サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

« 民法上の「雇用」に関する解雇ルール | Accueil | 気持ちの悪さを醸し出すもの »

16/05/2009

脅迫されて仕方なくした約束を遵守しないことはそんなに非難されることか

 日本の刑事訴訟法では,起訴前の保釈という制度はなく,保釈は起訴後に申請されることになります。ただ,この段階では,当該被告人についての公判を担当する裁判官は,起訴状以外の資料を見ることができないので,保釈の可否は別の裁判官がこれを決定することになります。

 で,日本の裁判実務では,多くの場合,保釈のために面接に訪れた弁護人に対し,公判では起訴事実を全部認めるのか,供述証拠を全部同意するのかを尋ね,これらを全部約束しないと保釈決定をしないという運用が行われます。要するに,「早く自由になりたければ,つべこべ言うな」ということです。

 起訴事実を争うからといって罪証隠滅の虞があるとは直ちにいえないし,供述証拠を不同意とするということはその供述者に対し反対尋問をしたいということに過ぎないのでそれも罪証隠滅の虞とは関係がありません。従って,弁護人にこのようなことを尋ね,それについての回答を保釈決定をするか否かの重要な判断要素とすること自体が本来許されないことであり,このような運用自体が「人質司法」を構成しています。

 このような違法な運用を肯定した上で,「保釈面接の際には,『起訴事実は争わず,供述証拠も全部同意する予定だ』と回答して保釈決定を受けておきながら,公判においてその約束を守らない弁護人を非難する弁護士ないし法科大学院教授(刑事法担当)がおられるようですが,身柄を解放するかそのまま拘束し続けるかを決定しうる立場にあることを奇貨として,『起訴事実は争わず,供述証拠も全部同意する」ことを約束させること自体が違法なのですから,そのような違法状態で強いられた「約束」を遵守しないことを非難するのはいかがなものかという気がします。

|

TrackBack

URL TrackBack de cette note:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13499/45026657

Voici les sites qui parlent de 脅迫されて仕方なくした約束を遵守しないことはそんなに非難されることか:

» 保釈 [保釈]
なんでも「保釈」とか云う制度があってかなり悪そうな政治家などでも、起訴されているのに「保釈」とかで大手を振って選挙活動したりしています。 「保釈」と「保釈金」はどんなものか調べてみました。 [Lire la suite]

Notifié le le 16/05/2009 à 04:29 PM

» 刑法の一般予防機能と被疑者の人権の緊張関係 [モトケンブログ]
 このエントリの内容は、「理想論と現実論と制度設計論」の私のコメントを転記したト... [Lire la suite]

Notifié le le 29/05/2009 à 01:34 PM

Commentaires

Poster un commentaire