--- パソコン通信からインターネットの世界へと移ったのはいつ頃ですか?
「インターネットに触れるのは95年頃なんですが、当時はまだサイトもほとんどなく、僕自身はその後も6~7年ぐらいはニフティサーブがメインだったと思います。
だからインターネットの黎明期はあまりよく知らないんです。その間にパソコン通信は衰退期をむかえ、どうしたんたんだろうと思うぐらい急激に閑散としていったことは覚えています。僕自身は寂しいけど、仕方ないとあきらめてもいました。
会社を辞める2001年3月以前に、パソコン通信の代わりに自分でインターネットで情報発信したかと言えば、その記憶はありません。検索システムもまだ整備されていなくて、いまよりもっと荒涼としたイメージもあったように思いますし(笑)」
--- 2002年には最初のホームページを立ち上げられていますね。
「専用ソフトで作ったおかげでメンテナンスが難しく、申し訳ないことに今はほぼ放置状態です(笑)。ブログの前身となる日記だけは早いうちに外部のサービスに移しましたが、それも2006年まで。
パソコン通信と違って、インターネットは送り手と受け手がアンバランスすぎると思いました。検索エンジンがあるからギブ・アンド・テイクどころかテイク・アンド・テイクが基本で、情報は提供しないのが当たり前。匿名性の強い暴力的な視線にもさらされがちです。それに疲れた頃に出てきたのがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です」
--- mixiですね。
「mixiを使い始めたのも最初は仕事の連絡用でしたが、しばらくすると『私もやってます』とメンバーがだんだん増えてきて、気がつくとアニメフォーラムの同窓会みたいにもなって。それとアニメのスタッフとも交流が増えて楽しい場に変わりました。
だから少しの間はmixiで隠遁生活をおくっていたんですね(笑)。ブログを始めたきっかけは、竹熊健太郎さんがブログを楽しそうにやっていたことです。強く勧められたし、何かにつけ自分でやってみないと本当のことは分からないですから、『氷川竜介ブログ』をスタートしました」
--- ブログサービスもいろいろありますが、ココログを選んだ理由は?
「なぜココログかと言えば、竹熊さんが使っていたことと、パソコン通信時代から今でもメインプロバイダとして利用し続けているニフティさんだからです。今のところはコメント欄はなしで、告知と業務日誌、簡単な作品や商品の紹介や感想が中心です」
--- 『氷川竜介ブログ』と並行して、過去に書かれた原稿が読める『氷川竜介評論集』も開設されていますね。
「『評論集』を運営しようと思ったのは、二つ理由があります。
過去の原稿は放置しておくと散逸してしまいかねないし、雑誌やレーザーディスク時代のライナーなどは商品を手に入れること自体が難しい。死蔵して読むことができない状態にしておくぐらいなら、無料で公開してしまった方が流通するだろうと」
--- 非常にありがたいです。
「もう一つは、ある世代から下の人たちにとって、ネット検索で引っかからない人はこの世に存在しないのと同じという考え方が確実にできたと思うからです。そうであれば、アニメ作品の題名と自分の名前がきちんと入った原稿をアップしておくことは価値を生む。いつかはある程度知られたアニメ作品名を検索すれば、必ず僕の名前がセットで上位に出てくるようになるはずです。これは究極のカンバンになる。そういう思惑があるんです。
僕らのような商売では、『検索にひっかからない=いない人』になるのは死活問題ですからね。もちろんささやかなアフィリエイトも動機にはなっていますが、売上は事務所の電気代ぐらい。これを光熱費と言わないところで察してください(笑)」
--- では、アニメというメディアにとって、ブログはどのような可能性があると思いますか?
「ブログの存在はアニメの動向に強い影響を与えています。これは確かでしょう。3年前の『時をかける少女』はブログユーザーの口コミで観客動員が増え、評価と成果に結びついたわけですし、『涼宮ハルヒの憂鬱』の大ヒットも、ブログと動画サイト、急速に台頭してきたこの2つがセットで作動した結果だと解釈しています。
かつては僕も雑誌で『この作品のここがすごい』とフィルムから写真を抜き出して説明していました。動画をブログに貼り付けることで作品そのものの一部を引用して見せ、言葉を添えることができる。僕らのしたかったことの究極形態が現れたと、そういう可能性の衝撃を受けました」
--- ウェブならではの利点ですよね。
「その後、動画利用が厳しく制限されて、そう簡単には使えなくなりましたが、ある程度のルールのもとで引用を認めた方が、作品にとってもファンにとっても幸せで、それが新しい価値を生む可能性が大きくなると思っています。実際、『これぐらいならいい』と認める権利元が現れているのは、良い傾向ですね」
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2009年6月11日~2009年7月2日
(当選者発表は2009年7月9日当記事内3ページ目にて)
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