サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

« 「確実な証拠がなく、頑強に否認する被疑者」が無実である可能性に思いを馳せない捜査官 | Accueil | 飯塚事件を忘れるな »

05/06/2009

豊穣な認識を有する捜査官は,客観証拠の乏しさなど気にしない?

 足利事件については,とかくDNA鑑定の進歩という点が語られがちですが,この年表からもわかるとおり,そもそも筋が悪い事件です。

 そもそも客観的な証拠がないのに菅家さんを犯人性が高いと考えたのは,

  1. 「子供を見る目が怪しかった」という証言があった
  2. 軽い障害があった
  3. 血液型は犯人と同じB型であった
  4. パチンコ好きだった。

という程度のものでした。

 この程度の根拠でも,捜査官らの豊穣な認識の下では,「客観的証拠の有無と犯人性の高低は必ずしも相関しない」(by 感熱紙さん)ということだそうなので、ここでも,上記程度の客観証拠でも,捜査対象をほぼ菅谷さんに絞り込み,捜査令状無しで室内を調査したり,勤務先へ聞き込みを行ったり,逮捕まで約1年間も尾行し続けたりし,菅家さんが解雇される要因を作ったりしたのです。その後も,早朝に令状無しで菅家さんを警察署へ連行し夜中まで取り調べて自白に追い込むなど,被疑者の手続的権利を無視し続けたわけです。いくら刑罰法規の一般予防機能を守るためだとはいえ,ひどすぎると言ってしまうと,また某所で集中的な個人攻撃をされそうです。

 警察は,先行する同種事件についても,客観証拠に乏しいながらも,「厳しい取調べ」によって菅家さんを自白に追い込んだわけです。「客観的証拠の有無と犯人性の高低は必ずしも相関しない」(by 感熱紙さん)という認識を有している捜査官らは,その被害児童が午後2時過ぎに同い年くらいの男の子と渡良瀬川の方へ向かって走り去って行くのを目撃したという供述をした近所の食堂の店員に対し,その供述を変更するより強く求め,その記憶と異なる員面調書,検面調書を作成させたわけです。さすが,「第三者の目撃証言」との矛盾と犯人性の高低は必ずしも相関しないというわけです。

 この先行事件については結局起訴されなかったのですが,同一地域の同種事件について,同様に自白が得られたにもかかわらず,アリバイが成立してしまっているのですから,(その先行事件を含めて真犯人が別にいる蓋然性の高さを考慮して)本来はここで引き返すべきだったわけですが,もう1年も菅家さんが真犯人であるという前提で捜査態勢を組んでしまったので,今更引き返せなかったのでしょう。まあ,この程度の証拠資料だけで起訴しても,最新のDNA鑑定で菅家さんがほぼ100%無実であるということが示されるまでは,裁判官は「自白も信用できる」としてあっさり有罪判決してくれるわけですから,起訴を躊躇する理由なんて何一つなかったわけです。

 ただ,これだけのことをしても,高裁判決の約2カ月後に,また隣接地で同種の犯行が行われてしまったので,折角被疑者の手続的権利を奪って自白調書を作成し起訴→有罪に追い込んだというのに,一般予防機能は果たせなかったのではないかという気がします。

【追記】

 矢部教授は,そのブログのコメント欄で,

 本件は、小倉弁護士が言っている「ヤマ勘捜査」の対極にある事件です。
 当時のDNA鑑定を絶対視していた警察・検察・裁判所は、たとえ自白がなくても、客観証拠が極めて強固な事件として確信をもって起訴し、有罪判決を宣告したことが想像されます。

と仰っているようです。「100人に1〜2人はいる」程度の当時のDNA鑑定に飛びついたのは,「ヤマ勘捜査」の賜物のように思われますが。

|

TrackBack

URL TrackBack de cette note:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13499/45238638

Voici les sites qui parlent de 豊穣な認識を有する捜査官は,客観証拠の乏しさなど気にしない?:

Commentaires

Poster un commentaire