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「住民税も払えない!」……リストラ外資系金融マン凄惨座談会

プレジデント6月27日(土) 14時 3分配信 / 経済 - 経済総合
今年3月までの1年3カ月でリストラされた外資系金融マンは、5000人前後だという。激務だが高収入の“兵(つわもの)どもが夢の跡”とは……。
 リーマン・ショックから10カ月。金融危機は去ったかに見えるが、ひところ内外で騒がれたリストラ外資系金融マンの“生活危機”は去ったのだろうか。そこでリーマン・ショック後にリストラされた5人の外資系金融マンに集まってもらった。彼らの“その後”はどうなったのか。果たして、外資系金融マンに、わが世の春は再び訪れるのか。

投資銀行A●米系金融機関の投資銀行部門に在籍。昨年11月にリストラ対象となって退職。37歳。
投資銀行B●米系金融機関で法人営業を担当。事業法人などの投資意欲減退で業務縮小。昨年12月に退職。34歳。
[ファンドC]●米系投資ファンドの事業縮小で今年2月に退職。知人が経営するコンサルティング会社に転職。42歳。
商業銀行D●欧州系金融機関のプライベート・バンキング部門に勤務していたが、今年3月に事業縮小で退職。45歳。
投資銀行E●米系金融機関で法人営業を担当。今年1月に退職。理由はB氏と同じ。31歳。

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──外資系金融機関のリストラは一巡したといわれています。

[商業銀行D] 日本の外資系金融機関に勤めている人は2万7000〜2万8000人くらいでしたが、昨年1月から今年3月までに、5000人前後はリストラされたといわれています。4月以降は金融市場も落ち着いているので、さらに大規模な人員削減があるとは考えにくいですね。

[投資銀行A] 外資系金融機関のリストラはまだ続くのではないでしょうか。最悪期は脱したと思いますが、少なくとも年内は、金融市場が活性化することはありません。外資系はぎりぎりまでスリム化しますよ。さらなる事業の見直しや人材の精鋭化がもっと進むはずです。

[ファンドC] 同感ですね。私が勤めていた投資ファンドは、不動産投資や企業買収部門を縮小させています。日本の不動産市場は冷え切っているし、これからM&Aなどが活発になるとは考えにくい。日本から撤退する投資ファンドも増えるでしょうね。

[投資銀行B] HSBCが日本株部門と株式調査部門を閉鎖するようですね。株式市場だけでなく、社債なども含めた日本の金融市場全体の魅力が失われ、儲かる市場ではなくなったということですね。あちらの外資系で数十人、こちらの外資系でも数十人といったリストラが続くと思いますよ。


■金融庁の人材募集に殺到した元外資系金融マン

──とすれば、まだ求職中の方は、外資系に再就職することは厳しいですね。

[投資銀行E] 外資系金融機関で人材を募集しているところは皆無に等しいですね。特に私がいたグローバル・マーケッツ部
門(顧客の資金運用のために株や債券、為替などに関連するさまざまな金融商品を提供する部署)は、損失を抱えた顧客ばかりで、顧客に金融商品を売り込みに行ってもまったく相手にされない。外資系のリストラでも、グローバル・マーケッツ部門が一番多いですからね。

[ファンドC] 金融庁が若干名の人材を募集したところ、外資系をリストラされた人たちが殺到したらしいですね。年収数千万円だった人が、500万〜600万円の収入の仕事をずっと続けられるか疑問ですが。

[商業銀行D] まあ、うまく金融庁に転職できたとしても、腰掛けにすぎないでしょうけれどね。景気が回復したら、さっさと辞めて高収入の外資系に移るに決まっていますよ。

[投資銀行A] 外資系金融機関をリストラされたからといって、多くの人は慌てて職探しをするほど追い込まれていないのではないですか。

[投資銀行B] 退職金もなしに放り出されたわけではないですからね。求職中だけれど、なかなか次の仕事が見つからないという人でも、それほど生活には困っていない。

[投資銀行A] 私の場合、4年半近い在籍で退職金は6000万円強でした。昨年の年収は4000万円を下回りましたが、相応の蓄えもあるし、生活には困っていません。ただ、以前のように同僚や友人との食事や酒、洋服代などに何十万円も使うことはなくなりましたが。

[商業銀行D] 小遣いくらいはリストラしておきましょうよ。


■転職後1年未満でリストラ対象に。貯蓄額は250万円。

──高収入の外資系はリストラされても余裕ですね。

[ファンドC] だからクビになっても、誰からも同情されないんですよ。

[投資銀行B] そうはいっても困っている人たちは多いですよ。例えば、リストラされた若手。特に20代や30代前半あたりは厳しい。

[商業銀行D] 数千万円の年収といっても税金などを差し引かれると、手取りは半分近くになるでしょう。若い連中の多くは、高級マンションに住んで輸入車を乗り回し、身につけるものは高級ブランド品と派手な生活をしてきたので、蓄えはほとんどない。

[投資銀行A] 貯蓄していたとしても投資信託、あるいはハイリスク商品で運用していたのがほとんどですからね。みんな損している。

[投資銀行E] その一人が私ですよ。貯蓄は250万円しかありません。昨年の年収は2000万円でしたが、正直、これはまずいなと思いました。

[ファンドC] 何がまずいの? 退職金をもらったんでしょう?

[投資銀行E] 今年の住民税が払えないんですよ。住民税は前年の収入で計算されますからね。ざっと計算したら、今年は200万円近いんです。それに私の場合は、転職して1年も経たないでリストラされたので退職金はありません。家賃が33万円の都心のマンションを引き払って練馬区内の安い家賃の部屋に引っ越しして、2年前に買ったBMWも売り払いましたが、ちょっと追いつかない。社会保険料などもあるし、無職のままではとても生活できないですよ。

[投資銀行B] 輸入車の中古価格は値崩れしていますからね。リストラされた外資系の連中が叩き売っているからだとすらいわれている。

[商業銀行D] 仕事は見つかった?

[投資銀行E] 日系の証券会社の求人に応募して、先日、面接してきたばかりです。かなりの応募があったようで、まだ採用の連絡はありません。不安ですよ。もっと堅実な生活を送ってくればよかったとつくづく思いましたね。

──それは深刻ですね。

[投資銀行A] まあ、外資系の人たちは生活が派手な人たちが多いですからね。20代で1000万円以上の年収になる人がほとんどですから、若手の人たちは、どうしても上司や先輩の影響を受けてしまう。

[投資銀行B] 上司や先輩に勧められて断り切れず、軽井沢や信州に数千万円で別荘を買ったり、ゴルフ会員権を買ったりした部下も多い。どれも値下がりして、売るに売れなくなっています。

[ファンドC] 外資系の場合、人事権は直属の上司が持っているのがほとんどです。上司に嫌われたらクビ。断れない部下も多いでしょうね。重要案件を成功間際になって上司に横取りされて、上司のボーナスだけが増えたなどということも、めずらしくない世界ですからね。

[商業銀行D] 40代の私の同僚は、都内に投資用として高級マンションを3部屋持っているんですが、いずれも塩漬けになっています。投資額は4億円近く、このうち2億7000万円はローンだそうです。毎月の返済額は約250万円。彼もリストラされて、今は無職です。

[投資銀行E] 私の同僚にもいました。自己判断の投資で失敗したならともかく、上司や先輩に勧められた投資で失敗したら悲惨ですよね。文句もいえないわけですから。


■文筆業に飲食店経営、ハローワーク通い。外資系金融マンは前途多難

──金融危機をきっかけに、金融の世界から引退する人も多いようですね。

[投資銀行B] 私はいずれ大学院に行こうと思っていたので、それを実行するつもりです。ある程度の蓄えもあるし、この秋の入学試験に向けて勉強中です。

[ファンドC] いつまでも切った張ったはできませんよ。私はこれまでの経験を生かして、コンサルティング会社で、企業の資産運用や財務面のアドバイザーをやっています。

[商業銀行D] 私もとりあえず求職中ですが、時期的にも、年齢的にも転職は厳しい。ファイナンシャル・プランナーの資格を持っているので、資産家を相手にした資産運用アドバイザーの会社をつくろうかと思っています。うまくいくかどうかわかりませんが。

[投資銀行B] 経済評論家にでもなりたいのか、とりあえず本を出してみたり、経済誌に寄稿したりする外資系出身者も増えましたね。

[ファンドC] かつて勤めていた投資銀行時代に、食べ歩き、飲み歩きが好きだった部下がいるのですが、飲食店をオープンさせるつもりで六本木や西麻布あたりで店舗を探しているそうです。

[投資銀行B] 外資系出身者で、銀座にクラブを出して成功している人がいるそうですね。今では三店持っていると聞きました。

[投資銀行A] 金融の世界から引退するといっても、転職先がほとんどない。今はしかたなしに「引退」といっている人が多いのではないですか。それに「引退」といっておけばプライドも守られる。

[投資銀行E] リストラ後、ハローワークに通っている人もいるようですが、そんなことは口が裂けてもいえませんよ。

── 一見すると余裕があるように見えますが、リストラ外資系金融マンの前途は多難ですね。

[ファンドC] 他の業界に移ったとしても、成功する例は少ないですよ。結局は、金融に関係する仕事に戻ってくるか、そのまま消息不明になるかのどちらかですからね。

[投資銀行A] 野村証券に移ったリーマンの元社員たちは、最初はラッキーだったといわれていました。しかし、恵まれたと思える人はほんの一握りになるでしょうね。すでに社風になじめずに辞めた人もいる。これからは、能力のない人は配置転換などで容赦なく切り捨てられるはずです。

[投資銀行B] 蓄えがたっぷりあるといっても、いつまでも遊んで暮らせるわけではないし、やはり職探しはしなければなりません。今年もリストラが続くとすれば、来年以降、Eさんのような生活状況に追い込まれる人も少なくないのかもしれませんね。

[商業銀行D] 外資系金融マンの転職は、元上司や先輩などからの誘いや紹介などが多かった。今はそうしたツテに頼れません。当分は蓄えを取り崩しながら生活する人が多いのではないですか。いずれプライドを捨てる日がくるはずです。

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経済ジャーナリスト
山下知志=文・構成

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  • 最終更新:6月27日(土) 14時 3分
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