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【社説】

公文書法成立 霞が関の骨抜き許すな

2009年6月25日

 公文書管理を強化する新法は、閉鎖的体質に陥りがちな霞が関の改革の一歩といえる。役人には、国民共有の「財産」との意識改革をまず求めたい。具体策づくりでの「骨抜き」は許されない。

 公文書管理法が二十四日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した。衆院段階で政府案の修正で与野党が合意した経緯があるが、不毛だとされてきた衆参ねじれ国会下で、与野党が一致点を見いだした姿勢は評価したい。

 法律の出発点は、年金記録の紛失や薬害肝炎の症例リスト放置など、政府の公文書管理のずさんさが相次ぎ露呈したことにある。

 公文書とは、行政機関が職務遂行の過程で作成する記録全般のことだ。現在さらには未来の国民への説明責任を果たしうるよう、管理や保存には厳格な指針があってしかるべきだろう。

 だが、実態は各省任せで、役所にとって「不都合な資料」は破棄されているのではないか、との疑念を少なからず抱かれてきた。法整備は遅すぎた印象だ。

 成立した管理法は、公文書の作成から廃棄・保存まで、各省統一のルールをつくるのが狙い。公文書を「国民共有の知的資源」と定義し、役所側の説明責任を明記した。修正合意で、政策決定過程を検証できる形での公文書作成を求め、文書廃棄には首相による同意が必要とした。

 首相判断の基準があいまいとはいえ、各省の裁量の余地を一定程度取り除いたのは妥当だろう。ただ、今後の課題も少なくない。

 行政の情報を透明化し、国民に提供する−。民主主義の大原則をうたった新法の精神を生かすも殺すも、霞が関の対応次第である。逃げ腰では意味がない。

 具体的なルールは有識者らでつくる「公文書管理委員会」の審議を経て作成されるという。この過程で役人にとって使い勝手のいいルールになることはないか。

 首相や閣僚に面従腹背で、こっそりと骨抜きを図る「霞が関の流儀」を、またしても見せつけられてはたまらない。しっかりと目を光らせるのが、そろって賛成した与野党の責務である。

 新法には「国民の主体的な利用」も明記された。公開原則の徹底が欠かせない。

 政権交代が頻繁にあれば、官僚はこれまで拒んできた、国民への必要な情報開示を迫られるのは当然だ。そのことを肝に銘じておくべきだろう。

 

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