■感想 庵野秀明総監督 摩砂雪, 鶴巻和哉監督
『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破 EVANGELION:2.0』
<まずは徹底した秘密主義をとった本作公開までの制作陣の想いに従い、ネタばれなしのレビュウ>
※ネットでの情報をシャットアウトして、まず劇場へ走ることをお薦めします。進化したヱヴァの最高のセンス・オブ・ワンダーが観られます。
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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版: 破 EVANGELION:2.0』を初日のレイトショーで観てきた。館内は20代~30代の若者で満員。僕らの世代は少ない。
で、まず結論。
とにかくこの映画、日本アニメの最先端、というか奇想映像の世界最北端に位置する素晴らしい完成度。
演劇の世界では、何年か間をおいてシナリオと演出を演出家自らがアップデートし再演する、という姿は一般的である。
一方、映画でのリメイクは、基本、別の監督による再映画化の形がほとんど。脚本と演出と哲学を深化し進化させるという演劇のそれと比べると、パワーダウンするのは否めない。
この『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズは、オリジナルの作家たちが自らの最初のコンセプトを現在の進歩したテクノロジーとスキルで、まさに深化/進化させた超アップグレード作品である。技術はもちろん、前作からのビジネスの拡大(特にパチンコ)により資金も潤沢。庵野監督自らのスタジオ カラーによる自主制作と、クロックワークスという小回りの効く配給会社による公開の時間的制約の少なさ。
これほど環境の整ったリメイクは稀有だろう。
そして作品も稀有な超リビルド作品として、凄い完成度を達成している。
進化したのはオリジナルのコンセプト。
つまり『ウルトラマン』『ガンダム』のフォーマットで、『イデオン』『2001年宇宙の旅』の哲学を超え、さらには『幼年期の終わり』や『ブラッド・ミュージック』、『デビルマン』といった進化SFの傑作群を抜きさる、という庵野秀明監督の野望の具現化。
あの映画版エヴァ『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』、SFとしての到達点をオタク批判で締めくくるという壮大な楽屋オチは賛否両論あるのだけれど、僕は映画作品としてのSFのベスト10に入る傑作と思っている。まだラストまでいっていないが、それの深化を見せられる可能性大。中盤でこの完成度である、この後の二本、制作陣のモチベーションがハイテンションで維持されたら、どこまでの奇想世界に我々は連れて行かれるのか、既に想像の範囲を超えているかもしれない。(ってちょっと大げさですね(^^;))
ただしこれは言える。
当分、ハリウッド映画はこの映画のスペクタクルを抜くことはできないだろう。ここまで複合的統合的に集積化した映像アクションは、とても商業主義でシナリオ
が均一化しているハリウッド映画では無理だろう。
加えて、この映画の繊細な表現をとらえることのできるハリウッド映画人っていったいどの程度いるのだろう
か。
たぶんデヴィッド・リンチやテリー・ギリアムクラスは大丈夫だろう。だけれども既にティム・バートンやスピルバーグクラスでは難しいのではないか。タランティーノでも無理かも。
とにかくSF/アニメ/奇想映画の世界最北端である。
繰り返して書くが、今すぐ情報をシャットアウトして、大画面でこの映像を堪能するために映画館へ走ることをお薦めする。(注. 最低限『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序』だけは事前に観ておくこと) 僕もあともう一回は劇場へ行くと思う。
◆関連リンク
・端材で創る エヴァンゲリオンを創る19
ステンレススティールでヱヴァンゲリヲン零号機を作る。
・鷺巣詩郎『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 オリジナルサウンドトラック SPECIAL EDITION』
09.7/8発売
・高橋洋子, 及川眠子, Bart Howard, 大森俊之, 森大輔『残酷な天使のテーゼ 2009 VERSION』 さわりを聴けます。
1. 残酷な天使のテーゼ (2009VERSION)
2. FLY ME TO THE MOON (2009VERSION)
3. One Little Wish
・ 庵野秀明;摩砂雪;鶴巻和哉『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 (EVANGELION:1.11) [Blu-ray]』
当Blog記事
詳しくは書けないけれど、以前書いた下記の新劇場版への期待は満たされています。
・庵野秀明総監督 『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序
EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE』
旧版は制作陣、特に監督のもろもろの切羽詰った心情がストレートに14歳の主人公に投影されたとかで、10歩進んで20歩下がるような悩みまくりの観たく もない屈折ムービーだった(世間ではそうした部分が受けていたようだけど、僕はそこの部分、評価できない。映画版のラストのアレを描くために必要だったと いう理解もできなくはないけど、、、)。 そこをエンタテインメントとして、今回は成長物語にしてくれたら、(エヴァでなくなる部分は確かにあるけど)、僕は期待したい。
僕はうじゃうじゃしたシンジの世界系描写なんて馬鹿馬鹿しくてどうでもよく、19話「男の戦い」から先、なんで初号機他の暴走がエスカレートしていった大センス・オブ・ワンダーなSF新生物ストーリーが観れないのかと不満に思っていた。なので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』四部作は、そんなワクワクする映画になるのなら、観てみてもいいかな、と思っている。
・アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』CHILDHOOD's END
人類の未来 映像の未来
『幼年期』のクライマックスで現出する無表情な無数の子供たちの異様な姿。このシーンは明らかに映画版『新世紀エヴァンゲリオン』に影響している。
そして『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』は、たぶん『2001年宇宙の旅』を超えて、今のところ『幼年期の終わり』の不気味な進化に最も近いイメージを映像化した作品といえるだろう。たぶんリビルド『ヱヴァンゲリヲン』の最終話が作られるまでは。
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