旅行のクチコミサイト「フォートラベル」と連動する雑誌「4travel」(発行:角川メディアハウス)が好調だ。今年1月に発行したvol.1は6万部を発行し、約70%の実売率を達成。6月11日発売のvol.2も同様に6万部を発行し、ほぼvol.1と同程度の売れ行きになる見込みという。雑誌の販売部数が減少する中、さしたる販促やPR活動もなしに、この部数は販売できた理由とは何だったのか? そこには、Webサイトと雑誌の連動方法についてのヒントが隠されているようだ。

「4travel」vol.2(角川メディアハウス/980円)(画像クリックで拡大)

 Webサイトの「フォートラベル」は、“クチコミサイト”と呼ばれるように会員が書き込む「旅行記」が人気コンテンツ。そこには、実際に旅に出たユーザーの生の声や写真が掲載されており、同じ場所を旅したいユーザーの参考になる。旅行記は登録会員だけが書き込める仕組みで、現在約7万人が登録。旅行記の数は約30万にもおよぶ。旅先の写真に至っては、580万枚も公開されている。このほか、ツアーの検索なども可能など、旅に関するワンストップサイトとして人気になっている。月間のページビューは3000万以上、ユニークブラウザー数も360〜370万あるという。

 フォートラベル雑誌化のきっかけは、角川メディアハウス側からのアプローチだった。フォートラベルとしては「(雑誌化)は想定していなかった」(野田臣吾氏 フォートラベル 代表取締役社長)という。では、なぜ角川メディアハウスはフォートラベルに目を付けたのだろうか。その理由について同社パブリッシング局 局長代理の五十嵐淳之氏は、個人的な意見と前置きした上で「これまでと同じ作り方では雑誌は開発できない。今までと違うスタイルの雑誌を考えたかった」と説明する。

 これまで雑誌の開発は、性別や年齢、大まかな嗜好などでターゲットとなる読者を想定。そこに向けてどのくらい売れるかを予測して雑誌を開発するのだが、世の中の嗜好は、出版社が考える以上に「細分化している」(五十嵐氏)。このため、想定読者のターゲッティングがうまくいかず部数が伸びないことが多い。その一方で、あまり細かくターゲティングすると、想定読者が少なすぎて、そもそも雑誌を開発する意欲がなくなる。

 こうしたジレンマを解決するには、そこに確実に読者が存在する証拠が必要だ。ある程度細分化されていても、そこに読者がいることが分かっていれば、雑誌は開発しやすくなる。Webサイト「フォートラベル」には旅という同じ嗜好や目的意識を持ったユーザーが集まるコミュニティであり、旅行記を書く登録会員が約7万人存在する。ユニークブラウザー数も360〜370万もある。このネット上のコミュニティを想定読者と考えれば、読者がちゃんと存在していることがリアルに感じられる。

 ただし、フォートラベルの会員に単純に雑誌を提供したわけではない。「読者とコミュニケートする新しいスタイルの雑誌」(五十嵐氏)を狙ったという。Webサイト「フォートラベル」が旅行記を利用したユーザー参加型のサイトであることから、雑誌は旅行記や写真の発表の場を提供するコミュニティマガジンにしようと考えた。