きょうの社説 2009年6月28日

◎北陸の景気動向 楽観戒めるコマツの減産
 北陸の景気動向でも「下げ止まり」や「底打ち感」が強調されるなかで、コマツ粟津工 場が今年1〜3月に続き、再び大規模な生産調整に踏み切ることになった。急ピッチで在庫調整を進めたコマツは、春には北陸における「景気回復の先頭集団」(日銀金沢支店)とみられていただけに、さらなる減産は景気の先行きへの楽観を戒める一つのシグナルと言ってよいかもしれない。

 同社は金沢、小松工場でも同様の減産を検討しており、北陸の協力企業への影響も避け られない。日銀金沢支店が6月の景気判断で示した「一本調子でなく一進一退で下げ止まりに向かう」という指摘を象徴する動きとも言える。

 北陸の製造業は全体としては最悪期を脱したとの見方が広がっているが、海外に需要を 依存する企業は輸出先の景気状況に左右されやすく、業種別にみれば生産の持ち直しもまだら模様である。北陸財務局の法人企業景気予測調査では、大・中堅企業で景況感の改善幅が大きくなった一方で、中小企業は小幅改善にとどまり、企業規模で差が広がっている。中小にも薄日が差し込まない限り、景気反転の実感は伴わないだろう。

 コマツ粟津工場は不況による建機需要の急減を受け、3月は5日間の稼働にとどめるな ど1〜3月で大規模な減産を行った。非正規雇用を削減するなど思い切った生産調整を進め、4月以降は全日稼働に戻したものの、在庫は計画通りに減らず、7〜9月に再び本格的な減産に踏み切ることになった。生産部門は7月に10連休、8月は14連休、9月は9連休を設けるという。

 コマツ全体としては中国で建機需要が回復し始めているが、粟津工場の輸出先は東南ア ジアや北米、欧州が多く、それらの地域で思ったほど需要が回復しなかったらしい。

 中国では大型景気対策の効果が表れているが、欧米はまだ厳しく、外需主導の回復シナ リオが描ける状況にはとてもない。企業の設備投資は依然として低迷を続け、来春の採用も抑制基調のままである。景気動向で一進一退がしばらく続くとすれば、経営者の舵取りがまさに問われる局面である。

◎分権で首長連合 パフォーマンスが気掛かり
 大阪府の橋下徹知事らが自治体首長のグループ結成を表明するなど、総選挙を前に首長 の動きが活発化してきた。地方分権を旗印に各党に政策実現を訴えるその狙いは分かるとしても、「地方対中央」の図式を意図的に先鋭化させ、「改革者」をアピールしようとするあまり、パフォーマンス的な振る舞いも見えるのが気掛かりである。

 分権改革は次期衆院選の争点となる重要なテーマに違いないが、一部の首長がこれまで の議論の積み重ねを無視して先走れば国を動かす力も分散しかねない。全国知事会は国と地方の財源配分の見直しや国直轄事業負担金の抜本改革を盛り込むよう各党に要請しているが、同床異夢の状況が鮮明になれば交渉相手の国に足元をみられるだけである。前のめりにならず、地方の結束を固めることを優先させるのが賢明ではないか。

 橋下知事は地方自治体の首長20人規模の新グループを結成し、次期衆院選で支持政党 を表明することを明らかにした。全国知事会や市長会など既存組織の枠を超え、各党に分権を迫る狙いである。橋下知事は国直轄事業の地方負担金を批判し、見直し論議に火を付けた。その並々ならぬ意欲は買えるとしても、分権改革は一筋縄ではいかない難しさがある。

 政府の地方分権改革推進本部が決めた国出先機関改革の工程表では、職員削減目標や組 織の統廃合案は盛り込まれず、分権改革推進委員会の2次勧告から大きく後退した。これ一つ取っても、中央省庁や族議員の抵抗の激しさをうかがわせる。霞が関の強固な岩盤を突き崩すには、地方の結束とともに、首相の強いリーダーシップが必要である。

 そもそも橋下知事の目指す地方分権は端的に言えば道州制である。すでに関西広域連合 をつくる動きを活発化させ、関西州の移行をにらんでいる。だが、道州制は全国知事会でも温度差があり、突っ込んだ議論はなされていない。橋下知事がここにきて各党に道州制の具体的な検討を求めているのは、地方の幅広い声を代弁したものとはとても言えないだろう。