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特集ワイド:北朝鮮、3代世襲 悩める在日(2/4ページ)

 時間を50年前に戻す。59年12月、日本から北朝鮮への帰国事業が始まると、10万人近い在日朝鮮人が「地上の楽園」を目指した。当時、詩を書いていた梁さんは同人誌の表紙を<祝帰国船出港>と色刷りにした。一方で、同じ誌上に朝鮮総連の幹部でもある詩人を批判する文も載せた。官僚主義、教条主義への疑問を抱いていた。「高揚していたんです。友達も第1船で帰ったしね。あのころは在日の組織を批判しつつも、おれもすぐ帰ると言ってました。社会主義へのあこがれ、祖国の建設のために、とね。そういう時代でした。うそ八百の講談みたいな金日成(キムイルソン)伝を聞かされましたが、英雄が欲しかったんですよ。希望の星でしたから」

 だが、その輝ける星が色あせる。極め付きは70年代、あっさり息子への権力移譲を決めたことだった。「よくやるなあと思いました。儒教だなあと。そうか、社会主義の看板でだましてたんだと気がつきました」。そして、再びの世襲である。「あまり語りたくないな。いや、正直なところ、在日同士ではコテンパンに言ったりもしますよ。もうだめだとか、バカじゃないかとかね。でも、日本人からちゃかされたりすると腹立つんです。不思議な感情ですよ」

 やるせない表情をした梁さんは、もっとつらい思いをしているはず、と在日作家の重鎮である金石範(キムソクポム)さん(83)の名をあげた。済州島の悲劇を描いた小説「火山島」で大仏次郎賞、毎日芸術賞を受賞している。「ああ、胸が痛い。胸が痛い。どうして……」。言葉を詰まらせる。「2代目が世襲になったときから、あきれるというか、それはね。世襲でもなんでも、長男でも、次男でも三男でも、どうでもいいんだ。軍部が台頭しているでしょ。窮鼠(きゅうそ)猫をかむごとくになったら、大変なことになる。ウソかマコトか戦争をやると言っているんだから」

毎日新聞 2009年6月25日 東京夕刊

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