日本郵政の西川善文社長が宿泊保養施設「かんぽの宿」問題を受け、不動産売却のルール整備などを盛り込んだ業務改善策を佐藤勉総務相に報告した。
西川社長は、既に自らの報酬の30%を3カ月返上するなど処分の内容を総務相に説明している。総務相はこれを受けて西川氏の続投を容認し、西川氏の経営責任追及に幕を引く考えを示していた。かんぽの宿問題は鳩山邦夫前総務相の辞任にまで発展して麻生太郎首相の指導力が問われ、政権へのダメージとなった。与党としても早く決着をつけたかったのだろう。
昨年末、日本郵政がかんぽの宿など79施設をオリックス不動産に約109億円で一括売却することを決め、今年1月、前総務相が異議を唱えた。土地や建物の取得額は約2400億円と巨額で、売却金額や入札の妥当性が疑問視された。
改善策は前総務相が報告を命じていたものだ。西川社長の続投は週明けの株主総会で正式決定するが、有権者、国民の側からすれば何とも割り切れない結末と言わざるを得ない。
オリックス不動産との売却契約の問題性がはっきりしないことが、最大の要因だろう。売却額と取得額の差が大きいとはいえ、不採算施設が多く含まれることや雇用の維持を考え合わせれば妥当との意見もある。
西川社長のほか、高木祥吉副社長も報酬を一部返上するなど他の幹部も処分を受ける。売却の問題性がはっきりしない現状では、何のための処分かよく分からないともいえよう。
業務改善では不動産売却の手続き時に自治体への通知が義務化される。また第三者の視点から日本郵政の経営を監視する諮問会議新設など企業統治強化策がとられ、全国で1万人の利用者モニターを委嘱し定期的に意見を聴く制度も設ける。
日本郵政については障害者団体向けの郵便料金割引制度の悪用、簡易生命保険の保険金不払いといった問題も明らかになっている。これらに関する改善策も盛り込まれた。
続投する西川社長の責務は大きいが、経営体制は変わる。総務相との会談で経営の透明性向上へ外部の人材を会長に起用することになり、社長を支えてきた三井住友銀行以来の「チーム西川」の幹部らも辞任することになったからだ。
西川氏には苦境だろう。しかし、日本郵政はまだ荒海のただ中にいる。業務の透明性確保を最優先に、揺らいだ信頼の回復へ努力しなければならない。
岡山県内で新型インフルエンザの感染が初確認された。患者は快方に向かっており、周囲にも感染者は出ていないもようという。ひと安心である。
患者は米国旅行からの帰国者で、岡山市立市民病院の簡易検査でA型陽性となり、県環境保健センターの詳細(PCR)検査で新型感染が判明した。抗ウイルス薬タミフルを服用し、自宅で療養中という。
国内での発生確認からほぼ1カ月半。この間、世界保健機関(WHO)は警戒水準を最高の「6」に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)を宣言した。一方、国内では感染者の個人単位での全数把握や空港などでの確認作業をやめるとともに、一般医療機関での感染者受診、軽症患者の自宅療養を柱とする「改定版運用指針」を厚生労働省が決定した。
今秋にも予想される「第2波」に備え、重症患者への対応にシフトするねらいだ。新型が弱毒性であることが、当面のこうした措置を可能にしたといえる。岡山県でも、季節性インフルと同様に、感染が疑われる人は一般医療機関で直接受診するなどの運用指針に切り替えた。
だが、油断はできない。感染者は25日現在、38都道府県で1千人を超えた。感染拡大はまだ全国規模で続いているのだ。専門家は、南半球や東南アジアで一気に大流行し、日本へ流入する可能性を指摘する。ウイルスの病原性が強まっていた場合、状況は極めて深刻になろう。
岡山県の調べでは5月末現在、医療体制の整備や弱者対策など独自の新型インフル行動計画を策定している県内自治体は7市町村にとどまっていた。
各地域が実情に合わせた計画作りを急ぐ必要がある。国はそれをサポートするきめ細かい指針を示すべきである。
(2009年6月26日掲載)