野田臣吾氏 フォートラベル 代表取締役社長(左)、五十嵐淳之氏 角川メディアハウス パブリッシング局 局長代理 月刊シネコンウォーカー編集人 季刊ティー.編集長(右)(画像クリックで拡大)

 実際のWebサイトと雑誌の連動では、旅行記をWebサイトから転載した「4travel COMMUNITY」というコーナーを作成。さらに、ほかの記事中の写真などにもWebサイトのものを転用している。例えば、四万十川の小特集では、四万十川にかかる沈下橋の写真をすべて掲載いるが、そのなかの数点はWebサイトの会員が撮影したものだ。「みなさん、こだわって撮影しているので写真が美しい」(五十嵐氏)ことから、誌面も写真が生きるようなデザインにこだわった。いわゆる旅の情報誌の詰め込み型のレイアウトではなく、写真を大きく使ったレイアウトを多用している。

 転載や転用に当たっては、事前に会員と連絡を取り、許諾を得ている。もちろん、雑誌に転載するために、解像度の高い元の写真を送ってもらうことも多い。こうした「連絡作業も含めてコミュニケーションなんです」(五十嵐氏)と語る。雑誌の制作スタッフなどを記載する「奥付」と呼ばれるページにも、旅行記や写真が掲載された会員のニックネームが並んでいる。

 こうしたWebサイトからの転用、転載に加えて、雑誌の内容面でもWebサイトを活用した。今回のメイン特集はイタリアだが、この理由はWebサイトで「イタリアを訪れた人も多く、加えて旅行記の書き込み率が高い」ためだ。特集の内容を決めるリサーチにWebサイトをうまく利用した。このほか、メジャーな旅先ではないが、クロアチアなど旅好きが注目している目的地も分かるという。

 一方、Webサイト側は、雑誌との連動特集を公開している。誌面の内容や紙幅の関係で掲載できなかった情報を公開している。今後も、旅の準備をWebサイトで公開し、実際の旅の様子は雑誌に載せるといった連動も想定している。逆に雑誌で予告して旅本編の紹介はWebサイトで、という取り組みも考えているようだ。

 現在はvol.2が発売になったばかりで、vol.3の発売が決定したわけではない。それでも五十嵐氏は「季刊など定期刊行にはこだわっていない」という。Webサイトと連動しているので、一般的な情報はWebサイトを使えばよいと割り切っている。それよりも、読者が旅に出たいシーズンにちゃんとぶつけることが大切と考えている。

 Webサイトと雑誌の連動は、各出版社もいち早くビジネスモデルとして確立したい事案だ。だが、その“勝利の方程式”は見つかっていない。Webサイト上にコミュニティを作り、そこに向けて雑誌を提供する――。このスタイルが一つの方程式になるのかどうか、vol.3以降の内容や売れ行きに注目したい。

(文/渡貫幹彦=日経トレンディネット)