無保険のため病院に行けず、がんで亡くなった男性が眠る墓を探してたどり着いた納骨堂。事務所で「無縁仏の遺骨はありますか」と尋ねると、職員は「ありません」とすげない答え▼近くの霊園を回った末に再度足を運ぶと「ここでは無縁仏という言い方はしないんです」と少し表情を緩め説明してくれた。「誰にでも家族や知人がいて無縁の人なんていない。ここに来たのも誰かとの縁のおかげでしょう」▼亡くなった男性も家族との縁は切れていたが、最後まで世話をした社会福祉士の女性がいた。ベッドには彼女が贈ったお守りが結ばれていた。安らかな顔の男性を思い浮かべながら供養塔に手を合わせた。【木下武】
毎日新聞 2009年6月28日 地方版