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【社説】

派遣法改正 労働弱者を放置するな

2009年6月26日

 日雇いの原則禁止や賃金公開義務など派遣労働者の救済を目指す労働者派遣法改正案の審議が遅れている。失業や低所得に歯止めをかけるには法改正が不可欠だ。今国会での成立に全力を尽くせ。

 この半年間の派遣村騒動はいったい何だったのか。仕事も住む部屋も失った派遣労働者たちが炊き出しに長い行列をつくった。政府は慌てて雇用保険の適用拡大などを決め派遣を含めた雇用対策を打ち出した。

 一年前、二重派遣や禁止業務への派遣など相次ぐ違法行為により事業停止命令を受けていた日雇い派遣大手のグッドウィルは、廃業を表明した。若者や女性たちを低賃金で無保険のまま働かせるという日雇い派遣の実態は、社会に大きな衝撃を与えた。

 派遣法の見直しはこれがきっかけだった。政府・与党は昨年十一月、改正案を国会に提出した。

 柱は(1)契約期間三十日以内の派遣を原則禁止(2)派遣労働者の賃金や派遣会社のマージン率などの情報公開を義務付ける(3)違法派遣があった場合は迅速に処理する−などである。当然、早期成立が期待されたが国会の動きは鈍かった。

 経済界の反発などから与党の腰が重かったことに加え、野党側の対案づくりが遅れたためだ。

 今週に入り民主、社民、国民新の野党三党は改正案を共同で今国会に提出することで合意した。

 合意点は(1)契約期間六十日以内の日雇い派遣を原則禁止(2)製造業派遣および登録型派遣は一部の職種を除き原則禁止(3)違法行為があった場合は派遣先に雇用させるみなし雇用を創設−などである。

 野党側の対案づくりは遅すぎたが、会期はまだ残っている。野党三党は近く改正案を提出する予定という。提出されたら与党は速やかに修正協議に入るべきだ。

 高失業率と求人倍率の低下など雇用情勢の悪化はまだ続く。正社員にも雇用不安はあるが派遣や期間工など非正規労働者たちの方が深刻だ。簡単に解雇されるような雇用形態を放置していいのか。

 現在の労働法制と雇用政策を、労働者保護の原点に引き戻すことが今回の改正の本当の目的である。

 一九八五年に制定された労働者派遣法は通訳などの専門職種に限定されていた。九九年に原則自由化、二〇〇四年からは製造業も解禁された。今回の改正は派遣労働者を擁護する第一歩だ。同時に企業が非正規雇用に頼りすぎた経営を是正するきっかけともなる。

 

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