富山市で生活保護を受けていた男性(56)の遺体が、本人の同意がないまま市によって、学生の解剖実習などのため日本歯科大の新潟生命歯学部(新潟市)に引き渡されていたことが28日、市などへの取材で分かった。市によると、遺族が引き取りを断り、大学への引き渡しを了承した。
引き取り手がない遺体の扱いは、生活保護法などで市町村による埋葬を定める一方、死体解剖保存法では大学への提供、解剖も認めており、市の対応は違法ではないが、識者や弁護士から「法の不備で遺体の扱いに差がある。本人同意のない身体の提供は倫理的に問題」との声が出ている。
富山市などによると、男性は4月22日、市内のアパート自室で死亡しているのが見つかった。県警は事件性がないと判断し、警察署に一時安置。市の依頼を受けた大学が24日に引き取った。
市社会福祉課は「受け入れ先が見つかった以上、(市の)仕事は効率的、経済的にすべきだと判断した」としている。遺族に生活保護法に基づき葬祭扶助が出るという説明はしなかったという。
日本歯科大は「これまでも複数回引き受けたが、今後はやめることを検討している」とした。