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11/06/2009

被疑者=真犯人の場合だけを想定せよといわれても

 取調室で語られたことのうち,何が調書に記載され何が記載されないかについて,必ずしも被疑者にコントロール権がない以上,取調べ過程の全面録音録画の義務化によって調書に記載されていないことを弁護人に知られることが,調書に記載されている内容が捜査官経由でマスメディアにリークされて全国報道されることとと比べて,被疑者のプライバシー権侵害の度合いが大きいとはいえないように私には思えます。

 尤も,捜査機関側が恐れているのは,取調室で被疑者が何を語ったのかではなく,取調官が,どのような口調で,どのような表情で,どのような身振りを交えて,何を語ったのかが弁護人に知られてしまうことでしょう。だから,被疑者が希望すれば「雑談中」は被疑者の声だけ記録されないシステムを採用するなんてことに仮になったら,それはそれで何らかの理由をつけて反対するのだろうなあと思ったりします。

 また,被疑者=真犯人であることを前提に,「司法取引」が認められれば,捜査機関側としても被疑者が後に罪体を争うことを想定しなくとも良いので捜査を簡便にすますことができるようになりその結果実刑が想定されない事案では早期の身柄釈放が可能となる(「司法取引」が認められないと,実刑が想定されない事案でも,勾留延長してまでの長期の身柄勾留をせざるを得ない)みたいなことを言って,「司法取引は被疑者のためにも有利な制度だ,これに反対する弁護士どもは怪しからん」みたいなことを言う人もいるようですが,その被疑者が真犯人でないときにそれがどう機能するのかを想定しない議論って,刑事訴訟手続に関する議論としては,そもそも失格なのではないかという気がします。その提案というのは,被疑者が無実の場合にはこのような弊害が生じますね,みたいな反論をされると,俺はそんなことはいっていない,誤解だ,誤読だ,捏造だ!と言い出す人もいるようなのですが,その被疑者が真に有実なのかそうでないのかを確実に判別して前者に対してのみ「司法取引」を持ちかけるということはあり得ないわけですから(そもそも,罪体が成立するかどうかを慎重に捜査する手間を省くために「司法取引」を行うというのだから,その時点で有実/無実を確実に見抜けているはずがありません),その提案は,被疑者が無実の場合にも当然適用されるものとして反論をするのは「藁人形叩き」でも何でもない,というのが普通の感覚かなあと思います。

 といいますか,その人が所属する弁護士会で,「司法取引を認めれば,軽微な犯罪の被疑者の身柄が早期に釈放されることを見込めるのだから,うちの会としても,刑事訴訟法を改正して,身柄を保釈する代わりに罪体について争う権利を放棄してもらう司法取引制度の早期導入を求める決議をしよう」と働きかけても,同じように,「で,被疑者が無実の場合どうするの?」っていう反論が来るのではないかと思ったりします。

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