ご冗談を
矢部善朗創価大学法科大学院教授が次のように述べています。
検事は、常に辣腕弁護士ならどのような弁護活動をするだろうかということを考えて仕事をしています。
多くの弁護士は「ご冗談を」と思ってしまうのではないでしょうか。あるいは,検察の主張立証の甘さを救済する判決を下すことを余儀なくされている刑事裁判官も「ご冗談を」と思っているかもしれません。
判決言い渡し直前に真犯人が明らかになったために無罪判決が言い渡された宇和島事件(松山地方裁判所宇和島支部平成12年5月26日判時1731号153頁)では,
平成一一年一月八日午後零時一四分ころ、愛媛県宇和島市栄町港三丁目三〇三番地所在のえひめ南農業協同組合本所において、犯人が、ボールペンを用いて、同所備え付けの貯金払戻請求書用紙の口座番号欄に「2243952」、金額欄に「500000」、おなまえ欄に「甲野N子」と記入し、そのお届印欄に「甲野」と刻した印鑑を押捺した上、同組合本所の窓口係員丙山M子に対し、普通貯金通帳とともに提出して普通貯金の払戻しを請求し、丙山から現金五〇万円の交付を受けたという事実
関係の下で,「貯金払戻請求書の口座番号欄、金額欄及びおなまえ欄の各記載」が被告人の筆跡によるものとの鑑定結果も得られず,「犯人が五〇万円の払戻しを受けた当時の店内の様子は防犯ビデオに録画され、その画像中に犯人の姿が撮影されているが、その画像は不鮮明であるため、これらの証拠のみから、撮影された犯人が被告人と同一人物であるかどうか、判断することができない」等の事情があっても,警察官が、机を叩くなどしつつ、「証拠があるんやけん、早く白状したらどうなんや。実家の方に捜しに行かんといけんようになるけん迷惑がかかるぞ.会社とか従業員のみんなにも迷惑が掛かるけん早よ認めた方がええぞ。長くなるとだんだん罪が重くなるぞ。」等と述べるなどして勝ち取った自白調書を頼りに,検察官は起訴をしてしまったわけです。
犯人が書き入れたことが明らかな記載についてその筆跡が被告人のものであるとの鑑定結果がないというときに,どんな敏腕弁護士でも,そんなことには気がつかないと考えて仕事をしていたのでしょうか。
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被疑者・被告人の手続的権利の保障とは、被疑者・被告人が捜査及び刑事裁判において... [Lire la suite]
Notifié le le 02/06/2009 à 11:53 PM
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