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27/05/2009

弁護士が取調べに立ち会っていたら,さすがにこんなことはいえなくなってしまう

 こちらに,京都地決平13・11・8判時1768号159頁の解説が掲載されています。これによれば,担当の警察官は,犯行を否認する被疑者に対して,次のようなことを述べて自白を迫ったのだそうです。

「・・・Bというポン中極道のすごいやつがいる。お前とこの近くにおるんやぞ。やってへんとか、そんな眠たいような話を続けていると、お前のとこには小学生の子供がおるわな。取り返しのつかないようなことになる」。「自分は警察の中で影響力があって、暴対や生安にも顔がきく。暴走族をやっていたこともあるし、そのつてもある。ポン中極道にハトを飛ばすことは朝飯前や」。「・・・おれらは権力を持っている。京都府警三万人という味方もいるし、後ろには検察庁もついていて、正検も専任が六人もいる。いわばお前は自転車で、わしらのダンプカーと衝突するみたいなもんや。所詮勝ち目はないし即死や」。

 このような方法を用いてまで自白を強要とする精神の中には,「真犯人(のみ)を処罰したい」というのではなく,「自分が逮捕した被疑者を処罰したい」というものがはっきりと現れています。そこまでしないと「自白」が取れない場合,その者が真犯人でない蓋然性が高い(特に,自白調書がなければさすがに有罪の判決が書きにくいだろう程客観証拠に乏しいのであれば,なおさらです。)のにもかかわらず,たとえ真犯人でなくとも自白調書にサインせざるを得なくなる方法を使ってまで,既に逮捕した被疑者を処罰しようとしたのです。

 そして,この事件は担当裁判官がたまたま被告人の証言に聞く耳を持つ人だったからこそ,自白調書の任意性が否定されたわけですが,取調べ状況の全面録音・録画が義務づけられていない現状では,取調べ段階で警察官からそのようなことを言われたことを客観的に立証する術はありませんから,取調べ状況に関し被告人と警察官との間で「言った,言わない」の水掛け論になったら公務員たる警察官の意見をより信用する裁判官にあたった場合には,そのような脅迫を受けてなされた自白であるということは闇の彼方に葬り去られてしまい,真犯人でなくとも処罰される状態が維持されることになります。

 取調べ状況はその一部を録音・録画すればよく,全面録音・録画を義務づけることは妥当ではない,と公明党は頑強に主張するのですが,なるほど,

「・・・Bというポン中極道のすごいやつがいる。お前とこの近くにおるんやぞ。やってへんとか、そんな眠たいような話を続けていると、お前のとこには小学生の子供がおるわな。取り返しのつかないようなことになる」。「自分は警察の中で影響力があって、暴対や生安にも顔がきく。暴走族をやっていたこともあるし、そのつてもある。ポン中極道にハトを飛ばすことは朝飯前や」。「・・・おれらは権力を持っている。京都府警三万人という味方もいるし、後ろには検察庁もついていて、正検も専任が六人もいる。いわばお前は自転車で、わしらのダンプカーと衝突するみたいなもんや。所詮勝ち目はないし即死や」。

等と言って被疑者を脅して,(被疑者が真犯人であろうとなかろうと)捜査官の組み立てたストーリーに沿って「自白」を行う精神状態に追い込み終わってから録音・録画することにすれば,「冤罪を生み出す余地」はなお維持できるわけです。

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Notifié le le 29/05/2009 à 12:55 PM

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