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23/05/2009

被疑者の取調べへの弁護人の立会い権限が認められることにより節約できるコスト

 誰にも制止されることなく被疑者に対してやりたい放題のことをする事実上の権限を捜査機関に与え,かつ,取調べの際に捜査機関が被疑者に対してどのような「働きかけ」を行ったのかを録音・録画するなどして客観的に証拠化することもしないことにより,その被疑者が実際に真犯人であるか否かにかかわらず,捜査官がその推測を被疑者による一人称形式で文章化した書類に署名・押印せざるを得ない状況を作り出した上で,そこに記載されている内容が自分の記憶内容と異なるということを被告人が主張した場合には,取調べの際に捜査機関が被疑者に対してどのような「働きかけ」を行ったのかについて,公開の法廷において,被告人及び担当取調官の証人尋問を行い,どちらの証言がより信用できるのかを裁判官に判断させる現行方式では,その証人尋問のために,裁判官,裁判員,書記官,廷吏,護送官,検察官,弁護人,被告人,当該捜査官等の時間が費消されることになります(さらに,検察官,弁護人,当該捜査官については,その証人尋問の準備のためにも相当の時間を費消するのが通常です。)。そして,それは,裁判官等の「人件費」という「経済的なコスト」に転換されていきます。また,虚偽内容の自白を強いられた被疑者がその自白調書に大いに依存した起訴をされて身柄を拘束され続けることの社会的なコストだって無視できません。そのことと比較したときに,捜査機関による被疑者の取調べに弁護人を立ち会わせることのコストというのはそれほど大きいといえるかどうか疑問です。

 また,捜査機関による被疑者の取調べへの弁護人の立会い権限が認められた場合に,被疑者公選の場合にも,実際に立ち会った弁護人に立会時間に応じた正当な報酬が支払われることは望ましいですが,「そのような報酬支払いが認められそうにないから,捜査機関による被疑者の取調べへの弁護人の立会い権限を認めるべきではない」というのはいわば本末転倒です。被疑者国公選制度が創設される見込みがなかった当時,「のような報酬支払いが認められそうにないから,捜査段階での弁護士による刑事弁護なんて非現実的なことは認めるべきではない」というのとパラレルな暴論です。実際には,捜査機関による被疑者の取調べへの弁護人の立会い権限を認めるべきではない私選弁護を選任できる被疑者だってそれなりに存在するわけですし(20日×5時間×2万円=200万円と模式的に計算してみるとして,その金額って,例えば裁判員対象事件で虚偽自白を強いられて起訴された場合の経済的損失と比べたら,多くの人にとって,十分に「ペイ」する金額です。また,捜査機関が資金力の乏しい人物をねらい打ちにして犯人に仕立て上げようとしている場合には,弁護士会として,複数の弁護人を委員会派遣することだって可能です。そういう意味では,裁判所が,「捜査段階で弁護人の立ち会い無しに被疑者の取調べが行われた場合,『真犯人でなければ自白しない』という環境が整っていないから,公判においてその証拠能力が争われた場合には,その自白調書に証拠能力は認めない」と判示してしまえば,捜査機関による被疑者の取り調べに立ち会えるように弁護士側が体制を組むことは,十分に可能でしょう。

 被疑者の取調べ段階における弁護人の立会権を含む「取調べの可視化」問題は,民主党が中心となってこれを実現するための刑事訴訟法改正法案を議員立法として提出し,自民党と公明党がこれに反対してこれを潰すということがこの数年繰り返されています(2007年以降は,「取り調べ可視化と全証拠リスト開示」を柱とし,「弁護人の立会権」を落とした改正案とすることで,自民党・公明党の理解を得ようとしているようですが,公明党は,そのような譲歩された提案にすら反対し続けているようです。)。永年権力を握っていた側からすると,「冤罪を生み出す余地」を残しておくことはそれなりに有益なのだろうと思ってしまいます。

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