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24/06/2009

渡辺直樹弁護士「民事訴訟における誘導尋問の研究」より

 今年も株主総会が何事もなく終わりましたので,渡辺直樹弁護士による「民事訴訟における誘導尋問の研究」を見に,弁護士会の図書館に行ってきました。

 渡辺直樹弁護士による上記連載の第2回「誘導尋問の意義・種類及び誘導尋問がなされる場合」法律のひろば2005年6月号74頁以下には,「『イエス』『ノー』の一言で答えることができる質問」について,次のような記述があります。

 このような質問も,前述の質問と同様,尋問者から答えるための情報が提供されていて,証人はこれに対して「はい」「いいえ」を述べるだけである。本来は証人が裁判官に対して情報を提供すべきであるのに,誘導尋問においては,実際には尋問者が情報を提供して,証人には「はい」「いいえ」とのみ答えさせることによって,問答全体としては形式的には証人が答えた情報として裁判官に提供させるものである。

 とは言え,誘導尋問になるか否かは微妙であり,言葉の調子,イントネーション,強弱などにより左右されうる。例えば,「あなたは彼を殴りましたか」という質問に対しては「イエス」「ノー」いずれの答えも暗示されていないため誘導尋問とならないが,「あなたは彼を殴りませんでしたよね」という質問は「殴りませんでした」という答えを暗示しているため誘導尋問となるのである。

 このように「『イエス』『ノー』の一言で答えることができる質問」が誘導尋問となるか否かは,「イエス」「ノー」以外の答えがあり得るか否かではなく,本来は証人が裁判官に対して提供すべき情報を尋問者が提供してしまっているか否か,言葉の調子,イントネーション,強弱などにより尋問者が特定の答えを暗示しているか否かで判断されます。

 渡辺直樹弁護士は,さらに,「二者択一形式ではあるが,質問に答えを暗示する質問」との項目を立てた上で,

 二者択一の質問,例えば,「彼はあなたを殴りましたか,殴りませんでしたか」という形式の質問は肯定・否定両方の答えが提示されており,どちらか一方の答えを暗示していないから原則的には誘導尋問にならない。

 しかし,このような質問形式をとりながらも質問内容自体に暗示を含んでいるもの,例えば,「彼はそのときあなたの肩を左手で押さえ,右手であなたの左の頬を殴ったのですか,殴らなかったのですか」という質問は,そのような態様で殴ったという答えを暗示しているから誘導尋問と評価すべきである

としています。「彼はあなたを殴りましたか,殴りませんでしたか」という形式の質問は,「彼はあなたに何をしましたか」という質問と比べたときに「彼は私を蹴りました/頭突きしました/包丁で私の腹部を刺しました」等の回答を除外するという意味で回答の範囲を限定しているわけですが(「彼」が尋問者を単に蹴り倒していた場合には,とりあえずの回答は「殴りませんでした」というものになります。すなわち,ここでは,尋問者は,何らかの有形力の行使があったか否かではなく,殴ったかどうかを「閾値」に設定しています。),これは,原則として誘導尋問にはあたらないと評価されているわけです。

 このような法律家の間の常識的な考えを前提とするときは,ある提案に「無条件で賛成しますか」という質問は,「はい」「いいえ」の閾値を「その提案に無条件で賛成するか否か」に設定し,回答者が「特定の条件が満たされるならば賛成する(その条件が満たされない限り賛成しない)」という場合には「いいえ」と答えるべきものとしていたとしても,イントネーション,強弱などにより特定の答えを暗示するなどの特定の事情がない限り,誘導尋問にはあたらないと評価することになります。

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Voici les sites qui parlent de 渡辺直樹弁護士「民事訴訟における誘導尋問の研究」より:

» 小倉秀夫弁護士のための誘導尋問講座 [モトケンブログ]
 小倉秀夫弁護士が、またまた誘導尋問に関するエントリを書いていますが、いまだに誘... [Lire la suite]

Notifié le le 25/06/2009 à 12:33 AM

Commentaires

 なるほど、小倉先生がブログに書いた「野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか? 」という質問が誘導尋問かどうかを判断する場合には、イントネーション,強弱などを考える必要があるということですね。
 どうすればブログに書いた文字のイントネーションや強弱を判断することができるのでしょうか?
 できませんよね。
 文字表現における質問についての「特定の答えを暗示するなどの特定の事情」というのはどういうものなのでしょうか?
 もし、それまでの議論の経過も「特定の事情」に含まれるのであれば、小倉先生の質問が誘導尋問であることは、小倉先生の説明を前提にしても明らかだと思います。

Rédigé par: 矢部善朗 | le 24/06/2009 à 03:02 PM

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