政治状況に左右されず、着実に進めるべきテーマだ。国が自治体の仕事を法令で細かく規制する「義務付け」の見直しについて政府の地方分権改革推進委員会が中間報告をまとめた。施設を設置、管理する際の基準について原則廃止の方針を打ち出し、今秋に予定する第3次勧告で具体案を示すことにした。
市町村などの保育所が「遊戯室は1人あたり1・98平方メートル以上」とされるなど、施設設置などで国はさまざまな基準を設け、行政の決定権を握っている。中央官庁は見直しに抵抗しているが、画一的な基準の放置は地域の実情に応じた行政の支障となる。抜け道の無い決着に向け、分権委は全力を注ぐべきである。
昨年12月に同委が公表した第2次勧告は、国による義務付けについて4076項目を見直すよう提言していた。00年の地方分権一括法施行に伴い、国が地方に業務を代行させる機関委任事務は廃止された。だが、中央省庁は法令でさまざまな基準を設け、「縛り」を温存した。これを見直すことで自治体は初めて条例制定などを通じ、活発な政策の立案活動ができる。
同委が今月まとめた中間報告は(1)保育所など施設の設置・管理基準(2)国との協議や同意、認可、許可の義務付け(3)自治体による計画策定の義務付け--の3分野について、国が自治体を縛る基準や義務付けを原則として廃止したり、地方の条例に委ねるよう求めた。3分野は4076項目のうち約1000項目を占める。都市の待機児童問題の要因とも指摘される保育所の設置基準など、重点を絞りこむことは理解できる。
気になるのは、具体案をまとめる際に抜け道となりかねない表現がみられる点だ。
たとえば施設の設置・管理基準について中間報告は、一定の場合に国が「従うべき基準」を設定することを認めた。この例外を広く適用すれば、実態は現状と変わらなくなる。
また、自治体の条例に基準を委ねる場合も、国が「参酌すべき基準」、つまり参考指標を設けることは認めた。仮にこの指標に従わない自治体への補助金を国が打ち切れば、実態は強制となろう。補助金を配る際の要綱の見直しなどを、同時に進めることが肝要だ。
全国知事会が与野党の政権公約への要望の筆頭格に「義務付け」の廃止を掲げるなど、地方側の見直しへの期待は強い。国が必要以上に基準を押しつけたがる背景には省益の確保に加え、地方に行政を任せると混乱が生じるという、独善的な思いこみがある。国の意識改革を迫る意味からも、分権改革の中核と位置づけるべき課題である。
毎日新聞 2009年6月28日 東京朝刊