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09/06/2009

般公開されていないはずの捜査情報が流出する経路

 矢部善朗創価大学法科大学院教授は次のように述べています。

 小倉秀夫弁護士は、この問題について、「取調べを録画したビデオは一般公開されるわけではない。」において

だって,取調べの全面録音録画の義務化論者だって,録音録画したものを一般に(あるいはマスメディアに)公開することまでは主張していませんから。

と言ってプライバシー侵害の心配がないかのように主張しています。

 たしかに手続上は、一般公開など予定されていません。

 しかし、一般公開されていないはずの情報が一般(例えばマスコミ)に流出することなど珍しくもなんともありません。

 全面録画した情報をどのようにして誰が用いるのかについても議論の余地があります。

 弁護人に複製を渡すというのであれば、弁護士事務所の情報管理体制が問われます。

 信頼できる弁護士ばかりとは限りません。


 取調べの際に被疑者が語った内容が外部に流出する危険に関していえば,被疑者が自白に転じるまでの過程の取調べ状況が録音・録画されることによって格段に高まるわけではありません。プライバシー情報に関していえば,被疑者が自白に転じた後も被疑者の口から語られ得るものですし,現在の運用では被疑者の供述調書に被疑者やその周囲の人物に関するプライバシー情報が多数掲載されています。そして,それらの調書については,その謄写を申請する権利が弁護人に認められており,よほど節約好きの弁護人以外は謄写した調書を事務所に持ち帰って訴訟準備にあたります。しかし,「弁護士が調書を横流しする危険があるから,被疑者を取調べた結果を調書化するのはやめよう」という意見はとんと聞きません。

 それなのに,プライバシー侵害の危険を,被疑者が自白に転じるまでの過程の取調べ状況が録音・録画された場合の固有の問題のように誤解させるような発言をするのはいかがなものかなあという気がします。今日パソコンで作成され,パソコン内に原文が蔵置される供述調書の方が,テープ上に録音・録画される過程の取調べ状況の音声・影像より,よほど流出する危険が高いのですが。

 それらの調書に記載されている一般公開されていないはずの情報をもっとも意図的に流出されているのは,捜査機関側です。公式の記者会見で発表されたものであれ,非公式にリークされたものであれ,プライバシー権を侵害していることには代わりがありません。不思議なことに,プライバシーの問題を強調して被疑者が自白に転じるまでの過程の取調べ状況の録音・録画に躊躇してみせる人々の大部分は,捜査機関による恣意的な被疑者のプライバシー情報の開示については,特段の問題を感じない傾向があるようです。

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Commentaires

>それなのに,プライバシー侵害の危険を,被疑者が自白に転じるまでの過程の取調べ状況が録音・録画された場合の固有の問題のように誤解させるような発言をするのはいかがなものかなあという気がします。

というのはいつもの誤読曲解ですか?
私は、固有の問題または固有の問題だと誤読されるような記述はしていませんが。

Rédigé par: 矢部善朗 | le 09/06/2009 à 08:34 AM

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