身に纏う先生はいつもより凛々しかった。
目が合うのを恐れて私はすぐに目をそらした。
次々と名前を呼ばれてからの返事や叫び声に近いメッセージを聞き流す様に聞いていると、卒業式という場に浸り今までの事を思い出してみた、楽しい事も多かったし、先生の前に付き合ってた相手に未練がある訳じゃないけど思い出すと穏やかな感情を抱いて、この学校や同級生と過したりするのも今日で終りだと感じると切なくなった。
授与は終り私の名前が呼ばれて私は様々な方にお辞儀をし舞台に上がってマイクの高さを調節してから前を見すめて胸ポケットにしまっていた紙を取り出し読み上げた。
『私がこの学校に入って共に皆と夢を追った、この素晴らしき日々は私の宝となりました。皆と過したこの宝石の様なきらめいた日々は忘れません。』
そう言い終わってお辞儀をすると、拍手に混じって私の名前を叫ばれて私は思わず笑ってしまってから舞台を降りた。
もう先生の姿は追わない様にしたつもりでも、私は先生を見ていた、来賓の前を通る時に目が合った先生は私に笑って小さく手を振って、いつもと変わらない笑顔を向けてくれた。
私の不安の糸を先生が笑顔で切ったようだった。
私は椅子に戻る通路を歩きながら途端に涙を吐き出すかのように泣き出した。
先生に対する愛しさと卒業の切なさが入り交じり、ただ声を押さえて泣いていた。
私はいくら先生を嫌いになろうと、悪い方向に向かって考えても先生を好きな事に変わりはなかった。
好きでたまらなくて愛しくて先生の行動に怯えて先生が私から離れるのを恐れて私から先生を避けて拒絶して逃げていただけでいた事にやっと気付いた。
愛しくてたまらない、一緒に居たい、ただ私を嫌いにならないで、欲張りな私は妥協してでも、プライドを捨てでも一緒に居たかった。
その笑顔がずっと私に向いてくれていたらどんなに幸せなのかを考えて私はまた涙を吐き出した。
私が通路を歩き椅子の間をすり抜けて椅子に座ると、隣りに座っていたクラスメートは私を慰めるかのように抱き締めた。
私が椅子に座った瞬間にアナウンスは鳴り響き、クラス順に舞台に上り全員合唱となった。
先生と付き合う前に付き合っていた二宮君がグランドピアノを全開に開けて椅子に座ってから、指揮者と目を合わせてアイコンタクトを取り合ったら、旅立ちの日に の前奏を白い鍵盤の上で描き始めて居た。
私は前奏の間、彼の姿を眺めていた、二宮君は私を見る事は無かった、そして旅立ちの日にを歌ってる間に泣き出す人も多く、歌えない状態でほとんどの人が 立ちすくんで居た。
全員合唱が終わったら、3年生の担任であり吹奏楽の顧問の先生は泣いて クシャクシャになった顔でタクトを振り上げて、演奏を始めて居た。
演奏が始まったら皆 泣いた顔で体育館を後にした、ゆっくりと皆歩いて下級生に胸元の花飾りを投げたり、吹奏楽の演奏を見つめていたりしながら。
私は足元を見ながら泣いた顔を俯いて隠した。
人で埋め尽くされた体育館の暖さとは対象的に外は冷たく私は身震いをして、クラスメートと抱き合って卒業を切なく感じた。
卒業生全員が外に出ると先生達が教室に戻る様に声をかけた。
その言葉に従い私は舞い散る桜の花を後にした。
泣いた顔をお互いで見て笑ったり化粧をし直したり、第2ボタンを大事そうに持つ皆を見つめて卒業を実感した。
腫れた瞼で担任の先生は教卓に立って1人ずつ小さな花束と手紙を手渡した、皆は泣いたり笑ったりして教室で机に座る事を感じていた。
今日の夜の打ち上げについて先生が話してから皆で円陣を組んで1人ずつ叫ぶようにメッセージを告げて皆 別れた。
これが最後かと思うと頬を伝って涙が流れた。
私は夕方近くまで後片付け等で忙しい先生を教室で本を読みながら待っていた。
水色とパステルカラーのピンクが合わさった空と桜の花びらがキレイだった。
制服の第2ボタンを触りながら私は鞄と卒業証書と花束を持って立ち上がり先生に歩きながらメールを打った。
先生は約束通り人の居ない中庭に来てくれた。
『卒業おめでとうございます』
はにかんだ笑顔で私の頭を撫でながら先生は私の顔に目線を合わせた。
桜の花を見て他愛ない話をした、冷たい風に足が冷えて足が痛かった。
『ちょっといい?』
私は本題を切り出すかの様に先生の手を掴んで中庭の人が来ない池の近くの林の中に連れ込んだ。
『何?』
先生は林の中で手を合わせて擦り合わせながら言った。
私は先生の手を取った、手は冷たくて私の体温が奪われていく様だった。
身を縮こませてから私は聞いた
『もう先生と私はお別れなの?』
先生は表情一つ変えずに私を見てから強く抱き締めた。
背中に腕を回して胸に顔を埋めた。
先生は言葉に間を開けながら私の耳元で囁いた。
『学校では無理だから、休みの日には会えるようにするから』
『うん』
『忘れたりなんかしないから』
『うん』
私は間を空かせながら喋る先生の言葉にただ相槌を打つかの様に応えた。
先生の間の空いた言葉は偽りでは無かった、けれど会いに来る という言葉は果される事は無く嘘に変わっていった。
私は大学生になった、髪を茶色に染めてピアスを開けて大学ではサークルに入り友達もできた。
季節は春になり印象深かった桜の花は散ってしまった。
卒業してからは1度も高校には行ってない。
私は先生のキスのときの唇の柔らかさやセックスのときの鋭い目線をまだ求めて居た、けれどそれはもう過去の話になりかけていた、私は大学2年になるまで先生からのメールや電話をずっと待っていた、けれど私からメールを打っても返事は送信エラーで、電話をしても使われておりません と機械的なアナウンスによって断られた。
学校に電話して、先生の電話番号を聞こうと思っても、個人情報が…と言い、取り合っては貰えなかった、辛うじて分かる家に押しかける事もできず、学校には来ないで欲しいと言われていたので行く事もできなかった。
信じていたのに突然の裏切りにも似た行為に私はメールを送る事ができなかった夜に泣いた。
電話が通じなかった日は悩みに悩んで学校に電話をした。
相談できる人もいない中、私は毎晩先生を思って泣いた。
そして大学2年の春に先生が違う高校に移ったと聞き、望みが無い事を痛い程に思い知らされて私は、先生を思う悲しみを深く沈めてから、家で声に出して泣いて、これで泣くのは最後にしようと決めた。
先生からの電話を待つ夜は息苦しくて、私は過食嘔吐を繰り返して、手には過食嘔吐者特有のたこができた。
先生の姿を街では何度も探した、けれど拒絶された私はまた先生を求める という行為はとてもじゃないけれど、できなかった。
傷つくのが怖かった、先生が居ない夜だけでも私は痛くて切なくて発狂してしまいそうだった。
先生は私の体目当てで、私ばかりが先生を好きだったのだ、先生は卒業してからも私と付き合う というのは面倒だから身近に置ける人物と私を置き換えたのだ。
私の想像は膨らむところまで、膨らんでいた。
先生に会いたい、私の事が好きじゃなくてもいいから、私を嫌いじゃない と言って安心させて欲しかった。
望みを抱いて私は先生を待った、街で少しだけ見れただけでも良かった、なのに私は卒業してからの1年間会う事も無く、大学2年を迎えた。
もうその頃には、私は先生を思い出しても泣かなかったし、裏切られた そう開き直っていた。
そんな中、美織から暇な1日を送っていた私に都合良く電話がきた、高校のクラスメートから電話が来る事は今の私にとっては珍しかった。
美織に指定された喫茶店で私と美織は会う事にした。
私は灰色に白いレースのついたワンピースを纏い上から黒いジャケットを羽織って鞄を持って家を出た。
美織が指定した喫茶店は美術館の中にあるらしく、私は初めて行ってみたけれど内装がとてもキレイで私は中に入り美織の姿を探した。
すると後ろから、私を呼ぶ声がした、瞬発的に私は振り向いた、振り向く前からその声の持ち主は分かっていた。
私は泣き出しそうになり、振り向いた相手に背を向けて歩き出した、歩き去ろうとする私の手を強引に引いた人物は紛れも泣く藤崎先生だった。
『やめてくださいっ!離してっ!』
ボリュームを落とした声で私は言って掴まれた手を振り払おうと手を上下に振った。
先生は黙って私を喫茶店の中に連れ込ませた、ウエイトレスに『何名様ですか?』と聞かれて先生が2人 と答えた時点で私は抵抗するのをやめた。
座って と短く先生は言って喫茶店の一番奥の席に私を座らせた、メニュー表を差し出して先生は何でも頼んでいいから と言った。
『帰ります』
できるだけ強く先生が怯んでくれる様に私は言い捨てた。
『ここまで来て?』
先生は前より伸びた髪を横に流して私以上に強く言った。
メニュー表を斜めにずらして先生は何を頼むか決めた後、私に何を頼むかと聞いた、私が決めました と言うと先生はウエイトレスを呼びつけた。
私の頼んだ紅茶と先生の頼んだハーブティーが来るまで私は俯いて先生と目を合せないようにした。
先生は時折 時計を眺めたりしてたけど、ほとんどはガラス張りの店内から見える外の景色を眺めていた。
私と先生の頼んだものが机の上に乗って、先生が涼しげなグラスにハーブティーを注いだ。
ハーブティーを注ぐと氷がグラスに当たって音がなり、その音が心地良かった。
ハーブティーを先生が注いで何口か飲んでから先生が私の名前を呼んだ。
2年振りに呼ばれる先生からの私の名は艶がある様に感じてしまった。
『灯にとって言い訳に聞こえるなら聞き流してくれていいから、聞いて欲しいんだ』
『はい、』
『灯が大学を推薦で、入るって決めて勉強してる間から俺の方から灯を避けてたんだ』
私は自分の予想が当たっていた事に驚いたのと同時に悲しくなった。
『灯が卒業してからも灯の事を忘れた日は無かったよ』
『これだけは本当だから信じて欲しい』
先生はハーブティーの入ったグラスを手に持ちながら私の目を真直ぐに見て凛とした表情で言った。
『俺は灯に会いに来るって言ったくせに約束も守れなくて携帯も変えて自分から逃げてたんだ』
私は自分がこうして、先生と話す事になるとは想像がつかなかった。
『本当にごめん』
先生が机の上に乗せていた私の手に触れたときに、私は先生の顔を直視して言った
『許すなんて、できません、今さら先生をどう受け止めればいいんですか?』
『灯の言う事は正しいよ、傷つけるのが怖くて逃げて灯を追い詰めてしまった俺が悪い』
『傷つける…だなんて、私は卒業式の日で先生にはっきりともう会えない!って言われた方がよかった』
『俺は追い詰めてしまった妻を見捨てて調子のいい男になることができなかったんだ』
『え?』
先生の今にも泣き出しそうな顔を見つめて私は机から身を乗り出しそうになった。
『妻と別れた。』
私は先生の口が何を発しているのか理解ができなかった。
『言い訳になるかもしれない、もっと俺の内面的な部分が悪かったのかもしれないけど…』
上手く、上手に私は考えを整理する事ができなかった。
ハーブティーのグラスの水滴がテーブルクロスを濡らしてシミができている様だった。
『卒業式の夜に別れを告げられて、すぐに離婚した』
先生は顔の前で手を組んで、静かに吐き出すかの様に私に一つずつ話してくれた。
先生の奥さんは子供が
できない体だった、という事。
結婚してから、それが分かったため、先生の親に冷たい目で見られていて、それに気付いていたけど何もしてあげれなかった事。
他にも先生は私に様々な事を話してくれた、そして時折 震えた先生の声。
私は先生の奥さんを思って泣いた、初めて見たときに可憐で儚げな庭に居た姿を思い出して私が追い詰めてしまったのではないかと罪悪感に詰め寄られて私は泣いた。
『きっとお互いの嫌な部分しか見ない様になっていたから、灯と出合う前から離婚する日が近くは無い事は分かってたんだよ』
先生はハーブティーのグラスを口につけたまま言った。
笑った先生の笑顔がとても儚げで見てて切なくなった。
『ごめんなさい、私のせいで…』
先生は黙って首を横に振った
『妻と別れたから、灯に調子良く寄り添うなんて、できなかったんだ』
『私は構いません!先生が私を求めてくれるならいくらでも返す事はできます!』
『駄目なんだよ、それじゃあ』
『なぜ?』
私は言い寄った、こんなに必死になる辺り私はまだ先生の事が空きなんだろうと痛い程に感じた
泣いてグチャグチャになった顔でまだ私は先生を求めていた、先生を忘れた と言っても思い込んでるだけにすぎない事を今 思い知った
『私はまだ先生が好きです』
私は涙を手の甲で拭いながら言った
『俺では灯を幸せにできない』
先生は断言するように言った。
『どうして?私は先生が居るだけで幸せです』
『俺はいつでも灯のそばにいるよ、灯が求めるなら答えることだってできる』
『私はあなたの特別にはなれないんですか?』
私は声を荒あげて言った
幸せにできない だなんて、誰が決めたの?幸せにするのは先生だけの役目じゃないはずでしょう?
私は先生にそう言ってみせたけど、先生はそうじゃない と何度も言っていた。
『妻をひどい程に傷つけて切り捨てた俺では灯は幸せになんかなれないよ』
先生は私の目を見て凛とした、あの表情で諭す様に言った。
先生と出合ったあの時から時間が止まっているような気がした、私は何一つ進歩していない、自分の意見ばかり通そうとして、何て一方通行で子供みたいな恋愛しかできないのだろう。
私はティーカップを片手で強く握り溢れ出しそうな涙を堪えた。
私は先生を諦めたら楽になれるの?
私が先生の幸せを祈れる様になれたら私も幸せになれる?
『灯の事が好きだよ、でも俺は灯を傷つけてしまう、傷ついた姿を見るのは俺は嫌だし、灯には他に色んな世界を見て欲しいんだ』
『俺みたいな最低な奴で、一生を壊してはいけない』
『早く忘れて好きな人を作って』
先生はいくつも言葉を並べた、私に幸せになって欲しいがための素直な気持ちなんだ という事は染み渡る様に伝わってきた。
先生の困った顔や切なげな顔を見て私は高校の頃を思い出した、私は先生を困らせてばかりだった、先生の言いたい意味も分かったような気がした、私はいつまでも 先生の前で駄々をこねる子供で居てはいけないんだ。
目の前に座り俯く先生の顔を見て小節が切り替わる様に気持ちが変わっていった様な気がした。
私が困らせてもお互い前に進めない、お互いの欲を突き付けるだけでは駄目だって。
私は顔をあげて顔を洗いに行くと告げて、トイレの個室に入った、声を押し殺すかの様に泣いた。
好きでたまらなくて、連絡の取れない夜も先生の事ばかりを考えて苦しかった夜を思い出した。
理科準備室で先生とした最後のセックスを思い出した。
卒業式の日に抱き締め合った事も、
お互い進む事ができるから大丈夫、と 言い聞かせた。
大丈夫、忘れられる 不安は無い、ただ自分の欲が通らなかっただけ、先生を愛した日々は変わらない。
勢いよく蛇口をひねった、わざわざ美織に頼んでまで私に会いに来て、誤解を解きに来てくれた先生のためにも私が諦めなきゃ、そう思った、駄々をこねてる自分が恥ずかしくなる程に
水で瞼を冷やして、今日が最後の別れだから、これで本当の別れだから、 そう考えて笑ってみせた。
鏡に移る自分笑顔 先生に向ける事ができる様に願ってトイレをでた。
『先生、もう外に出ましょう』
私は椅子に置いていた鞄を手に先生の手を引いた。
先生は戸惑ったような顔をして立ち上がった。
会計の際に私がお金を払おうとしたら先生が私の手を下に降ろしたので、私は行為に甘える事にした。
喫茶店を出ると先生は美術館の中を見て回るか を聞いたけど私はいい と言って精一杯笑った。
『先生、私もう先生に会いませんし、新しい恋を探します』
私はオーバーに笑ってみせて言った。
『なんか、そこまで言われると寂しくなるな』
先生は寂しげにはにかんだように笑った
私も笑った
『やめてくださいよ、人がせっかく決心したんだから』
先生は無言で笑っていた口を閉じた
静かな美術館のロビーは
冷たく渇いた空気が流れていた
『最後に一つ、お願いがあるんですけど駄目ですか?』
私は先生の正面に回って、できるだけ真面目な顔で聞いてみた
先生はいいよ、何?と優しい表情で私に聞いた。
私はその表情を見ただけでも良かったけれど、欲を張って言ってみた。
『最後にキスしてください』
私は顔色を伺う様に先生の顔を見上げたら、先生は 静かに笑った
私と先生だけの
美術館のロビー
異空間に迷い混んだみたいで、頭がクラクラとした
先生は私の肩に手を乗せて、目を瞑って と私に言った
私は目を瞑って
身震いをした
先生の唇が触れた
触れる感触に窒が痙攣した
柔らかな感触も甘い余韻も
これで最後かと思うと
切なくて
胸が苦しかった
肩に置かれた手が腰に回って私と先生は何度もキスをした、重ね合せた度に切なさが増した
どんなセックスよりも
鳥肌がたって
背筋が凍った
どんな甘い台詞よりも
胸がときめいた
甘い余韻に離れられなくなりそうで怖かった
唇を離して目を合せたときに、本当に大好きだった と先生が言ってまた私の唇を塞いだ
愛してる
絶対に忘れない と唇が離れた度に先生は切なげな顔で私に言った
私も 本当は忘れたくない
大好きだから とか愛してる と囁いた
柔らかな感触を刻む様に
唇を重ね合せた
私の頬に涙が伝った
先生は私の唇から唇を離したら、強く抱き締めた
それは 卒業式の
ときを思い出させるような
余韻と感触だった。
先生が一言 私に告げて指を絡ませてから、私は崩れる様に床に座り込んでまた途方もなく泣き出した。
先生と抱き締めあって
私と体を離したら
先生は振り返らずに
美術館を出て行った
立つ事ができないみたいに
私は泣いて座り込んでいた、先生が残して言った言葉を聞いて私は笑った、矛盾してるじゃん、嘘つき、私は1人で吐き捨てる様に呟いた。
私の体に残るのは
指を絡ませた時に先生が私にくれた、左手薬指にダイヤのついたシルバーリング
そして
抱き締め合ったときの先生の
『もう1度会ったときにお互いの気持ちが変わらなければ結婚しよう』
という
甘く艶やかな余韻だけだった。