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22/05/2009

一人で200時間立ち会う必要はない

 捜査機関により被疑者の取調べに立ち会う権限を弁護士に与えよというのが日弁連の公式見解なので,これを荒唐無稽な要求であるかのように言いつのる弁護士というのも何だかなとは思いますが,日弁連は会員が異論を唱えることに寛大な組織ですし,いわゆる「ヤメ検」の中には「意識は未だ検察官」という方も少なくはないので,まあやむを得ないといったところでしょうか。

 ところで,矢部善朗・創価大学法科大学院教授は,そのブログのコメント欄の中で,次のように述べています。

 パブ弁!さんのように警察は何をするかわからないという認識を前提とし、また現在可能な接見では弁護人として被疑者の自供の任意性の有無を確認することが困難な場合が多いということであれば、「任意性が完全に担保されている」と言えるためには、全ての取り調べに立ち会ってその状況を認識している必要があると思われます(実は、警察不信を前提にすればこれでも十分ではありません。)
 パブ弁!さんは、20日間の勾留期間中の取り調べの全てに立ち会うことが可能ですか。

 「モトケンブログ」らしい「論理」展開だとは思いますが,一般的には「難癖」と表現しても良い類のものだと思います。

 まず,20日間の勾留期間中,毎日十数時間も被疑者を取り調べるということを捜査機関に認める必要はありません。もちろん,捜査機関の見込み通りと異なる供述を当初行う被疑者について何が何でも捜査機関の見込み通りの供述をさせようと思えば,捜査機関は同じ内容を(被疑者が自分たちの見込み通りの供述をするまで)何度も何度も繰り返すことになりますので,これでも時間は足りないかもしれませんが,捜査機関の見込みに被疑者の供述調書を無理にでもあわせるという手法自体が問題です。被疑事実やその周辺事情に関する被疑者の「認識」を問いただし,それを書面化するということに「取調べ」の機能を限定すれば,取調べに要する時間はそれほど長時間である必要はありません。

 また,被疑者弁護は,弁護人一人で行う必要はありません。むしろ,複数人で行う体制を早期に組むことが望まれます。複数人で弁護団を組めば,一人あたりの時間的な負担は当然のことながら少なくなります。また,被疑者公選及び国選弁護人の報酬水準が,それを専業で行ったとしても事務所の維持費用を捻出した上でなおも同世代の大卒男子の平均所得程度の所得水準を確保できる程度にまで引き上げられれば,刑事弁護専業の弁護士が被疑者の事情聴取に立ち会うことは何ら「負担」ではなくなります。「国からの受注をフルにこなしていたら事業所を維持できない」という不自然な現状を改善の見込みのない所与の前提としてしまうのはいかがなものかと思います。

 もちろん,このあたりは費用対効果をどう捉えるのかという問題であり,「間違った見込み捜査にあわせて虚偽自白を強いられて,無実の罪で死刑にされたり長期にわたり身体の自由を奪われる羽目に陥ったりして人生をぼろぼろにされる人の割合は全体からすればごく少数なので,その人たちには「運が悪かった」と諦めてもらうことにして,これまで通り「とても安上がりの司法」を維持していこう」という考え方もあり得なくはないでしょう。ある種の保険だと思って,被疑者公選及び国選弁護専業の弁護士が存続しうる程度にその報酬水準を引き上げて,被疑者取り調べにフルに立ち会えるようにした方がよいと私は思いますが。

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