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【新銀行東京】

『旧経営陣』の責任強調 代表ら会見 都の怠慢は認めず

2008年3月11日

記者会見の冒頭に頭を下げる(左から)新東京銀行の奥住良一執行役、津島隆一代表執行役、岡田至執行役=10日午後、東京都庁で

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 「旧経営陣の責任は重い」「隠ぺいがあった」−。元東京都港湾局長でもある新銀行東京の津島隆一・代表執行役は十日、同行の経営悪化原因の内部調査報告について、古巣である東京都庁で記者会見に臨んだ。「都への追加出資要請に至ったことについて、都民のみなさまに心からおわび申し上げます」と冒頭で謝罪したものの、経営悪化の原因は、あくまで旧経営陣にあると強調。監視を怠ってきた都や、設立に携わった自らの責任には言及しなかった。 

 「段ボール数箱分の一つ一つの事実を、正確に積み上げた」

 津島代表は、昨年七月から八カ月間にわたり続けた今回の調査の結果の信頼性をまず強調したうえで、慎重に言葉を選びながら内容を説明した。

 融資を獲得した営業担当者に支給していた「成果手当」については、融資実行から六カ月を超えさえすれば、債権回収が不能となっても年間最大二百万円を支給していた実態を明らかにし、「六カ月たったら(不良債権化しても)不問とは、ほかにあるのなら聞いてみたい」と、ずさんな審査の実態を批判した。

 「極めて責任が重い」と調査報告書で指摘した仁司泰正・元代表執行役について、津島代表は繰り返し言及。「財務のプロで、ガバナンス(企業統治)にも強い。ベストな方と思った」と当初の都側の人選に誤りがなかったことをしきりに強調した。

 津島代表は都庁在職時、都の新銀行設立本部長を務め、銀行の仕組みづくりや旧経営陣の選定に携わる立場にあった。このため設立にあたって都が作成したマスタープランなど、新銀行の事業モデルそのものの問題についても、記者側からの質問が集中した。

 しかし津島代表は「制度設計は間違っていなかった」「経営者がどういう運用をしたかが問題」などと繰り返した。

 都が問題を見過ごしてきたことについては「(都が役員派遣していた)取締役会にデフォルト(債務不履行)の報告はあったが、分かりにくい説明だった」「取締役が数字に強いプロでなかった」と弁護。「(取締役会には)厳格な法的責任は及ばない」と述べた。

 一方で、旧経営陣の法的責任を追及するとしながらも「損害のうち、いくらに、どの経営判断が影響を与えたかについてたどりつくには、さらに検討が必要だ」と述べ、具体的な責任の根拠については、あいまいな説明に終始した。

「心外極まりない」 石原知事

 新銀行東京の会見が始まる十日午後四時前、銀行発案者の石原慎太郎知事は淡々とした表情ながらも「心外極まりない」と記者団に述べて都庁を後にした。

 石原知事は、開業時の経営トップ仁司泰正・元代表執行役について「独断専行があったり反対意見を入れなかったりした」と不信感を表明。「何度か私のところに来たけど、その報告が後になってみると実態と違っていた。残念だ」と話した。

 公表された報告書は十ページの概要版で、十分な説明かと問われると「ことの本質はきちっと記載している」と答えた。

400億円の増資焦点に きょうから都議会質疑

 東京都議会は十一日から三日間、予算特別委員会の質疑があり、新銀行東京の再建計画や増資の是非について本格的な討論が行われる。特に増資額を四百億円とすることの根拠について、石原慎太郎知事は記者会見などで「都議会の討論で明らかにする」などと述べるにとどまり、明言を避け続けている。それだけに同委員会での石原知事の答弁が注目される。都議会各会派は、与党も増資に慎重姿勢だ。

組織全体に問題

<金融ジャーナリストの須田慎一郎さんの話> 初代代表執行役の仁司氏に責任を負わせなければ、都としては四百億円増資の大義名分が立たない。だが、本当に一個人の資質や判断の問題といえるのか。スコアリングモデル審査や組織全体の問題があり、石原知事をはじめ都の責任は大きいが、そこを認めることはできないのだろう。そもそも都がつくった銀行を自らチェックするのは限界がある。つくるべきではなかった。無尽蔵に公金が投入される安心感があり、モラルハザード(倫理観の欠如)が起きるのは当然だった。

 

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