国際社会の警告を再三にわたって無視し挑発行為を繰り返す北朝鮮に対しては、国連安全保障理事会の決議に盛り込まれた追加制裁を確実に履行することがまず求められる。そのためには日本と韓国が連携を強めて米国との3カ国協力の枠組みを固める必要がある。
こうした認識を共有する麻生太郎首相と韓国の李明博(イミョンバク)大統領は28日の会談で、北朝鮮の核保有は決して容認しないとの意思を確認した。この原則を踏まえ非核化への道筋をつけるには中国を含めた関係国の協力体制を築くことが不可欠である。
安保理決議は北朝鮮に対し、弾道ミサイル活動の停止や核兵器・核計画の放棄、関連活動の即時停止を強く求めた。しかし、北朝鮮はこれに反発し、ウラン濃縮作業の着手を宣言する一方でミサイル発射の準備も進めている。
決議には武器禁輸や貨物検査の強化、資産凍結、金融資産の移転抑止、新規援助禁止などが盛り込まれた。貨物検査については輸出入が禁じられた物資を積んだ疑いがあるとして米海軍がいま、北朝鮮の貨物船を追跡、監視中だ。
金融制裁については、採択から30日以内に安保理の制裁委員会が資産凍結や渡航禁止となる個人・団体の指定や禁輸対象品目のリストを決めることになっている。その期限は7月中旬だ。
米政府は制裁措置の徹底履行を図るための専従チームを発足させ、近く中国などに派遣するという。決議の実効性を高めるため中国の前向きな対応を求めたい。
首相と大統領は北朝鮮を除く5カ国協議の開催を検討することで一致した。首相は共同会見で「6カ国協議が最も現実的な枠組みと思っている」としたうえで、5カ国協議について「6カ国協議を前進させる形で開催できることを考えるべきだ」と述べた。
中国は先週行われた日本との次官級戦略対話で6カ国協議の枠組みの中で非核化に向けて協議を続けていくことを確認したが、5カ国協議開催については公式な態度を明らかにしていない。首相の慎重な言い回しは中国配慮のためとみられるが、北朝鮮が「6カ国協議には二度と復帰しない」との硬い姿勢をみせている以上、5カ国協議も現状打開のためのひとつの方法といえよう。
今回の大統領訪日は首脳が交互に訪問し合う「シャトル外交」の一環だ。今年1月の麻生首相の訪韓を受けたもので、首相と李大統領の顔合わせは8回目となった。「シャトル外交」の定着を、今後も北朝鮮問題をはじめとする日韓の協力関係の拡大に生かしていきたい。
毎日新聞 2009年6月29日 東京朝刊