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きょうのコラム「時鐘」 2009年6月28日
世界を駆ける悲報に、ピンとこない人も少なくない。マイケル・ジャクソンと聞いて、「顔は分かるが、曲はさっぱり」という世代である
次々と出たヒット曲にも無関心だったオジサン、オバサンがいる。歌の世界にも「世代間断絶」はある。俳優の小沢昭一さんが「オレたちおじさんには歌がない」と歌うのを聞いたことがある。おじさん世代だけが共感し、ヒットしなかった 恋と別れ、涙と酒、港とカモメ、決まり文句が並ぶ歌を、かつて茶の間のテレビで家族がそろって聴いた。思い返せば、奇妙な光景だった。世代ごとに悩みも恋も夢の姿も違う。いまは、若者たちの身の丈に合うさまざまな歌が流れる。よほど豊かな時代である もっとも、豊かさには影がある。「ポップスの王」の曲は知らなくても、さまざまな奇行や騒動は広く知られている。栄光のスターの悲しい末路という光と影の物語だけは、時代を超えて続く 歌の断絶を嘆く小沢さんは、懐メロや唱歌を愛唱する。寂しいが、それも良しとするか。老いも若きも、独裁者をたたえる歌を強要され、酔わされる人々が、世界にいくらもいる。 |