日本人が欧米人に比べ背が低いことは、経済成長に伴い栄養が改善されてかつてよりはずっと背が高くなった今でも、テレビで見る外国人、国内にいる外国人との比較で感じていることである。 ここではOECD諸国の男女の身長についての統計データをグラフ化した。データの出所はOECDのSociety at a Glanceである。 男女はほぼ平行したパターンなので、男性についてみてみよう。 日本人男性の平均身長は171.6pであり、最も背の高いオランダ人男性181.7pよりちょうど10p低くなっている。オランダの他、デンマーク、アイスランド、スウェーデンでは男性の平均身長が180pを越えている。 一方、日本人より身長が低いのは、韓国、ポルトガル、メキシコの3カ国のみである。この他、欧米の中ではポルトガルの他、スペイン、イタリアなどラテン系の南欧諸国の身長が低い点が目立っている。 米国人には黒人の他、メキシコ人などヒスパニック系も多いためであろうが、平均身長は南欧諸国並みである。 メキシコはラテン系白人にインディオが混血しており、身長は南欧諸国よりさらに低い。もっともメキシコの場合なお途上国のため栄養水準の制約による側面もあろう。日本人も途上国から先進国へと成長した戦後50年間に10p以上背が伸びたのである(図録2182参照)。 図では各国の身長の時系列変化は分からないが、OECDの報告書は、OECD諸国平均では身長は伸びつつあるとしている。「45〜49歳と20〜24歳とを比較するとこの25年間に男では3p、女では2p背が高くなったことがうかがえる。こうした成人の身長の伸びは子どもの時期の全国的な栄養改善を示している。中でも目立った実績をあげているのは韓国であり、青年男子は父親世代より6p背が高く、若い女性は母親世代より4p背が高い。逆に米国は貧弱な実績となっている。米国では1世代経っても背が伸びていない(Komlos,2008)。近年の相対的に背が低い人々の移民流入ではこうした身長の伸びの停滞を説明できない。」 日本と韓国を比較すると全体としては日本の方が韓国より平均身長がやや高いが、韓国はまだ背が低かった時代の中高年を含んだ数字なので、若年層では韓国人の方が背が高いと考えられる。 次ぎに、男女の平均身長の相関図を描いてみると、身長だけの単純なグラフであるが、男女の身体的特徴が人種毎にグループ化されることが明確に分かる。 まず、男女の身長の相関度は高いことが分かる(女の身長 = 0.8732×男の身長 + 9.4713 R2 = 0.9211)。身長の高い方から、北欧・ドイツ、英語圏、ラテン諸国、東アジア、ラテンアメリカとグループ化される。こうしたグループの諸国を囲う楕円をその中にグループ外の国を入れずに描ける点に人種毎の身体的特徴の共通性をうかがうことができる。 英語圏の中で米国はやや背が低い方にバイアスがかかっているが、これは、黒人やヒスパニック系白人の比率がかなり高いためと考えられる。 英語圏とラテン諸国は、男女の身長差で区別される。すなわちラテン諸国は男女の身長差が小さいのに対して英語圏諸国は男女の身長差が大きいのである。ラテン諸国のポルトガル人は、女性は日本人よりかなり背が高いのに、男性は日本人よりむしろ背が低いのである。 身長の調査方法についてであるが、実際に測定する方式と自分で申告する方式とがあり、後者は過大評価となる傾向があるので、前者の方が適切だとされる。ある研究によれば、大人の男女における過大評価の平均は1pとされる(Gorber, S.C. et al. (2007))。 取り上げた国の中で、測定方式であるのは、日本を含め26カ国(オーストリア、ギリシャ、アイルランド、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、トルコ、英国、米国)であり、自計申告方式(自計方式)が24カ国(オーストラリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、アイスランド、イタリア、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス)、不明が2カ国(フィンランド、オランダ)である。 (2009年5月11日収録、5月18日コメント追加) |
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