大統領選挙をめぐり混乱が続くイランですが、外国メディアが締め出されて以来、市民はインターネットを使って現地の様子を国際社会に訴えています。インターネットを通じた訴えは世界に届くのか、アメリカからの報告です。
 道路に倒れ込むネダという名の若い女性、胸を撃たれたらしく、鼻と口から血を流して微動だにしません。携帯電話のカメラで撮影されたこの衝撃的な映像は、インターネットを通じて瞬く間に世界中に広がりました。
 
 こちらのイラン系アメリカ人のご家族は、インターネットを通じて毎日、イラン本国にいる親戚や友人と情報を交換し合っているということです。
 
 「こんなふうにみんな写真(や動画)をはり付けているでしょう」(イラン系アメリカ人 シリン・ナリマンさん)
 
 イラン政府が外国メディアを締め出して以来、シリンさんの情報源は「フェイスブック」や「ツイッター」といったソーシャル・ネットワーキング・サイトです。デモが弾圧される生々しい様子が連日書き込まれていると言います。
 
 「イランの人々はネット技術を味方につけて、ひとりひとりが『記者』になったのです」(CBSテレビ外信部部長 イラン系アメリカ人シリン・ナリマンさん)
 
 一方、こうした情報の扱いに頭を悩ませているのが、既存のマスメディアです。
 
 「ネットに書いてあることが事実だと100パーセント証明することはできません」(CBSテレビ外信部部長 シプリアンさん)
 
 アメリカCBSテレビでは、ペルシャ語のわかるスタッフがインターネットの情報を確認しています。
 
 「できる限りの情報の真偽を確認し、自らの判断で何を放送するかを決めるしかありません」(CBSテレビ外信部部長 シプリアンさん)
 
 ホワイトハウス前で行われたネダの追悼集会では、通りかかった人が足を止め、イラン系アメリカ人たちを激励する姿が目立ちました。
 
 「こんなに現実として迫ってきたニュースは初めてです。現地の人々の感情をツイッターで読んでいると、実際にテヘランにいるような気になります」(通りかかった市民)
 
 たまたま抗議デモの現場に居合わせただけだったとも言われるネダは、今やイラン反政府運動の象徴的存在です。
 
 慎重な姿勢を保ってきたオバマ大統領も反響の大きさを受けて、コメントしないわけにはいきませんでした。
 
 「胸が痛みます。あれを見た人は誰だって何かが根本的に間違っていると感じるはずです」(オバマ大統領)
 
 一方、イラン政府側はネダの死にはCIAが関与した可能性があるという情報を流すなど、アメリカの陰謀説を強調しています。
 
 24年前にイランから亡命し、以来、祖国の改革を訴えてきたシリンさんは、今初めて手応えを感じていると言います。
 
 「これはもはや『ツイッターとフェースブック革命』です」(イラン系アメリカ人 シリン・ナリマンさん)
 
 誰もがインターネットを通じて情報を発信できる時代。受け手となる1人1人に情報を見極める力が求められています。(28日17:42)