ダミー団体による西松建設の献金事件は、小沢一郎民主党代表代行側だけでなく、自民党二階派側への資金の提供が立件された。
東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(第三者名義の寄付)の罪で、西松建設元社長の国沢幹雄被告=公判中=を追起訴した。2006年6?7月、二階派政治団体「新しい波」のパーティー券の購入代金計340万円について、実際には西松建設が支払ったのに、ダミー団体の名義で支払ったとされる。
国沢被告とともに、政治資金規正法違反容疑で告発された二階俊博経済産業相の秘書(氏名不詳)は嫌疑不十分で不起訴、新しい波の元会計責任者、泉信也参院議員らも嫌疑不十分で再度、不起訴処分となった。
国沢被告は、小沢代表代行の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反罪などで起訴されたものの、二階派側への資金提供については起訴猶予となっていた。一転して追起訴となった背景には、検察審査会法の改正がある。司法改革の一つとして、裁判員制度開始(5月21日)に合わせて施行された。
検察の不起訴処分の当否を審査する検察審査会の議決には従来、法的拘束力はなかった。改正法では、「起訴相当」の議決後、検察が再び不起訴とするか、3カ月過ぎても起訴しなかった場合、再審査をして再び起訴相当を議決すると、裁判所が指定した弁護士が“検察官役”になり、起訴して公判を担当する。起訴にも民意を反映させようという狙いだ。
東京第3検察審査会は、起訴猶予となった国沢被告を「起訴相当」と議決した。理由は「バランスを保つため」とし「すべてを公の法廷で説明した方が国民全体が納得する」と指摘した。秘書までも起訴された小沢代表代行側と二階派側の処分の違いは、多くの国民に「不可解」に映ったに違いない。東京地検は審査会の議決に応えた形だが、再開される法廷では疑問点についての説明が必要だろう。
一方、二階派側の秘書らの不起訴処分について、東京地検は「証拠がない」などを理由にしているが、どこまで捜査に踏み込んだのか、疑問が残る。東京第3検審は「起訴相当」より効力の弱い「不起訴不当」と議決していたが、「捜査が尽くされているとは到底言えないとの印象が強い」と言及していた。
国民が納得できる捜査が望まれる。二階経産相自身にも国民への説明責任が求められていることは言うまでもない。
2009年3月期決算企業の大半が株主総会を終えた。世界的な景気後退で業績悪化が深刻な企業が多く、経営立て直しを強調するトップに株主の厳しい質問が相次いだ。
業績が落ち込んだ主要企業では軒並み過去最高の出席者数を記録、株主の不安や不満の大きさをうかがわせた。巨額の赤字計上や無配・減配を打ち出す企業の増加を受け、株主からは「リストラや、減配をしながら役員報酬が高すぎるのではないか」「業績を立て直す道筋を」といった声が出され、経営陣は謝罪や説明に追われた。
今年の株主総会は様相が一変した。「もの言う株主」の代表格である外資系投資ファンドが敵対的買収や増配要求で会社側と激しく対立し、混乱する光景は大幅に減った。金融危機の深刻化でファンドの多くが資金調達に苦しみ、日本での投資活動の縮小、撤退を余儀なくされたことなどによるとみられる。
代わって、存在感を高めたのが個人投資家や機関投資家である。株価の低迷にあえぐ個人投資家だが、目先の利益だけでなく、将来への経営戦略に関する質問も増えた。経営陣と立場が近い「もの言わぬ株主」とも言われた機関投資家も顧客の危機感の高まりを受け、積極的に議決権を行使、会社議案への反対比率も上昇した。
ファンドとの対立のような大きな混乱はないのに、総会に長時間を費やした企業もある。経営陣が丁寧に質問に応じたということだろう。株主総会の本来の姿である対話型へ転換する兆しと受け止めたい。
景気の底入れも言われるが、企業を取り巻く環境は依然として厳しい。苦境を克服して新たな飛躍への活路をどう切り開くか。株主との対話を生かした経営者の手腕が問われる。
(2009年6月28日掲載)