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デジタルトレンド2009:高速無線通信スタート ウィルコム・上村治さん

 ◇常時接続「持ち歩き」--ウィルコム次世代事業推進室長・上村治さん

 ウィルコムの高速無線通信技術「XGP」の商用サービスが10月1日にスタートする。ADSL常時接続と同様の通信速度を、移動中にも実現できるという。同社次世代事業推進室の上村治室長に聞いた。【岡礼子】

 --利便性は。

 モバイルが苦手としていたネットテレビや動画など、データをダウンロードしながら同時に再生するストリーミングサービスを楽しめる。常時接続を「持ち歩く」感覚だ。有線と同じことが無線でできることは大きな可能性を秘めている。カーナビに搭載してネット上の地図データを参照しながら走ったり、災害時、けが人の状況をその場から動画で送り、指示をあおぐような使い方も考えられる。

 --XGPの利点は。

 他の通信技術では、情報を受け取るダウンロードの速度に重点を置いているのに対し、発信するアップロードを重視している。実機でのアップロード速度12・2メガbps(携帯電話の3Gはダウンロード7・2メガbps)は、現時点では最速だ。地域によって基地局が密集するマイクロセル方式をとり、利用者が増えても速度を保ちやすい利点もある。

 --PC内蔵型は。

 まだ答えを出していない。PCに内蔵すればコストがかかるし、購入した全員が利用するわけではない。PHSで内蔵型から撤退した経験もある。しかし、すでに3Gの通信部品を組み込んだPCが販売されている。メーカーが、通信部品を内蔵することが一般的になれば、そこにXGPを組み込んだり、注文販売をする可能性はある。

 --価格競争になるのでは。

 XGPと(他社の高速データ通信規格の)ワイマックス、LTEの通信部品は共用できる。将来はハードを完全に同じにして、ソフトウエアでコントロールする可能性もある。「囲い込み」は難しくなるが、利用者が必要に応じて自由に選べる仕組みが作られていくのではないか。部品の価格差はなくなっていくと考えている。

 --展望は。

 PCを持ち歩いてデータ通信をする利用者が、今の10倍に増えるとは思わない。車やゲームなどの機器に組み込まれ、新しい使い方が出てきた時に大きく伸びる可能性がある。その需要を狙う。

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 ■人物略歴

 ◇かみむら・おさむ

 1969年生まれ。京都大学農学部卒業後、DDI(現KDDI)入社、DDIポケット(現ウィルコム)へ出向し、PHS技術開発、アンテナ開発、無線品質管理などに携わる。2005年ウィルコムに転籍。XGP国内制度化、国際標準化などに従事。08年現職。

毎日新聞 2009年6月29日 東京朝刊

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