6月その5:煽り映像 さて。 5月の最後の日記で、 ≪煽り映像≫ってのが好きになれない と言う話をしたね。 ≪煽り映像≫っていうのは、要するにPRIDEという格闘技イベントが未だご存命中だった時に、試合前に場内に(放送でもか)流れた両選手の紹介映像でね。 要はこれが、確かにファンの興味や試合への期待感をどんどん煽っていく、なかなかの優れものではあるんだよ。 で、この映像の作り手である佐藤大輔君っていう映像製作者がクローズアップされるようになった訳だ。 で、この件をこの日記にアップするかどうかで、俺は随分悩んだ。 自分の心の内を吐露出来るのが自分のブログ。 でも、それが人間のコミュニケーションをおかしくしてしまったり、色んな問題に繋がって行く現実に対する反感。 で、何回も何回も読み直して、手直しして、これから述べる冒頭文をもって前置きとした上で、以下を読んでいただければ幸いだ。 (1)俺個人の≪煽り映像≫に対する【感想】であって、客観的に観た否定や批判ではないという事。 (2)むしろ、映像そのものの作り込みについては『さすがだなぁ』と感心している事。 (3)佐藤大輔君の人間性を否定したり非難している訳ではないという事。 (4)以上を踏まえた上で、何故俺が『好きになれなくなったのか』の理由を述べるのは、決して批判ではなく、俺の心の中をお見せしてるだけだという事。 では、吟じます!! 俺は吉田秀彦VS小川直也戦まではお見事だと認めていたこの煽り映像って言うのが、それ以降ど〜も、試合の本質の部分とはちょっと外れた、要は観る側の期待感は満たす観客論、視聴者論は持ってるけども、選手側から見た時に、言い方は適切かどうかは解らないけども、悪乗りし過ぎというか、皮肉っぽいというか、競技スポーツの本質とは別の、プラスアルファの部分での価値観としてファンの期待を煽り、評価されるような内容に変わってから、好きになれなくなった。 好きになれなくなっただけで、正しいとか間違ってるとか言ってるんじゃない。 あれが≪PRIDE≫という、いわば≪格闘技村≫の名物になり、ファンはそれを期待する。 それは、少なくとも≪エンタテインメントスポーツイベント≫においては重要な事だ。 大晦日にやった吉田・小川戦の映像なんて、真裏でDynamite!!やってる俺らが観ても、 あ〜、こりゃあ上手いわ・・・・・ ドラマがあるわ・・・・・ っていうか、今までのドラマが、これから起ころうとするドラマと見事に融合しようとしてる・・・・ この映像見た時に俺は、あ〜、今回の大晦日は負けたなぁ〜と思ったもの。 案の定、初めてPRIDE男祭りの視聴率が、Dynamite!!のそれを上回った。 でもね、それ以降、この≪煽り映像≫を観る機会があった度に、俺はこの格闘技界に長く居る人間の一人として、 『んん!? これはちょっと違うんじゃないのかなぁ〜』 と感じる事が多くなって来たんだな。 奇しくも、PRIDE消滅の最後の大会、大晦日の≪やれんのか!?≫(このネーミングもまた、どうかと思うんだけども(苦笑))にK−1サイドから送り込んだチェ・ホンマンと秋山君、二人の試合が異常に盛り上がったけども。 その秋山君と、PRIDE王者・三崎君の試合の煽り映像。 あれは、確かに映像としちゃあ、PRIDEの象徴だったサクちゃん(桜庭和志)に対しあってはならない反則行為を犯した秋山君に対する憎悪の権化みたいな内容で、それが世の中の興味を焚き付け、PRIDEファンというか、要はアンチ秋山(イコール、アンチK−1って事だろ?苦笑)のファンの怒りやボルテージを≪煽る≫意味じゃあ、むしろ悪意さえ感じるけども盛り上げには欠かせなかったろう。 でもな? ちょっと悪意が過ぎやしないかな?と、俺は正直思った。 俺だって、秋山君とは少なからず縁がある人間だから、あの映像見たら正直胸くそ悪くなった。 少なくともそれは、イベントの映像制作としてはファインプレーでも、これからリングで命を懸けて戦うファイターに対するリスペクトの気持ちの欠片もありゃしない。 そこにどんな理由があったとしても、あんな事をやってしまったら、公平なルールの下に戦うスポーツではなくなってるよね?もうその時点で。 テレビの放送で流すだけなら別にして、選手のいる試合会場であれを流すのはどうかな? でも、あれがあって、試合がああなって、あの会場が盛り上がって、向こう側としちゃ大成功だろう。 大会の映像製作を請け負った人間としちゃあ、120点の出来なんだろうね。 でもさ。 秋山君の気持ち。 俺は敢えて言わないけど。 あの映像を作って秋山君を迎えた向こう側、そしてあそこへ自分を送り込んだFEGに対する気持ちな。 もう最初から、映像で秋山君を完全に≪悪≫に仕立てる事で試合を異常に盛り上げ(盛り上がり)、あんな結果になってもう完全に会場全体がトランス状態で、勝った三崎君までがトランス状態で、秋山君に対してマイクを持って投げ付けたあの言葉っていうのは、パフォーマンスとしては、少なくともアンチ秋山派には最高の美酒だったかも知れないけど、秋山君だって色んな思い、反省や後悔、苦悩、くそ重い十字架を背負ってあのリングに上がって、あんな≪失礼な≫歓迎を受けて、で、あんな風に血まみれになって倒れてしまって。 もうそれでいいやんか。 ところが、傷口に更に塩を擦り込む。 試合前から塩擦り込んで、傷開いて更に擦り込む。 もう、あの、倒れた相手に更に馬乗りになってガンガン殴って踏み付けて、っていう、何かこう、人間の尊厳が否定されたような、みんなこんなシーンが観たいのか?っていうような、どうしても個人的には好きになれない、あの総合格闘技のスタイルそのもの。 もう、あの日、あの会場の空気が、あの煽り映像の麻薬みたいな効能と共に、完全に中毒でラリッた様な雰囲気になってたよね。 ま、その話はあくまでも伏線。 で、俺が敢えてこの日記でこういう話をするのは、そんな思い(煽り映像というのをどうしても好きになれない)が決定的になった出来事が去年の大晦日にあったからなんだよ。 去年の大晦日のDynamite!!っちゅうのは、ご存知の通り、決別し、いがみ合ってたK−1と旧PRIDE側がまた協力して制作した大会だ。 要は、主催はK−1(FEG)、制作は旧PRIDEっていう感じなのかな。 で。 これは会場でライヴを観た人しか知らないんだけども、そのDynamite!!で、ムサシと武蔵の試合に対し、こういう≪煽り映像≫が作られた。 要は、何年か前に、フジテレビの某スポーツニュースが(某付いてる意味ないジャンって、画面にはどう考えても三宅さんとウッチーだか平井ちゃんだかにしか見えないイラストが出てるわけよ)、ゲガール・ムサシをして ≪こっちは【倒せる方の】ムサシ!!≫ という≪心無い≫報道をした!!と。 で、それを観た武蔵が激怒した!と煽り映像ではこの戦いへ向けて益々≪煽ってる≫わけだ。 で、さんざん双方のコントラストが浮き彫りになって、何度も何度もそのフジテレビの件がオーバーラップして、VTRの最後の最後に、当の武蔵が、 『え? そうだったんですか?』 と素っ頓狂に答えて、 例の垂木さんのナレーションで ≪武蔵は・・・・知らなかった・・・・!?≫ で、場内に失笑が起きてる訳だ。 これ、確信犯だろ? この件の真相を語ろうか。 以前のフジテレビすぽるとのRRS(ロイヤルリングサイド)のコーナーは、今と違って(今なんてもう、年に数回しかこのコーナーやんないもんなぁ)、隔週でK−1とPRIDE、それぞれの特集を組んで毎週木曜日に生放送してた。 で、PRIDE特集の時には高田氏が出て、K−1の時には俺が出る。 で、PRIDEの週の生放送を家で見てたら、≪こっちは倒せる方のムサシ!!≫と、そう来た訳だ。 おいおいおい、ちょっと待てやと。 そりゃどういう意味だ?と。 ま、確かに、≪武蔵流≫と謳って、ヒット&アウェイで接近したら直ぐにクリンチする彼のスタイルが当時、ファンからブーイングを浴びていたのは事実だからしょうがない。 しょうがないが、それはファンの意見であって、格闘技を報道し応援し育てる立場で、他ならぬK−1の主催・中継もやってるフジテレビさんが、俺も隔週で出てる同じ≪すぽると≫内で、≪こっちは倒せる方の≫とは、おいおい、あんた、ケンカ売ってんのんか?と。 来週はこの俺がK−1としてこの番組に出ますのやで? では≪倒せない方のムサシ≫っちゅうのは一体どこの誰の事を言うてはりますのんや?あん? と言う事になるよね?(苦笑) 報道や表現の自由は否定しないけれども、少なくとも公共の電波で、しかも大会を主催するフジテレビさんがこの表現とはこれ、問題なんじゃないですか?と。 信頼関係の破綻につながりますよ? と、当時この件に対してフジテレビに激怒したのは、実は武蔵じゃなくてこの俺なんだよ。 それが真実。 わかる?この気持ち。 番組に対する怒り。 そして何よりも、武蔵、お前が怒らんかい!!と(苦笑) お前、こんな風に弄られて舐められとるんやぞ!!?? という歯痒い気持ちね。 俺は昔も今も、格闘技界の生活基盤、ビジネスモデルを作ってきた先駆者・功労者であるK−1が舐められるのが一番ムカつくんでね。 その時は、K−1中継のプロデューサーだった同い歳の清原さんが俺に謝罪してくれたので、俺も抜きかけた刀を鞘に戻したんだけどね。 そんな、昔あった小さな事件が、大晦日のあの日にあんな形で甦って、見事に茶化されるとは俺も予想だにしていなかった。 俺にしか解らない皮肉な訳ですよ、これ(苦笑) あの何万人もいる会場の中で、角田にしか解らない皮肉(笑) それとね、PRIDE愛?っていう奴もあったんじゃないのかな? PRIDEシンパによる、無残にPRIDEを切り捨てたフジテレビに対する皮肉なリベンジというかね。 フジテレビの番組で作ったネタをもって、TBS主催の大会でフジテレビを皮肉り、武蔵を、角田を、そしてK−1をも皮肉るというね。 事情を知らないK−1のファンがみたら、 『くそぉ!! そぉなんだ!! 武蔵!! やっちゃってくれ!! ぶっ倒して見返してやってくれ!!』 って、さすが煽り映像!!って息巻くだろうけど、あれ、完全に皮肉られておちょくられてるんだから(苦笑) 解る人には解るよね?(ニヤリ) そこで武蔵がバチ〜ン!!と行ってくれりゃ、俺もスカッとしたんだけどさ(また苦笑) しょうがないよねぇ。 倒されちゃったんだから(目が点) いくら≪お前ケンカ売ってんのんか?≫ って息巻いたところで、 ≪だって本当にそうだもん≫ って言われたら、グゥの音も出ないパーみたいな(苦笑) 何かね、前回kamiproの話をしてたら、そんな事を思い出してね。 恨んだり怒ったりしてるんじゃない。 まんまとしてやられたわ、っていう笑い話で(笑) 正直ちょっとムカつくけどな(笑) ムカつくけど見事な攻撃だ!!って感じで(大笑い) 要はね。 そんなところが評価されてるうちは、メジャースポーツへの道なんて程遠いんじゃないのかなぁ、って思いましてね。 そうすると、スポーツって? あるいはエンタテインメントって? K−1って? 格闘技って? 一体どうあるべきなの? っていう命題にぶつかる。 Kamiproで俺が語ったのはそういう話だっただろ? そしたらフッと≪煽り映像≫の事を思い出してね。 まぁでも、佐藤君は本当に映像の才能がある人なんで。 イベントもそうなんだけど、ファイターの事情考えてたら良いイベントは出来ないってのと同じでね。 ファイターの事考えてたら、観る側にとっての面白い映像って出来ないのかも知れないけど、どうか彼にはそんな、命を懸けて戦うファイターの気持ちもほんのちょっとでもいいから心の隅に留め置いて、これからもファンを喜ばせる映像を作っていって欲しいよね。 そもそも、≪佐藤大輔の作る映像≫でいいじゃん。 あの≪煽り映像≫なんていう言い方は、周りが作ったんだろ? ≪煽り≫なんて、決して品のある言葉じゃない。 佐藤大輔の映像。 それ自体に意味があるんだから。 頑張ってこれからも格闘技界を盛り上げていって欲しいね。 |