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25/06/2009

「総論賛成,各論反対」という総論の押しつぶし方

 ある提案に「無条件で」賛成するかどうかというのは,「はい」「いいえ」の閾値を高めに設定する機能しか有していないのであって,どちらかに誘導するものではありません。特に,既に縦書きレベルで法案が作成されて議会に上程されている段階で,「理念としては反対はしないが,むにゃむにゃ」みたいな話をされても,なんだかなあという感じがしてなりません。

 矢部教授は,

 理念としての取調べの可視化に賛成するかどうかの問題とその具体化としての法案に賛成するかどうかの問題は別問題です。

 理念としての取調べの可視化は1つの理想ですが、それを制度化するとなると刑事司法の別の制度との矛盾の調整やバランスを取る必要が生じますから、理念としての賛否とその理念をどう制度化するかは区別して考えなければなりません。

述べるのですが,被疑者段階での取調べの全面録音録画の義務化を推進しようとする人々は,現在捜査機関側に相当有利になっている実情を少し被疑者側に有利に変えていこうという志向を有しているわけですから,被疑者段階での取調べの全面録音録画の義務化を制度化するにあたっては,その分,別の方法で捜査機関側に有利になるような制度を設けることでバランスを取れというのは,一般的な全面録音録画義務化推進論とは異質であるということができます。

 個人攻撃をしている暇があったら,野党共同提案にかかる刑事訴訟法改正案のどこをどう直せば賛成できるのかを示せばいいのに,と思ったりはします。とりあえず,私が知る限り,現実に縦書きレベルで起案されているもので最も完成度の高いものが既に参議院を可決している野党共同提案だったから,たたき台として用いただけで,より完成度の高い改正案があるというのであれば,それを提示していただければよいと言うだけのことです。建設的な議論って,そんなものでしょう?「Yes」の閾値を「100%」に引き上げたからって,「No, but」がいえなくなるわけではないことくらいわかっているでしょうに。

 まあ,理念としては反対しにくいけれども,そのような制度ができると困ると言うときに,総論としては賛成して見せつつ,些末的な問題を針小棒大に表現することで,全体を押しつぶそうという手法は,古来よりよく用いられるものであるとはいえ,何だかなあと思ったりはします。

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» 取調べ可視化の意味について [モトケンブログ]
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Notifié le le 26/06/2009 à 07:21 PM

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