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皇居消火器弾:花火感覚で爆薬7百キロ製造 判決30日

 東京都千代田区で昨年9月、路上から皇居に向け消火器弾が発射された事件の判決が30日、東京地裁で言い渡される。けが人はなかったが、爆発物取締罰則違反(使用)などに問われた元陸上自衛官で灯油販売業、小川俊之被告(34)がひそかに自宅に集めた爆薬の原料は約1トン、製造した爆薬は約700キロ。いずれも国内で過去最大級だ。「爆弾の使用は花火感覚。(みんなに)楽しんでもらおうと思った」。爆弾の規模と想定外の動機がどう裁かれるか注目される。【村上尊一】

 事件は昨年9月18日未明に起きた。小川被告は最高裁そばの桜田濠(ぼり)に面した歩道に止めたトラックの荷台から、黒色火薬200~900グラムを詰め込んだ消火器弾5本を発射したとされる。2本は濠を越えて土手に、3本は水中に着弾した。171メートル飛んだものも。

 濠には時限式発火装置を付けたドラム缶爆弾2個も仕掛けていた。直径40センチ、高さ50センチの小型缶だが、国際テロでも使われた爆薬「ANFO(アンホ)」は36キロと42キロ。小川被告が化学肥料と軽油などを混ぜて自作した爆薬だ。警視庁爆発物対策係で20年以上の経験を持つベテラン係員は「あれほど大規模な爆弾の解体は初めて。(74年に約400人が死傷した)三菱重工ビル爆破事件の10倍以上の威力ではないか。マニアでも本格的な爆弾を作れてしまうのが恐ろしい」と驚いた。

 事件は当初、思想的背景のある爆弾テロの可能性があるとして、過激派事件を担当する公安部が捜査した。だが小川被告は一貫して「都心のど真ん中で目立つし、人がいないから皇居を狙った」と供述し、イデオロギー性は浮上しなかった。

 公判供述などによると、爆弾に興味を持ったのは06年末、インターネットで火薬に関する番組を見たのがきっかけだった。原料約1トンを通信販売で購入。ネットで製造方法を研究し、約540万円かけて約700キロの爆薬を製造した。神奈川県の丹沢山中に泊まり込んで爆破実験を繰り返し、その映像を動画サイトに投稿していた。

 4月28日の初公判で検察は、小川被告のパソコンに保存されていた58回分の実験映像を上映。試射した消火器弾が山林に消えていく様子や川に仕掛けた爆弾が水柱を上げる場面など、試行錯誤しながら爆発力を高めていく過程が映し出された。

 「行動力を示し、世間の反応を見たかった」「(経営する)小川商店の宣伝にもなると思った」。爆発物使用は最高刑が死刑の重罪だが、小川被告は法廷で「たいした罪と思わなかった」とも述べた。検察は「重大な治安妨害」として懲役15年を求刑している。

毎日新聞 2009年6月27日 22時16分(最終更新 6月27日 23時27分)

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