ユーモラスだったのに、と少々残念だ。下半身が膨張した人気キャラクター「まりもっこり」の関連商品「大仏もっこり」について東大寺(奈良市)が販売中止を求めていた問題で、発売元のキョーワ(札幌市)が先日、販売中止を決めた。東大寺では「信仰対象の尊厳を踏みにじっている」と目くじらを立てていたが、これで両者は和解した格好だ。
が、見ただけで笑えたり癒やされるグッズは、そうあるものではない。元祖まりもっこりは、北海道・阿寒湖に生息するマリモをモチーフに2005年から発売され、プロ野球選手版など800種類以上が登場。フィギュアスケートの安藤美姫選手が携帯ストラップを愛用していたことから人気に火がつき、いまや全国で発売されている。
大仏版だけ、お蔵入りになった形だが、奈良県では昨年、平城遷都1300年(来年開催)の公式キャラクター「せんとくん」に批判が集中した経緯がある。仏様の頭にシカのツノを生やした姿が「気持ち悪い」「仏様を馬鹿にしている」と言われた。が、マスコミに取り上げられるうちに、慣れもあってか今では人気を集めているのだから、世の中、分からない。
そもそも1万2000年前の縄文時代から、男性自身を型どった造形物を子宝や豊作を願う信仰の対象としてきた地方は多い。巨大な“もっこり造形物”をみこしにかつぐ祭りもある。「大仏もっこり」に対しても、もう少し長い目で見て、それでも許せぬなら“もっこり”の度合いを控えめにするなど妥協点を見いだしてもよかったのではないか。
とかく人心がすさみがちな昨今。神様仏様ぐらいは一層、慈悲深くなっていると思いたいからだ。(森岡真一郎)